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どうやら、ようやく先へ進めるようだ

「……それは、俺らからは何とも言えないな。嬢ちゃん達の処遇を決める権限は俺らには無い。ただ、嬢ちゃんがギルドマスターに聞かれた事に対して素直に答えていたって位なら証言するのは構わない。だが、嬢ちゃん以外の奴らに関しては、何も(・・)、言う事は無い」

「そう、ですか……。そうですよね、すみません。変な事を聞いてしまって」

「謝る事じゃないさ。自分の仲間を心配するのは悪い事じゃない」

「……はい、ありがとうございます」


 セリアが聞きたがっていたのは自分を含むパーティーの処遇だった。

 反省しているらしい彼女には酷な事だろうが、全員無罪という事には出来ないだろう。アンリ達のパーティーで、まだ軽い罪で済みそうなのはセリア、ララ、アンリエットの三人だろうか。少なくとも治癒師紛いのフェリシー、逃亡奴隷のミシェル、パーティーリーダーのアンリの三人には、今後明るい未来は望めないだろう。

 その辺りの予想の付いているロラン達は、互いに顔を見合わせると決して口にはしないように目で確認し合うのであった。



 * * * * * * * * * * 



「すまん、すぐに戻ると言ったのに待たせたな」

「あ、いえ、そんな事は……」

「俺らはギルド側の事情もある程度は分かってるからな。大して気にしちゃねえよ」

「……ぎなぁ~(……酷ぇ目に遭ったわ)」


 あれ以降セリアがアンリ達の事を話題に出す事は無く、セリアとロラン達がしばらく雑談をしていると、やっとセヴランも戻って来た。

 ついでに、セヴランが戻るほんの少し前にはブサも意識を取り戻していた。自分を絞め落としたリュシアンの事を恨めしそうに見るも、お約束の知らん顔だ。

 ちなみに、ブサが意識を失っている間に散々モフりまくったアンリは満足そうだ。心なしか輝いているようにも見えた。特に、頭が。


 待たせた事を謝るセヴランにセリアは気まずそうにうろたえながらも、仲間達を心配する表情を隠せなかった。

 逆にロラン達は飄々としていたが。それにしても一応セリアという他人がいるのだが、対ギルドマスター用に口調を変えなくても良いのだろうか、今更の話だが。


 疲れた様子で椅子に座り込むと、頭を掻き毟りながら苦々しく呟いた。


「とりあえず、アンリという男は牢を移した。妙な能力を持っているようだから、万が一の事があっても困る。見張りもきっちり付けたから下手な真似はしないとは思うが……信用は出来ないけどな」

「……ギルドマスターさんよぉ、やけに疲れてるみてぇだがトラブルでもあったのかぁ?」


 サミュエルの言葉に、ビクッと身を震わせるとセヴランを見つめるセリア。

 幼馴染という立場上、性格が豹変してからも十年近くすぐ傍で見ていたのだから、こういう状況になった場合にアンリがしでかしそうな事なら理解している。とてもじゃないが、大人しくしているとは思えなかった。

 実際その通りだったようで、セヴランは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。


「まぁ、ある程度は予想出来た事だったがな、あのアンリ(バカ)が『出せ、出せ』ってうるさくてな。でかい声で叫ぶわ、牢を蹴るわ、反省のかけらも見られなかったな。顔を出したついでに、自分達の行動を自覚してるのかと聞いてみたんだが『自分は何も間違った事はしていない』だとよ。……どうも、ワシらとは違う常識の中で生きているようだな。間違っているのはこの世界の方、だそうだ」

「そりゃ、まぁ、何とも……なぁ……?」

「私に振られても困りますよ。それより、私達はいつまでギルド(ここ)にいれば良いのでしょうか? テオドールさんの所に行かねばならないのですよね?」


 少なくともまだしばらくは収拾のつかなさそうな様子に、今後の予定の事もあるのでアンリが伺いを立てる。


「うぅむ、出来ればもうしばらくお前達にはギルドで待機して貰いたかったんだがな。お前達の腕なら信頼出来るからなぁ……。とはいえ、テオドールを(ないがし)ろにも出来んか。ではすまんがテオドールの用件が終わったら、あるいは時間が掛かりそうなら、そちらに本格的に取り掛かる前にもう一度ギルドに顔を出してくれ」

「承知致しました」

「それと、セリア嬢にはまだ聞きたい事もあるんでな。もうしばらくはワシの話しに付き合って貰うとしよう。その後はセリア嬢のお仲間と同じ場所で待機して貰うが、依存は無いな?」

「……はい、迷惑をお掛けっぱなしで申し訳ありません……」

「……まぁ、なるべくセリア嬢には温情を掛けられるように取り計らおう。実際、他の連中よりは罪は軽いからな」

「いえ、あたしは「悪いが、それぞれの罪の重さに合わせた罰を与えるのも上に立つ者の役目だ。軽すぎる罰を与えるのは問題だが、重すぎる罰を与える訳にもいかん」……っ、はい……」


 どうやら、ようやくギルドを出てテオドールの元へ向かえるようだった。

 当初の予定からかなりずれてしまっている。今まで待たされているテオドールは良い迷惑だった。一応ギルドからはロラン達が面倒に巻き込まれたため、向かうのが遅くなると連絡が行ってはいたが。恐らく今頃はロラン達、否、ブサ(・・)達をワクワクしながら待っているのだろう。

 テオドールに関しては想像だが、恐らくは間違い無いはずだ。何しろテオドールは元ギルド員で、現商人である。未知のものへの好奇心は留まるところを知らない。


 ブサも興奮で鼻息が荒くなっていた。

 何しろ、もしかしたらブサが人間の姿に戻るための手掛かり、あるいは資料などが手に入るかもしれないのだ。


(くぅ~! 早く人間の姿に戻りたいぜぇ! 戻ったらエステルちゃんや、レアちゃんと……)


 グフフフフ……と猫の姿で気持ち悪い笑いを響かせるブサに、周囲の人間達はドン引きだった。セリアにもばっちり見られていたのは、ブサにとっては痛恨のミスだった。

 ブサの容姿が猫だったので助かった。人の姿だったら『おまわりさん、こいつです』と通報される事間違いなしだった。


 もっとも、この世界には警察はないが。おまわりさんでは無く衛兵だ。ついでに言っておくと、犯罪者へは暴力拷問も日常である。犯罪者に人権はあまり無い。特に、他者を傷付ける人間や、性犯罪者に対しての対応は苛烈だった。治癒術というものがあるからなおさらである。


「……そ、それでは、私達はこれで一度失礼致します。また後程顔を出させて頂きますので」

「う、うむ、ご苦労だった。テオドールによろしく伝えておいてくれ」

「それでは……」


 部屋から出ると全員が一斉に溜め息を吐いた。

 それにしても妙な事に巻き込まれたものである。これまでにも盗賊と間違われる事はしばしばあったが、今回のような大騒動になった事は無かった。せいぜいが双方、厳重注意である。ロラン達からしたら、自分達も厳重注意となる事には釈然としないものがあったが。何しろロラン達はそこにいただけなので。


 今はとりあえずおいておこう。それよりも、今後の事である。


「ハァ……。とりあえず、テオドールさんのとこ行くか」

「うっス」「りょーかい」

「かなりお待たせしてしまっていますからね、なるべく急ぎましょう」


(あのおっさんのとこ行くのかよ……。うわぁ、行きたくねぇ! 俺だけエステルちゃんとこで待ってる訳にゃぁいかねーかなぁ?)


 アホな事を考えないで欲しいものだ。そもそも、ブサ当人が行かないと話しが進まないだろう。


「あ、ロランさん、お疲れ様です」

「おぉ、エステルもお疲れさん。しかし、流石はギルド職員だな。全員良い動きだった」

「ふふふ、そうじゃないと受付なんてやってられませんよ。絡まれる事、多いんですから!」

「牽制にもなって、教育にもなって一回で二度美味しいってやつだな」

「ふふ、上手い事を言いますね。それより、どこか行く予定だったのでは?」

「おう、これから行くところだ。また後でギルドにゃ顔を出すんでな。そん時はよろしく頼むわ」

「はい、承知致しました。お気をつけて」

「んじゃな」「また後でなぁ」「お疲レ」「それでは、また後で」


 再びギルドの受付ホールに戻ると、エステルに声を掛けてからギルドから出ようとした。出ようと……。


「いい加減に離れや、クソ猫ガ!!」

「ふしゃ――――! ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!(いやだぁぁぁぁ! 俺はここでエステルちゃんと一緒にいるんだぁぁぁぁ!!)」

「てんめぇ! いい加減にしろよぉ!!」

 一旦ハーレム達は放置して次回からロラン達のターンです。テオドールさん、再登場。

 なお、ハーレム達は放置されている間にも裏でハーレム男パーティーについての個人情報、被害状況などの情報は各部署で共有されて行きます。

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