どうやら、他のメンバーも問題ばかりらしい
今回も文章長めです。説明を増やすとどうしても長くなってしまいます。
「あん? 今の話だと、バカとこの嬢ちゃんとエルフと獣人の四人しか居ねぇよなぁ? 残りの二人はどういった流れで仲間入りしたんだぁ?」
「えっと、そ、それは……」
「……手紙によると、治癒師の女……フェリシーって名前だが、そいつは教会からの無断出奔者だそうだ。つまり教会から無断で出奔した挙句に、正規のギルド員では無いのにギルド員と自称して無断で活動していた事になる。無断出奔者を匿うのも、ギルド員を詐称するのも、同行者にも連帯責任があるんだが……どうせそれも知らなかったと言い張るんだろうが、知らなくても罪は罪だ。自称治癒師は犯罪奴隷行きは確実だな」
そもそも、治癒師は全員が教会に所属している。教会に医療院が併設されているからだ。
治癒師は普段はそこで働いているが、ギルドからの要請があった時に教会の許可を得た人間が一時的に派遣されて来たりする。教会の外で活動出来るのは許可を得た治癒師だけであり、許可を得ていない者が勝手に教会を抜け出すのは重罪である。
それもその筈、治癒師の育成は国の税金で行われているのだ。
十五歳以下の者は年に一度、教会の人間が各町村を周る時に治癒師の資質を持っていないか調べられる。
貧しい家の出身でも治癒師の資質があれば、幼少時から無料で教育を受けられ、その後も生活は保証される事になるから皆必死だ。
十五歳以下の者とされているのは、十五歳になるまでは資質が現れる可能性があるからだ。そのために毎年資質を調べる必要があるのだ。
親や当人の意思は尊重されるので、資質があるからと言っても強制的に教会に入れなければならないという事は無い。
だが、教会に入らなければ治癒師にはなれない。資質はあるが治癒師にはならない道を選んだ場合、以降治癒師の能力が使えないように術を施される。
また、幼すぎるために母親から離したくない、という場合は一時的に母子共に教会の庇護下に入る事も出来る。ただしその場合は、教会にいる間の母親の生活費は自分で支払わなくてはならない。
もしも教会の調査から漏れて独学で治癒を使えるようになったとしても、教会に所属しなければ治癒師としての認可は下りず、無許可で治癒師として活動すればすぐに捕まるだろう。教会の目は至る所にあるからだ。
その後は通常よりも厳しい条件で、正式に認可を受けるまで見習いとして働かせるか、罪人として処罰するかの二択しか無い。この場合の処罰とは治癒能力を使っての強制労働である。
強制労働は一定の期間だけだが、解放時には治癒術を使えないように施術をされるため、二度と治癒は使えない。
しかも、罪人としての経歴はしっかり記録に残るため、まともな職に就ける可能性は一気に低くなるだろう。
それというのも、無許可の治癒師などは犯罪者達からしたら美味しい餌でしか無い。違法の娼館や盗賊など、裏業界の者からは垂涎の的だ。治癒師さえいれば多少の怪我位なら気にせず済むのだから、拷問だろうとやりたい放題である。
それ故に教会は治癒師を所属させる事によって、犯罪者達にその力を使わせる事無く、治癒師達も守っているのだ。厳しすぎるように思える程の罰を与えるのも、そうする事で無許可の治癒師になる事を防ぐためと言える。
最初は見習いから始まり、実力や功績などから審査され、最後に筆記と実技の試験を合格する必要がある。
治癒師として認められると、親にも国から幾ばくかの金が支払われる事になる。優秀な治癒師は国の財産でもあるので、優秀な人材を送り出してくれた事への『礼金』のようなものだろうか。
治癒師当人は以降も教会所属として、国や教会からの要請に応じてその力を振るう事になる。その代わりに先にも説明した通り衣・食・住は保障され、貢献次第で待遇が良くなったり、治療に対する報酬が上がったりする。
もちろん途中で見習いをやめる事も、治癒師となった後にやめる事も一応は許されるが、その場合はそれまでに掛かった経費以上の金額を国に返さなければならない。
やめた場合は見習いの資格も、治癒師の資格も剥奪となるので、それ以降に治癒師と名乗ると身分詐称となり重罪となる。そもそも見習いの場合は元々治癒師とは言えないのだが。
そしてどちらの場合でも、やめた以降治癒能力は使えないようにされるのは変わらない。
行動の制限はあるものの、見習い及び治癒師には活動に応じて各人に報酬が支払われるので、国が負担した分の金額を返却していけば行動の自由を広げられる。報酬の使い道は個人の自由なので、現状の生活に満足しているのであれば、家族への仕送りするのも可能である。
話を元に戻して、フェリシーと言う少女は、たまたま教会に立ち寄ったアンリに自分に都合良く捻じ曲げた境遇を話し、アンリの同情を買おうとしたのだ。その結果『教会が不当に治癒師を囲い込み私腹を肥やしている。好きに外出も出来ないなんて奴隷と変わらない、これ以上こんな所にいては搾取されるだけだ!』と憤慨するアンリに脱走を促され出奔したのだと言う。
もっとも個人の買い物のためなど、短時間の外出ならばきちんと申請すれば——護衛を同行させる事が必須だが——許可が下りる。ただし本人の素行によるため、素行不良の彼女には許可が下りなかっただけの事だ。
フェリシーは治癒師として成り上がる事を目指していたらしいが、そうそう上手くいくはずも無い。
そもそも、真面目に訓練をしていないのだから当然だ。依頼が来てもフェリシーが指名される事は無く、真面目に訓練している同期や後輩がどんどん実力を上げていく事によりさらに指名されなくなる……という悪循環だったのだが、完全に自業自得である。
この辺りの事情は、治癒師なのにギルド員では無い者を連れている事を不審に思った、とあるギルド員が調べた結果判明した事だ。
本来は町の出入りも制限される筈なのだが、出奔時に起こした騒ぎの後始末で通達が遅れ、見習い登録証の停止措置が出来ていなかったのだ。そのために王都に入る事が出来てしまったという。だが、この時点ですでに門番達には通達が届いているので、もはやフェリシーが王都を出る事は不可能となっている。
「……想像以上の人でしたね」
「重罪人じゃねえか。よくそんな奴を仲間にしようと思ったもんだな。治癒師の無断出奔者なんて、連れて歩くだけでも連帯責任取らされるぞ」
「無知って怖ぇなぁ、で済むレベルじゃねぇ……」
「流石に俺も引くワ……」
「ぐにゃ(ガチ犯罪者じゃねぇか)」
ブサも含めて、全員がドン引きだ。説明しているセヴランも頭痛がするのか、しきりにこめかみを揉んでいる。
しかも、これで終わりではないのだ。
「これで終わりだったら良かったんだけどな。残念な事にまだいるんだよなぁ……。こっちも凄い経歴の持ち主だぞ? もちろん悪い意味でだが」
そして説明されたもう一人の経歴も、やはり酷いものだった。
こちらはテンプレとも言える経歴の持ち主だ。
ミシェルという斥候の女は元はスラムの出身で、窃盗や傷害を重ねる事多数、一般人だけで無く衛兵にも被害を出している。十年前に強盗犯として捕まり、過去の犯罪履歴も判明して犯罪奴隷に落とされた。
だが、その時の調査で斥候としての素質が高い事が判明し、盗賊ギルドに買い取られ教育し直される事になった。
この盗賊ギルドとは犯罪者という意味での盗賊では無く、国に認められた正規のギルドだ。元は非合法なギルドだったのだが、過去に大掃除をされて今では犯罪とは無縁なギルドになっている。
ここは情報収集や斥候の育成を主としていて、ある意味では犯罪者予備軍の受け入れ先ともなっている。
スラムの孤児は盗みで生計を立てている事が多いため、そういった子供達を受け入れて斥候として教育していったりするのだ。もちろんある程度の人間性や素質を調べてから受け入れるのだが。
そう考えると、件の女がギルドに買い取られた事に疑問が浮かぶのだが、斥候としての資質は並外れたものがあったためらしい。もっとも、奴隷である事には変わらないが。
買い取った後にギルド側が必死に矯正した結果、何とかまともな斥候になったのだが、魔獣の調査中に偶然アンリ達と出会って色々吹き込まれた結果元の性格に戻ってしまい、ギルドから逃亡したのだ。
この場合、斥候として教育していたのが仇となった。化粧などで顔を変え、名前も偽り改めてギルドで登録し直されていた。
これに関してはギルドも責任が無いとは言い切れない。だが、ギルドへの登録時には過去の犯罪歴も魔道具を使って調べられるし、そもそも逃亡奴隷は町に入れないはずなのだが。
元々ミシェルは、自分のためなら他人をどれ程傷付けようが構わないという性格だったのだが、現在では自分以外にアンリも加わっているため、問題を起こした後日に当事者を闇討ちする事もあった。
せっかくまともな生活になれそうだったのに、ある意味では男の被害者かもしれないが、元の性格がアレだった為に同情は出来ない。
むしろ十年近くかけて性格を矯正したのに、たった一日、二日で元に戻されたギルドにこそ同情するべきだ。
ミシェルは小柄で童顔なので少女に見えるが、実は二十歳を超えている。その年にもなれば再び矯正するのはほぼ不可能だろう。
ミシェルのように人間性に問題はあっても、斥候として素質が高い場合には例外として受け入れる事がある。この場合は犯罪奴隷だ。買い取られた後はギルドの所有奴隷となる。
ただし奴隷には逃亡防止用の魔道具を付けられたり、色々と制約が科せられている。だが、なぜかあの女は魔道具も付けておらず、その制約をものともせずにアンリと行動を共にしていた。
魔道具も制約も盗賊ギルドは間違い無く付けていた。それにも関わらず、どちらも無いのはどういう事か。前述の件も合わせて、それらに関してはギルドでもまだ理由が判明していなかったのだが、思いもよらぬ場所からその理由は明らかになった。
「……はぁ!? あのアンリって餓鬼が魔道具も制約も取っ払った、だとぉ!? それに犯罪歴も消したってのか!!?」
「は、はい。私も信じられないけど……間違い無いです。目の前で首輪を外すところも見ましたし、制約を犯す行為をしても何も起こらなかった事も見ました。それと、犯罪歴を調べる魔道具が何の反応もしなかったのも。アンリに何故そんな事が出来るのか聞いたんですけれども『俺は神に選ばれた人間だから』の一言だけで、詳しい事は何も……すみません……」
「あ~……いや、嬢ちゃんが謝る事じゃないな。むしろ、貴重な情報を貰った事に感謝する。……しかし、制約や魔道具の強制解除が出来るとなると、監視は今以上に強化した方が良いな。悪いが少し席を外す。すぐに戻るから、このまま待っていてくれ。(それにしても犯罪歴を消した……だと? これはギルドだけでは裁けないな。すぐに上に報告しなければ……)」
「は、はい」「おう、了解」
補足
〜ハーレムパーティーが出来上がった順番と名前と役割、特徴〜
アンリ&セリア(弓使いの幼馴染)
+ミシェル(斥候の無口女)
+アンリエット(エルフ魔法使い)&ララ(獣人闘士)
+フェリシー(自称治癒師)
〜教会で起こした騒動について〜
ミシェルが内部に忍び込み、フェリシーが特に敵視していた相手(アンリには『いつも自分を蔑み、手柄を奪われる』と話していた)を襲撃。ついでに教会の運営費を盗み出した。
運営費云々はセリア・アンリエット・ララの三人は知らない。
手柄云々に関しては被害妄想。いつも自分が行きたいと思う依頼を取られるため。(本人には実力不足&素行不良で依頼が回って来ないとは思ってもいない)ちなみにこの依頼の内容は、貴族家からの依頼で妹の病気の治癒。当主イケメン、依頼人はその息子でこっちもイケメン。
教会の依頼内容はある程度共有される。これは治療内容の把握のため。依頼人に関しては黙秘義務があるが、フェリシーは教会に入って来たイケメン息子をロックオン。そしてストーキングして依頼内容を盗み聞き。立候補するも当然却下され、勝手にライバル視している治癒師見習いの少女に依頼が回った事を知り、悪意を持ってアンリに話していた。
アンリはフェリシーから聞いた内容を信じ込み、フェリシーを保護(本人はそう思い込んでいた)するために、ミシェルに手伝いを依頼。脱走時の混乱を引き起こすために襲撃&運営費窃盗の流れ。
最後に追記。明日は猫又公開日ですので、こちらはお休みです。次話は9日公開となります。よろしくお願いします。




