どうやら、奴らは相当やらかしていたらしい
今回、文章が長めです。ご了承下さい。
「……やっぱり、変だと思いますか……?」
「変だな」「変でしょうね」
「てめぇらよぉ……。俺に文句付けといて、てめぇらがまぜっ返してんじゃねぇ」
「あ、わりい」「これは失礼しました」
セヴランの言葉を聞いて独り言のように零した少女に、ロランとアンリが反射のように言葉を返す。
もっとも、すぐにサミュエルに文句を付けられる事になったが。
「『変』どころの話では無いんだが……。高熱を出した後に突然変わった、他にも変な事をよく言ってたとも言っていたな? どんな事だ? 覚えてる限りで良いから言ってみてくれ」
「え、あ、はいっ! えっと……そうですね。分からない言葉で一番よく言ってたのは『テンセイ』とか、『チイト』がどうとか。後は……その、ハーレムがどうとかも良く言っていました……。」
「ふむ……他にはあるか? 以前とは変わった行動とかでも構わん」
男と相対していた時とは違い、なるべく少女を萎縮させないように気遣いながら質問を続ける。
セヴランの言葉に思い出すべく考え込むと、少ししてから思い出した事を話し始める。
「……その、最初は自主的に村の周りの害獣とか魔獣を狩ってくれるので、みんな感謝してたんです。ご両親は『何かあったら大変だから』って止めてましたけど聞かなくて……。その事へのお礼として、小さな村なので大した事は出来ないけど、採れた作物をおすそ分けしたり、狩りの獲物を優遇したりしてました。村を守ってくれてるのだから、みんな本当に感謝してたんです」
ここまでの話しを聞く限りでは、現在程の横暴さは無いように思える。が、この先が問題だった。
「でも、次第に『オレが村を守ってやっているからこの村は無事にいられるんだ』って言うようになって、村の、その……可愛いって言われてる女の子達や、結婚してる人にまで迫ろうとしたり。拒否されてましたけど、段々強引になっていって。最後はこれ以上村に居させると、むしろ村の害になるって。それで、成人してすぐに村を出される事になったんです。村長さんが『大きな町に行けばアンリ程の腕前ならすぐに大成出来るだろう』って言って。アンリは何の疑いも無くそれにのって、今までやって来たんです……」
(『テンセイ』って、まさか『転生』か? それともう一つは間違い無く『チート』だよな。……つまり、あいつ転生者か!? ひょっとして元日本人だったりするのか? しかも話しを聞くに、ハーレムだけじゃなくてチート野郎かっ! ……くそっ、こっちはぶっさいくな猫にされた挙句に何の能力もねぇし、むさ苦しいおっさんや筋肉だるま共に囲まれて不快な思いばっかりさせられてるっていうのによぉっ……!! あの野郎、美少女ばっかり侍らせやがって……!)
まさかの自分以外の元地球人の可能性に、興奮と怒りを抑えきれないブサ。怒りの方が明らかに比率として大きいが。
もし同じ元日本人ならば、日本に戻る方法をもしかしたら知っているかもしれないという期待と、あまりに違いすぎる自らの現状との差による怒りであった。
それ以前に結婚している女性に対しての行動に突っ込め。現代日本人からしたら、明らかに問題しかない行為である。
そういうブサも『猫』という立場を利用して、わりとフリーダムにやっているのだが。主にエステルとレアに対して、というよりも現時点では被害者はその二人だけだが。
元のおっさんのままなら、即座に衛兵を呼ばれていただろう。
向こうにもどこかに同情を寄せられるところがあるのかもしれないが、あちらは調子に乗った結果が犯罪者予備軍、あるいは犯罪者であった。
逆の立場であっても同じようになっていた可能性は否めない。何しろこの男、かなり調子に乗りやすい性格なので。
エステル達への態度を見れば分かるだろうが。
そんなブサの不審な様子に気付いたリュシアンがロラン達とセヴランに目配せをする。
どうやら少女以外の全員がブサの様子に気付いたようだ。何しろこの猫、態度が分かりやす過ぎる。
もっとも、リュシアンが気付いたのは膝に爪を立てられたからだが。その後も少女の言葉に反応して尻尾を膨らませたり、尻尾をバサバサ振り回していれば流石に気付く。
ちなみにリュシアンの膝に乗せられているのは、ブサが余計なことをしないようにだ。すでに女好きというのは見抜かれている為に。
目の前の少女も目鼻立ちのはっきりとした活発そうな美少女なので、ブサの反応は簡単に想像がつくからだ。
それはそれとして、ブサの不審な様子に、何かあるらしいと気付いたのだろう。そちらに関しては、後程ブサに確認を取るとして今は目の前の少女への尋問を優先させるようだ。
「……ふむ、なるほどな。その件はまた後で聞かせてもらうとして、今は当初の予定を済ませるとしよう。お前さんはセリアと呼ばれていたな。先程は詳細は話さなかったが、ウェステリアギルドからの手紙の内容を話したい。聞いても聞かなくてもお前達の罪が軽くなったりという事は無いが、どういう理由で処罰が下る事になったのかぐらいは知っていた方が良いと思うんだがな」
「あ、はい、あたしの名前はセリアで合ってます。それと、あの、さっきギルドマスターさんが話していたのが全部では無いんですか……? それと、一般人への暴行の現行犯って……。ぁ、あのっ、内容はちゃんと聞きたいんですけど、その、あたし達のやった事ですから……っ」
セヴランの言葉に恐る恐る聞き返すセリア。先程セヴランに言われた事も気になっているようだが、話を受け入れる覚悟はあるらしい。
セリアの言葉に大きく溜め息を吐くセヴラン。若干言い澱みながらも話し始める。
「うむ、さっきの話だが。まず、ロラン達に武器を向けたのはまぁ良い。ギルド員同士の喧嘩はよくあるし、当人達も然程気にしていないから、口頭での注意だろう。頻繁に引き起こしているなら、強制依頼を受けさせる事はあるが。それと、『一般人』と言ったのはこいつらの連れている猫の事だ」
「この猫が、『一般人』……なんですか……?」
改めて自分の行いを自覚して身を縮めていたが、——特に『頻繁に引き起こして』の辺りで。どうやら、今回が初めてでは無いらしい——続けて言ったセヴランの言葉に疑問を浮かべる。
訝しげな顔とは言えど、美少女に見つめられデレデレと相合を崩すブサに、セリアが顔を引き攣らせる。ほぼ初対面の人間にドン引きされるとは、どんな表情だったのか。
「そうだ。そいつは依頼中にロラン達が街道沿いで拾った猫でな。人慣れしているから恐らくは飼い猫だろうという事で、捜索依頼が出ていないか確認のために連れて来たんだそうだ。結果的に依頼は無かったが……かと言って、野良と決まった訳でも無いからな。故に一時的に保護対象として扱う事になった。知らなかったとは言え保護対象に暴行を加えるのは罪に問われるし、そもそも街中の犬や猫をわざわざ痛めつけるギルド員なんていない。犬猫も一般人と同様に扱われるからな。職員達の対応には、ある程度パターンがあってな。あれは武力を持たない相手への暴行があった場合のものだ。それを見たからこそ『一般人への暴行』と判断した。ロランの証言によると、実際暴行の事実はあったようだしな」
犬猫が一般人扱いという事には驚いたようだが、その後の説明に納得がいったのか大人しく聞いている。
その様子を見て話しを続ける。
「では続きを話すが、先程受付で話したのはほんの一部と言って良い。正直なところ、よくもこれだけやらかせるものだと思ったな。一部の内容には、重罪とされるものも含まれていたしな……」
セヴランの話した内容はこうだった。
ギルド登録時に『新人なら、慣れるまでしばらく一緒に組んでみるか?』と声を掛けてきたギルド員に対し、見当違いの暴言を吐いた挙句に突然殴りかかり怪我を負わせた事。その事に対してもさらに暴言を吐いていたと。
そもそも、そのギルド員には普通に避けられるものだったのだが、避ければ背後の別の新人に当たって怪我をさせてしまう為に避ける事が出来なかったそうだ。これは居合わせた者達と職員の証言でハッキリしているらしい。
その後も、ギルド側で指定して中堅ギルド員と組ませて狩りに出してみれば、あれこれ気に入らないといちゃもんを付けて来る。
それでも何人かと組ませてみれば、組ませた者を気にせず敵に突っ込む。それをカバーしようとして彼らが怪我をすれば邪魔者扱い。組んだ中に女性がいればベタベタと絡んで、狩りにならない。
初回で懲りてギルドも女性を組ませようとはしなくなったが、一連の評判はあっという間に流れ、その町では組みたがる者が誰もいなくなったらしい。
そしてギルドからも持て余され、別の町へ行く事を勧められる事になった。体の良い厄介払いだ。
次の町へ行く手段としてギルドの依頼で商人の護衛として同行すれば、依頼人に対しても横柄な態度を取る。
だが実は、この商人はギルドの契約商人である。この商人の護衛を受けさせるギルド員、すなわち『要注意人物』であるため監視役も兼ねていて、ギルド員の態度や対応を見ているのだ。問題があればそれは逐一報告される事となる。
だが、あの男は護衛中だと言うのに、離れた所にいる魔獣にも襲い掛かる。依頼人にせめて一言でもあればまだ良いのだが、それも無く、そのうえで魔獣を倒した事を誇らしげに自慢していたそうだ。
終いには魔獣に襲われている別の商人の馬車を見つけた時には、許可も無く勝手に馬車から離れて、向こうの馬車を襲う魔獣に襲い掛かっていた。
結果的には襲われていた馬車も、そちらに付いていた護衛達も無事だったが、これまた勝手に行き先が同じだからと同行する約束を取り付ける始末。
その為に予定の行程日数を超えての到着になり、以降の予定も大幅に狂う事になった。もちろん、その事に対しても謝罪は一切無い。
逆にそれを追求した依頼人を『人でなし』と罵る始末。依頼を受けている最中は依頼人を最優先するのが当然であって、他人が襲われていたとしてもこちらに被害が無い場合は素通りする事もある。もしも相手を助ける場合には依頼人の許可が無くては出来ない。
それに関しても苦言を呈したが聞く耳を持たず、魔獣に襲われていた側の商人が勝手な事をした男を窘めていた程だ。
さらにこの件で最悪なのは、魔獣に襲われていた商人の護衛——エルフと獣人の二人だ。まだ仲間になって短かったらしい——を勝手に引き抜いた事。
そのせいで向こうの護衛がいなくなってしまった為、ギルド側が補填しなくてはならなくなった。あちらの商人がギルド員に対する信頼を無くしてしまった為に、職員を護衛として出すしか無かった。その為にあちらの人員が足りなくなったのだ。
それというのも、その二人——アンリエットという名のエルフと、ララという名の獣人——とはウェステリアの先の町までの護衛という契約だったのだそうだ。それを依頼料の残りの半金はいらないからここで抜けると、二人は一方的に告げたとか。
明らかに契約違反なのだが、『男が助けなければ全員死んでいた、それに対して恩を返さなければならない』と言い張り、前金の返却と違約金を払う事を条件に二人が抜けるのを止められなかった。
恩を返す云々は建前で、単に二人がアンリに一目ぼれしただけの事だった。
ひょっとしたら『魅了』的な能力でも持っているのかもしれない。ただし、寄って来るのは全員人格に問題のある人間ばかりだが。
それ以外にも出るわ出るわ。教会でも問題を起こしたり、他者を悪人と決めつける事も多数、新しいものでは門前での出来事も加わっていた。
そして最新のものが、ギルドでの騒動である。
「……よくもまぁ……これだけ短期間でやらかせるものだよナ」
リュシアンの呆れた呟きも、もっともだろう。
セリアという少女は、今更ながらに客観的に自分達の行動を聞かされて、顔を真っ赤にさせながら震えるしか無かった。怒りでは無く羞恥心からである。
セリアは本来はまともな感性をしているのだ。今まではアンリに感化され、異常を異常と気付けなかったが。
補足的なもの。
〜アンリエットの場合〜
魔法の威力は凄いがそれを驕っていたため、アンリ(ハーレム)以外の人間に対しての態度が最悪。
人間=自分が魔法を打つまでの間の盾、という考え。そのわりに威力調節が出来ない為に獲物はボロボロ。
結果、仲間に入れてもすぐに外されていた。それに対しての逆恨みで人間への偏見が酷くなった。(元々人間を見下していた。エルフ全体がそうなのでは無く、彼女自身の性格。人間を見下すエルフ達もいるが少数派。大多数は特に関心無し、敵対するなら容赦はしないが)
一人でも出来る討伐関連で稼いでいたが報酬の良い討伐依頼は危険度が高すぎて手が出せず、生活レベルは下がるばかり。
そんな折に他のパーティーから外された獣人の少女と出会い、二人で組む事に。
〜ララの場合〜
考えるのが嫌い。敵を見つけたらとりあえず突っ込む。真正面から突っ込む。
連携? 何それ、美味しいの??
段取り? 何それ、どんな鳥??
目の前に獲物がいるんだから、戦えば良いじゃニャい。けど、アタシが戦ってる邪魔はしないでニャ!
視界に入るな邪魔! とばかりに平気で周りも巻き込む。仲間が怪我しても気にしない。仲間に治療を求められても目の前の敵が最優先。
ついでに素材とかも気にしないから素材はボロボロ。当然、報酬もボロボロ。
結果、パーティーから外されるけどその原因を理解してない。する気もない。
パーティー組むのは、交渉とか物資の調達とか、頭を使う事や面倒な事を全部やってもらうため。自分は戦闘だけするのが担当と、他の事をする気は一切ない。自分が楽しい事しかしたくない。
そんなこんなで、またもパーティーから外された直後にエルフと出会い、二人で組む事に。
だが、意外とこの二人だと連携がうまくいく。
アンリエットとしては、ララが自分が魔法打つまでの間、壁になってくれれば良い。自分から突っ込んで敵を引きつけてくれるならそれで良し。
ララとしては、戦ってる最中に視界に入らないから戦いやすい。トドメを持ってかれるのは残念だけど、それまでは好きに戦っていられるから良し。
素材はボロボロだけど、討伐部位だけ持っていけばある程度の報酬は得られる。二人共
、素材は取れたら取る位にしか考えていない。
結局、生活レベルは変わらないが、戦闘面では問題無いためパーティーを組んだまま。
結論、こいつら同類。




