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どうやら、ギルドのルールは厳しいらしい

「みんな……っ!? 受付の方、これはどういう事ですか!?」

「どういう、とは? 何かおかしな事でもありましたか?」


 エステルにナイフを突きつけられたまま、焦り叫ぶ男。そんな男の様子を気に留める事もなく、淡々と返事を返す。その間にも、男に突きつけたナイフはまったくずれる事はない。


 職員達に組み伏せられた仲間達に駆け寄りたくても、ナイフがある為それも出来ない。チラチラと仲間達を窺いつつも、ロラン達を睨み付けて来る。どうやら、未だに自分達の状況がロラン達のせいだと思い込んでいるらしい。


「オレ達はあの盗賊達から貴方達を守ろうと……!「その時点から間違っているのですけれども」何を……」

「貴方の仰る盗賊達とはどの方達でしょうか?」

「……え? え? え??」

「貴方の仰る盗賊達とはどの方達を言っているのでしょうか?」

「いや、あ、あの! 貴女に絡んでいた男達ですよ! ほ、ほら! この凶悪面をした連中です!」


 自分が守ろうとしていたはずの女性から冷たくあしらわれて混乱しているようだ。エステルの冷ややかな目と口調に口ごもりながらすぐ傍に居たロラン達を指差す。

 やはりロラン達を盗賊と思い込んでいるのは間違い無いようだ。

 男に指差されたロラン達が、各自不機嫌そうに男を睨む。……凶悪面の面々故に威圧感が凄まじい。特に同名のアンリからのものが。

 少しずつ痛みの取れて来ていたブサも、ロラン達と共にハーレム野郎を睨みつけていた。


 ハーレム男は何をそんなに唖然とした顔をしているのだろうか。その仲間達はというと、こちらも全員唖然とした顔でエステルとロラン達を見比べていた。

 そんなにロラン達が盗賊では無いという事が信じられないのだろうか? 見ての通り顔は凶悪だが、決して一般人に暴力を振るった事は無い。


「ロランさん達は盗賊などではなく、れっきとしたギルドの一員です。これまでにも討伐依頼や護衛依頼など、多くの依頼を達成しており、依頼人からの評判も上々です。本日も護衛依頼を達成し、その報告を受けたばかりです。そもそも、何の根拠があって彼らを盗賊呼ばわりしているのでしょうか?」

「……ぇ、いや、だって……誰がどう見ても」

「つまり、貴方の思い込みですか?」


 ひどい話である。職員達だけで無く、その場に居合わせた全員が不快そうに男達を見ていた。

 ようやく自分達の間違いに気付いたのか、男とその仲間達が慌て始めるもすでに遅し。すでに言い訳も出来ない状況になっていた。段々と顔色を悪くさせていく。


「ぐなぅ(今更気付いたのか? おせぇよ)」


 痛めつけられた恨みもあって吐き捨てるように呟くブサ。

 そちらにハーレム男の視線が向く前に、別の男の声が響いた。


「おい、そこのお前ら」

「「「「「「っ!?」」」」」」

「随分とまぁ、大声で騒ぎまくっていたな。何の騒ぎだ?」

「ギルドマスター、お騒がせしてしまい申し訳ありません」

「エステル、お前が謝る事では無い。大方、そっちの連中が原因だろう? ……現状を見る限りでは、一般人への暴行行為の現行犯ってところか」

「ま、待って下さい! オレ達はそんな事一切していません! ……っ、それよりも! 王都ギルドマスターが貴方ならば、ウェステリアのギルドからの指名依頼で手紙を預かっています! 手紙を届けるためにオレ達は此処に来たんですっ!!」


 流石にこの一連の騒ぎは、奥にいたセヴランにも聞こえていたらしい。

 セヴランを知らない男は、突然声を掛けてきた見知らぬ男に不審そうな目を向けていたが、それがギルドマスターと分かった途端にセヴランに対し弁解をし、依頼を受けて来たのだと大声で叫ぶ。


 突然人前で依頼の内容を言う男に不快そうな顔を向けるセヴラン。それもその筈、自分が受けた仕事内容は人には話さないという事は、ギルド規約にも書いてある事だ。この時点でギルド員として失格だろう。周りにいる者達も眉をひそめていた。


「……ハァ、自分の受けた依頼を大声で言い触らすとはな。基本的な事も知らないギルド員がいるうえに、そんな人間に依頼を出すとは……ウェステリアのギルドの質も落ちたな」

「なっ……!?」


 苦々しく呟いたセヴランのセリフを聞いて、絶句する男とその仲間達。


(ん? 依頼内容は秘密にするのか?)


「お? ブサ、どうかしたか?」

「ぶにゃ(どうせ言っても分からねーだろ)」

「……まぁ、何を言ってるかは分からないんだけどな」

「ギルドの規約の事じゃないでしょうか? ギルドマスターが話していた件ですが、依頼内容を周囲に言わない事はギルド員としての基本です。通常の討伐なら特に問題はありませんけどね、自分がどの程度の戦闘能力を持っているかの誇示にもなりますから。ただし、その場合でも個人の依頼人がいる場合は、依頼人名を明かさないのが当然ですね。中には名誉を気にする方もいらっしゃいますので」


 ここで一旦言葉を切ると、一度視線を男達にやってから再び話し始める。


「そして、ここからが重要なのですが、依頼人から受けた依頼に関しては内容を秘密にする必要があります。わざわざギルドに依頼が出されている手紙の配達などは特に。情報が詰まっているものでもありますから、敵対している者に奪われるリスクなどを考えると当然です。そもそも通常の手紙であれば、わざわざこちらに依頼をする必要はありませんからね」


(ほーん、ラノベとかだと依頼内容ぼろぼろ話してる事多いけどな。受付の美人ちゃんが、主人公の能力とかぽろっと言っちゃったりとかなー。そう考えると、あれって実は駄目なんじゃね?)


 情報の取り扱いに関しては世界間で違うのだろうが、少なくともここでは情報は秘するのが是とされているようだ。

 同様に、ギルド員の情報に関してもきっちり守られていて、ギルド側から漏れる事は無い。当人達が言いふらしたりしない限りは。

 それを考えるとこの男が今やった事は、ギルド員として最悪の行為だろう。


 セヴランにも冷たく吐き捨てられ絶句していた男達だが、さらにアンリの話を聞いて完全に顔色を無くしていた。


「……何をそんなに驚いているんだか。お前ら、本気で知らなかったのか?」

「……ぁ、え……だ、だって! そんな事、オレは一言も聞いて……っ」

「……わざわざ口頭で説明したりしないがな。登録時に書類を書かされなかったのか? 登録の書類とは別に、ギルド規約の同意書があった筈だが」

「……オレは! そんなの見て「あの、あたしそれにサインしました……。それと、アンリもそれにサインしています……っ」……ぇ、セリア……?」


 呆れた様に男達に問い掛けるセヴランに、噛み付く様に反論しようとするが、仲間の一人からの発言に呆然となっていた。

 規約にサインをしたと言う少女に、別の一人が食いかかる。


「……セリアさんっ! 貴女という人は、まさかアンリさん一人だけに罪をなすりつけようとでも言うのですか……っ!?」

「……ぇ、そんな、セリア……嘘、だよな?」

「……罪をなすりつけるも何も、あたし達が同意書にサインしたのは事実だわ。依頼の内容を他者に口外しない、というのは書いてあったもの。それに反すればペナルティを受ける事もある、とも」

「「……え?」」


 どうやら、セリアと呼ばれる弓使いの少女は規約の内容を覚えていたらしい。というよりも、今思い出したといったところだろうか。

 同時に規約の内容を思い出したらしいエルフの女は顔を(しか)め、獣人の女は思い出せなかったのかしきりに首をひねっていた。

 一方、セリアの言葉を聞いてアンリと、セリアに食ってかかろうとした少女は愕然としていた。

 もう一人の斥候の少女の反応はいまいち良く分からない。


 セリアという少女が思い出すのは、すでに遅かったようだ。


「……ハァ。……その件に関してのペナルティは後の話だな。そろそろ頭も冷えただろう。エステル、離してやれ。お前達もだ」

「「「「「「はい」」」」」」


 セヴランの指示を受けナイフを離し、受付に戻るエステルや他の職員達。戻る途中で、エステルがブサに心配そうな目を向けていたが、エステルに心配されて舞い上がったブサがぐねぐねと身をよじるのを見て笑みをこぼしていた。

 そんなブサを見て、肩をすくめるロラン達。

 そんなブサ達の様子を見て、他の職員やギルド員達の緊張も緩む。


 そんな少し緩んだ空気を再び引き締めるように、セヴランが騒ぎを起こした男達を睨みつける。


 呆然としている男はともかく、セリアと言う少女以外はセヴランや周りの者達を睨み付けながら臨戦態勢を取ろうとしていた。

 彼女達のそんな様子を見て、いつでも制圧出来るように職員達が密かに構える。


「お前達の様子を見る限り、手紙の内容も想像がつきそうだがな。ワシ宛てのウェステリアギルドからの手紙があるんだろう? 寄越せ」

「……ぇ、でも……っ、さっき依頼は口外するなって……」

「お前がそれを気にするのか? 今更の話だな。さっさと渡せ」

「……はぃ……」


 口では殊勝な事を言っているが、手紙を渡した後俯いたその表情は、セヴランを睨み付けながら醜く歪んでいた。


 男から渡された手紙をその場で開き、セヴランが素早く目を通す。


「…………。フン、やはりな」


 読み終わったセヴランが顔を上げると、職員達全員に命令する。


「こいつらを全員捕縛しろ」

 個人的にはギルドの依頼内容とか普通に言い触らすのって違和感があったのでこうなりました。普通に会社で受けた仕事内容個人情報ぺろっと話しちゃう受付の人もダメじゃない? と思うのですよ。


 依頼内容  ・・・口外厳禁、口外内容によってペナルティ有り


 魔物情報  ・・・情報共有OK(出現場所・習性・強さなど)


 依頼人情報 ・・・口外厳禁(貴族関連は特に)


 ギルド員情報・・・ギルド側には守秘義務有り。ギルド員側が話すのは自由。ただし、他人の情報を言い触らしまくると信用を失うけれども。


 文中の『手紙』に関して・・・通常の手紙なら普通に郵便サービスがあるので、そちらを使う。ギルドに依頼を出す手紙=重要性の高い手紙、という事で狙われる可能性がある。その為、それを口外するのは問題外と言う認識。

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