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どうやら、危険は無いと判断されたらしい

 久しぶりの白目です。

 ブサへの尋問も一段落し、室内にだらけた気分が流れた後、ハッ!? とブサが我に返る。


「ぎなぁっ!!(結局おれはこの先どうなるんだよっ!)」

「あぁん? ……いや、何言ってるかさっぱりわかんねぇからよぉ、これ(・・)使えやぁ」


 思わず猫の言葉でまくし立てるも、当然彼らには伝わらない。

 緊張感が切れ、グデンとやる気無さそうな雰囲気を前面に押し出しながら、サミュエルがピラピラと文字表を差し出す。ブサとしても文句は無く、再びソレを使って会話する事となった。


『おれはこのあとどうなる?』

「あん? ……そういや考えてなかったな。どうするんだ、アンリ?」

「なぜ私に聞くんですか」

「頭脳担当だからな。……ついさっきまではポンコツだったが」


 ブサが文字表を使って自分の今後を質問する。

 が、特に考えていなかったらしいロランの言葉に思わず顔が引き攣った。当然とばかりに話を振られたアンリも同じく。

 直後のポンコツ発言でこめかみに血管が大きく浮き上がる事になったが。


 それを見たサミュエルとリュシアンがさり気なく距離を取る。

 何気なく、椅子に座り直す振りをしてセヴランまでもが椅子を遠ざけたのは何故だろうか。気にしない方がいいのだろう、きっと。



 * * * * * * * * * * 



「さて、それではブサの今後について。改めて話しをしましょうか」

「な、なぁ。アンリ? 少しばかりやりすぎ(・・・・)ではないのか?」

「はい? 何がでしょうか?」


 何事も無かったように話しをし始めようとするアンリ。セヴランが突っ込みを入れるも、にっこり笑顔でしらばっくれるアンリ。


 その隣に座っているロランの姿は、白目を剥いて口から何かが出ている。半透明の、何かが。

 そんなロランを不自然なまでに見ようとしない残りの二人。

 ブサは、というと、うっかりアンリの《とても口に出して説明してはいけない何か》を目の当たりにしてしまい——こちらは口から何も出していないものの——同じく白目を剥いていた。


「あぁ、その、だな。……その肝心の彼がこう(・・)なんだが……」


 笑顔のアンリになぜか怯え気味のセヴラン。怯えながらでもきちんとブサの様子を告げるのは、流石といったところだろうか。そもそも怯えてる時点でギルドマスターとしてはちょっとアレだが。


「おや? ブサには少し刺激が強かったかもしれませんね。まぁ、良くある事ですから、早く慣れた方がいいですよ?」

「……ヴナ(……努力する)」

「はい、是非頑張って下さいね」


 やっとブサの様子に気付くも、サラッと軽く流された。どうやら良くある事らしい。


 それにしても、ナチュラルにブサと会話が繋がっていないだろうか。


「あー、なぁ、アンリ? てめぇよぉ、ブサの言う事分かんのかぁ?」

「いいえ、分かる訳ないでしょう?」

「あン? 今、話通じてる風じゃなかったカ?」

「勘です」

「「「……は?」」」

「勘 で す」

「お、おぉ」「……そうカ」「なるほど……」


 どうやらアンリは勘でブサと会話の出来るスキルを身につけたらしい。……これも、流石と言うべきなのだろうか?


「(なぁ、ギルドマスター様よぉ? アンリを何とかしちゃくれ(無理だ)早ぇな、おい)」


 こそこそと小声で何やら話し合うサミュエルとセヴラン。何をそんなに恐れているのか。


「(アンリはワシの妻に似てるんだ……)」


 驚愕の事実であった。


「(……顔がかぁ!?)」「違うわっ! 性格に決まっているだろうっ!」

「何の話ですか?」

「「あ」」

「……少し、お話し、しましょうか?」


 せっかく小声でこそこそしていたのが台無しである。案の定ばれた。本当にご愁傷様だ。


「ぎなぁ(南無)」


 そう呟くブサ見ながら深く溜め息を吐くリュシアン。まだ、この部屋からは出られないらしい。しかも、これで話が終わった訳では無いのだ。


「根本的な疑問なんだが、お前としてはどうしたいんダ?」

「ぶに?(俺か?)」

「お前だ」


 あちらの騒ぎをおいといて、リュシアンがブサに尋ねる。

 少し考えてから口を開こうとして……


「これを使って答えてくレ」


 文字表を指し示され口を閉じた。


「まず、大前提から行くゼ? お前の中身は人間なんだよナ?」

『おう』

「人間に戻れるなら戻りたいカ?」

『もどれるのか?』

「今の状態が『呪い』みたいなもんだとしたら、多分ナ。確証は無いガ」


 自分の今の状態をリュシアンに『呪い』と言われ考え込むブサ。

 この世界において『呪い』がどのようなものなのかは知らないが、ゲームにおいては例えば、石化であったり、カエルになったりというものがあった。それと照らし合わせて考えると、今の状態は確かに『呪い』と言えなくも無い。リュシアンの言う『呪い』が解除出来るものならば……


『もどりたい』


 人の姿に。さらに望めるならば元の地球に。


 確かに小説などで良くあるように、異世界チート能力で俺最強! とかに憧れもしたが、自分の周囲の人間がこうも規格外な男だらけなのを知ってしまうと、普通に生きるのが一番なんじゃないかと心から思ってしまう。

 特に、自分の後ろで白目を剥いてる誰かとか、今まさにお話し真っ最中の誰か達を見ると。


(絶対、振り向かないからな)


「……どうしタ?」


(ん? ……あ、話し途中だったな)


『なんでもない』

「……おぅ、なら良いガ。とりあえず、お前の目標は『人間に戻る事』で良いのカ?」

『できれば にほんにも もどりたい』

「『にほん』ネェ……」


 そう呟くと考え込むリュシアン。

 黙り込んでしまったリュシアンから意識を外し、チラッと背後に意識を向けると、まだお話し(・・・)は終わっていないらしい。手持ち無沙汰だ。


「……んぉっ!?」


(!!?)


「お、ロラン、魂戻ったカ」

「お、おぉ。また出てたのか?」

「ん、ばっちりナ」

「まじかよ、最近何だか多いな。それよりも何か考え事か?」


 魂が出る事は『それよりも』扱いされて良いものではないと思うのだが、本人達が気にしていないのだから良いのだろう。多分。

 あるいは、軽く扱われる程にはごく普通に、日常的に起こるのか。……そんな日常は嫌だ。


「ん、おう。ブサの事でちょっとナ」

「……俺が落ちてた間に何かあったか?」

「んや、今後の目標的なやつだナ。人間に戻って、『にほん』に戻りたい、だト」

「……まあ、そうだろうな。しかし、この世界(・・・・)には無いんだろう? どうやって戻るつもりだ?」

「ぶなぁ(分かってたらさっさと戻るわ、ハゲ)」

「なんか今、コイツに凄え理不尽にけなされた気がするぜ……」


 その通りだ。しかし、彼の名誉の為にも一応訂正しておこう。


 ロランは禿げてはいない。



 **********



「なぁ、アンリちょっと止めて良いか?」

「何ですか? まだ話しの「わり、ギルドマスターに聞きたい事がある」……まぁ、良いでしょう」


 未だお話し中だったセヴランに話し掛ける。


「ギルドの資料庫で『動物化の呪いの解き方』それと『にほん』または『異世界』についての資料は手に入るか?」

「……っ、うん? ……うむ、呪いだけならある程度の資料はある。が、動物化となると難しいかもしれんな。そもそも、動物に変化させるという呪い自体の例が少ないからな。一応無くは無いが。呪いについての資料は閲覧を許可しよう。見たい時はこれを担当の者に渡してくれ」


 若干放心中だったが、ロランからの問い掛けで無事意識を取り戻し、その内容について答える。そして横の引き出しを探ると、何やら札のようなものを差し出して来た。

 それを受け取りながら再度尋ねる。


「『異世界』については?」

 基本的には無害なおっさんです。女性へ近付けなければ。

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