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どうやら、ギルドもお手上げらしい

 ブサの人としての尊厳が揺らぎかけた翌日、ブサの朝食には久し振りに肉々しい肉が出た。具体的にはステーキが。ちなみに使われている肉はダイエットの味方、ヘルシーなササミである。パサパサになりやすい肉をシットリと仕上げている辺り、料理人の力量とロラン達の気遣いが窺える。そんな事ブサは気付く筈も無いが。

 そして、肉も久し振りと言う程久し振りでも無い。ほんの二、三日も我慢出来ないブサの忍耐力の無さ。知ってた。


 歓喜の涙を流しながらササミステーキを貪り食うブサに向けられたロラン達の目は生温い。

 ロラン達とて、昨夜謂れの無い疑惑の目を向けられたのはそれなりにショックだった。謂れのある疑惑なら普通に受け止めるが。

 まぁ、そんな訳で、時々はガス抜きとしてブサに肉を与える事にしたのである。

 いきなり全ての食事をダイエット食に切り替えるのは難しいと悟ったらしい。リバウンドされたり、暴走されても困るし。特に暴走。ブサならやりかねない。嬉しくない信頼関係である。


「飯が終わったら、一度部屋に戻って、改めて今日の予定を組むぞ」


 食事を頬張りながらなので、各自適当に手を挙げて応える。


(肉が……肉が美味ぇよぉ……)


 大袈裟な反応。


「チッ……!」


 そしてジョゼの舌打ち。

 ジョゼにとって、昨夜の「食べちゃった」は作戦だったのだ。ジョゼから見て、ブサが肉に飢えてる事など一目瞭然。敢えて『上げて落とす』事で自分の要求を通しやすくしようとしていたのに、ロラン達のせいで台無しである。

 ジョゼから分けて貰ってたら大惨事が起こってたところだ。良かったね(つまらん)


 そして、朝食を終えての宿の自室。


「んで、今日は昨日も言ったように適当な近場の討伐依頼が無いか、ギルドに行くって事で」

「依頼が無かったラ?」

「……久し振りに雑用的なもんでも受けとくかぁ?」


 ギルドの雑用依頼は様々なものがある。店番から、荷物運びから、妙なものではペットの捜索まで。もっとも、店番に関してはギルドからの信頼と外見(・・)も重視されるが。ロラン達は外見でアスト。

 ちなみに、子守がギルドに依頼される事はまず無い。ブーメランパンツのムキムキマッチョなベビーシッターとか来たら嫌だし。

 どうやら、過去に事例があるらしい。手遅れだった。何故そんな格好で行ったし。


 雑用依頼は新人に譲る事を推奨されているが、依頼期限が近いものは誰でも受けて構わない。むしろ、ベテランが受ける事を推奨していたりする。期限が近いからと言って、新人が焦って受けて失敗されてはギルドとしては堪ったものでは無いから。


 だが、この町の依頼だと……。


「『薬草の入手』こっちも『薬草の入手』か。んで、これも『薬草の入手』……と」

「お、これ報酬良いぜぇ?」

「内容は?」

「『薬草の入手』」

「却下!!」

「こっちは『至急! 薬草の入手』ですね……」

「つか、どれもこれも『薬草の入手』じゃねーカ。あ、この依頼人のギルド職員一同って……おイ」


 とまぁ、こんな感じである。

 もちろん依頼人は主に女性。ところどころ男性。何気に男性からの依頼の方が報酬が良かったりする。ナニかやらかしちゃった事で奥さんへのお詫びの品だろうか? ちなみに『至急』の人。


 ギルド職員一同の依頼書を発見して、チラリとそちらを見やればニッコリと返される。もちろんロラン達にソレを受ける気は無い。それを悟ったか、職員一同から一斉に舌打ちが漏れた。おい。


「……まともな依頼は」

「……朝イチで根こそぎ奪われてるみたいだナ」


 この町で『薬草の入手』以外の普通(まとも)な依頼を受けたければ、早朝の依頼書更新に合わせて来るしか無いようである。朝食を取ってから来たロラン達は、この時点で完全に出遅れていた。


「皆様、もし依頼をお探しでしたらこちらをオススメしておりますが……」

「却下で」


 ススス……と近付いて来たギルド職員の示す先は、当然のように『薬草の入手』である。しかも、さり気なくギルド職員一同が依頼人のやつ。職員仕事しろ。いや、これも一応は仕事……か? 釈然としない。

 駄目元で尋ねてきたようだが、改めて断られた事で去って行く女性職員。それと入れ替わりで近付いて来る男性職員。


「……失礼ながらお聞きしたいのですが、あなた方は王都から来られましたよね? もしかして、昨日迷宮に潜られませんでしたか?」

「……確かに昨日は迷宮に潜ったが、それは個人的にどうしても断れないところからの依頼があったからだ。改めてギルドから薬草採取の依頼を受ける気は無い」

「あ、いえ。薬草の採取では無く、ですね……その、実は今、この町の状況がかなりまずい事になっているのですが……原因がその薬草なんですよね。理由は恐らく察して頂けるかと思うのですが……」


 まぁ、理由はお察しである。別室に通され話を聞いてみたら、以下のような内容であった。


 実は、ロラン達が教会に報告する以前からギルド宛てに既にクレームは入っていたらしい。

 というのも、最初は依頼を受けないと迷宮に入れない仕様にしていたのだが、そうしたら依頼を受けて薬草を採取して依頼を破棄する、といった裏技を使う者達が現れ始めたのだ。そのせいで依頼人には失敗報告ばかりが届くようになり、依頼人は激怒。男性ギルド員を指名して依頼を受けさせようにも、妨害された結果、薬草を巻き上げられて失敗など。


「その結果、この町のギルドはすっかり信用を無くしてしまっています。職員の中にも黙認する代わりに賄賂を受け取る者も居て、私達だけではもうどうしようも無いんですよ。ただでさえ、先日ギルドの信頼を地に落とすような事があったばかりだというのに……」

「……それを俺達に言ってどうするんだ? 女共を止めろ、とでも? ありゃ、無理だぞ?」

「いえいえ、王都ギルドマスターへの手紙を届けて頂きたいのです。ギルドを通してだと、現状では信用出来なくて……」


 まともな職員が不憫過ぎる。


「……苦労してんだな」


 ロラン達の労いの言葉に、ガチで涙ぐむ男性職員。本気で不憫。

 とはいえ、ロラン達も今は依頼完了承認待ちなので、勝手に王都に戻る訳にはいかない。自分達の方にケリが着いてからという条件で良ければと言えば、若干考え込んだがすぐに了承する。


「出来れば急ぎでお願いしたかったのですが、そちらの事情もあるのであれば構いません。どうか、よろしくお願いします」


 正式な依頼として職員から手紙を受け取る。町とギルドの現状が記されたものらしい。


「だが、王都のギルドには既に情報は流れてるんじゃ?」

「それは可能性としてありますが、保険の為です。あなた方がこちらに来る前には、まだ王都には情報は行っていなかったのでしょう?」

「……確かにそうだな」


 ロラン達がこちらに来る前に調べた情報には、迷宮に関するものは無かった。護衛を依頼した商人からも聞いてはいない。

 ただでさえ争奪戦の起こっているモノだけに、必要以上に情報が漏れないようにしているらしい。真面目な理由と、不真面目な理由の双点から。


「……ライバルが増えたら困るから、か……」

「その通りです……」


 互いに顔を見合わせて溜め息。


「承りました」

「お願いします……!!」


 必死な様子のギルド職員に別れを告げて、改めて依頼書を見るも相変わらずまともな依頼は無い。

 長居をしていると薬草採取を押し付けられそうな気配に、大人しくギルドから撤退するしか無かった。

 ギルドを出てすぐのところで立ち止まり相談する。


「俺、もうこの町から出たい……」


 小声で泣き言を漏らすのはロラン達……では無くブサで、声の聞こえたそちらを振り向けば、エサを待つ鯉のようにブサの真下で待つ猫達の姿。

 パッと見は非常に可愛らしい光景だが、猫達と目が合ってしまえば恐怖しか感じない。

 ギラギラと獲物を狙う目。愛玩動物の可愛らしさは何処かへと消え去り、ただ獲物を狙う野生動物の姿がそこにはあった。しかも、それが十数匹。


「「「「…………」」」」


 スッ……


「目ぇ逸らすなちくしょう!!」

 選択肢は『薬草の入手』のみ。だが、断る!!


 ラストのブサの叫びは見逃されました。ロラン達も怖いと思ったので。

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