どうやら、教会からの頼み事らしい
本日2話目。本来の今日上げる分だった方です。
道中のブサに群がる猫をかわしつつ教会に辿り着く。
ちなみに、先程ブサのカゴを開けようと頑張っていた猫はリュシアンが説得する羽目となった。強面の男が懇々と猫に説得する図。何の罰ゲームだろうか。周囲のヒソヒソ半端無い。おかげで、説得から開放された今でもリュシアンの耳は真っ赤である。
その後、ブサへと群がろうとする猫達への当たりが強くなってしまうのは仕方の無かった事なのだろう。猫が近付こうとすると威嚇する大人気ない男の図の完成である。猫好きの風上にも置けない。もはや涙目ですらある。可愛げは欠片も無いが。
「……そろそろ元気出せぇ……プッ……」
「笑ってんじゃねぇぞ、ゴルァ!!」
「『こいつには既に番がいるんダ』……プッ……」
「あぁああぁぁあ゛ぁ゛あ゛!!」
煽れる時に煽るスタイルのサミュエル。
ブサもカゴの中でプルプル震えている。『既に番が云々』に関しては欠片も同意出来ないが、猫を番に選ぶ気も欠片たりとも無いので黙っているだけの事である。予めロランから黙ってるように言われたのもあるし。
だけど、口元のニヤつくのは仕方無いよね? 目が笑っちゃうのは仕方無いよね?? とばかりに見事なチェシャ猫顔。声には出していなくとも、見られれば確実にアウト。
「ママー、あの猫さん笑ってるー」
「シッ、指差しちゃダメよ……!」
幼い子供の無垢なセリフが、一瞬でブサを高みの見物から同じ高さへと引き摺り下ろす。位置的には上っているのだが。
無言で持ち上げられたカゴの中のブサと、真顔のリュシアンの目が合う。
(目と目が合う~……)
そんな事考えてる場合じゃない。ついでに続きの歌詞は歌ってはいけない。ブサにそんな気は無いし、そもそも今はそれどころじゃないから。
(揺れる揺れる揺れるうるるrrr……!!)
無言でカゴを上下に揺さ振られる。ガックンガックンとカゴの中で暴れる頭。体は四つ足を壁に踏ん張っている為に何とか固定出来ているが、頭だけはどうにもならない。グワグワ揺れる視界に力尽き、カゴの中にベチャリと落ちたところでやっと揺れが止まる。
と、いうよりも……最初から無理に体を固定しないでいた方が被害は少なかったというのが実情だ。リュシアンも鬼では無いのだから。ブサが意地を張るから、リュシアンも意地を張っただけの事。完全に無駄骨である。
「あ、あぁ……あ゛! あ……あ゛のー……と、当教会に、何か御用でしょうか……?」
恐る恐る聞いてきた職員の心境や如何に。どもりまくりな様子である程度は察せられるだろう。
強面の男が四人も近付いて来たと思いきや、内の一人が無言で、かつ真顔で手持ちのカゴを突然上下に揺さぶり出す。何がしたいのか全く分からない恐怖。声を掛けても全く分からない恐怖。
プルプルと震えながらも必死にロラン達に声を掛ける彼は職員の鑑である。
扉の陰には同じく恐怖を感じて隠れている職員が数人。いざとなれば衛兵を呼びに走る準備は万端である。
ちなみに、ロラン達に彼が声を掛けたのはジャンケンで負けたから……というだけだ。決して職員の鑑という訳では無かったりする。ブサの入ったカゴがガクガク揺さ振られている間に、職員による熾烈なジャンケン大会が開催されていたのは、たまたまその様子を見ていた一般人のみが知る事である。お前ら、何してんの。気持ちは分からなくも無いが。
「あ゛ン!?」
「ひぃっ!?」
「八つ当たんな、あほ」「いテッ」
ビクッ!!
ブサを懲らしめて少し溜飲は下がったものの、まだスッキリ爽やかとは言い切れないリュシアンの態度はチンピラ並みであった。すぐさまロランにOHANASHIされて黙らされたが。
「仲間の者が失礼致しました。ギルドで手紙を受け取りまして……それでこちらに訪ねさせて頂いたのですが……」
「え゛? ……あ、あぁ! あなた方が……え゛!?」
「……何か?」
「あ゛、い、いえ……失礼致しました! どうぞ中へお入り下さい。案内の者を付けさせて頂きます」
何やら混乱しているような職員だが気合で押し通す。ニッコリと笑ってみれば、すぐに案内してくれる運びとなった。笑顔って本当に大事ですよね、ニチャァ……。
* * * * * * * * * * *
「お待たせしました。こちらから呼び出しておきながら、お手数をお掛けして申し訳ありません」
「いえいえ、こちらこそ(慣れておりますので)」
ポソリと呟いたアンリの言葉で、ロラン達全員の胸が痛い。アンリが小声で呟いた言葉の聞こえていなかった教会の人間だけが不思議そうに首を傾げている。
「あ、いえ……お気になさらず。ソレより、手紙の件なのですが……」
「あぁ、そうですね。……それでは、まずはこちらをご覧下さい。オレリア猊下からの書状です」
「拝見致します」
しばらく無言で読み進め、手持ち無沙汰になったのかサミュエルが覗き込む。
「……おい。もう一度言うぞぉ? ……おい!」
「どうした?」
「いえ、まぁ……サミュエルがそう言いたくなるのも分かるかと……」
ペラリと渡されたソレの扱いはかなり雑で、その事に何か文句が無いかリュシアンがチラリと目の前の男を確認するが、彼の様子には何ら変わりは無い。いや、少しばかり困っているようにも見える、か?
とりあえずは大きな問題も無さそうなので書状に書かれた内容を読み込む。
「……お前も見とケ」
カチャリと開けられたカゴの鍵。良いなら見るか、と軽い気持ちで覗き込んだブサの顔が歪んだ。
「……あなた方の事は猊下から詳しくは聞いておりません。ですが、私が担当になったという事は……そちらの猫が呪い持ちでしょうか?」
「どうしてそう思われたのか、聞いても?」
「私の得意とするものが解呪関連ですので。ですが、直接見て判断したところ……普通の呪いでは無いようですね」
「まぁ……その通りですね」
神の手に寄る呪いだ。普通である事など有り得ないだろう。
この書状を見た後では、それも『呪い』と呼べるのか甚だ疑問だが。
「この書状に関しては何か言われていますか?」
「猊下の依頼を受けて頂けるのであれば、協力は惜しまない……と」
「承知しました。元々こちらの迷宮には入る予定をしておりましたので、依頼を受ける事に異論はありません。ただし、すぐに依頼の品をお届け出来るかは不明ですが……」
「それはもちろんです。その為に長期滞在されるギルド員の方も多いですし、ギルドに依頼を出しても納品されるのは稀なんですよ」
「でしょうね……」
「美にかける女性の執念は、私達では理解しがたいものですから……こんな事を女性達の前で言われれば潰されますが」
(何を!?)
まぁ、ナニである。精一杯化粧をしている女性に「大して変わらないのに」とか、無神経な事を言ってはいけない。家庭内冷戦が勃発する恐れあり、だ。
それはともかく、これで方針も決まった。明日からは迷宮探索である。
「けど……何でやたら女のギルド員が多いのかと思ったら、そういう事か……」
「俺らにゃぁ、必要ねぇもんだしなぁ?」
「しかし、内情を知れば迷宮の通称も納得だナ」
「猊下も女性ですし……」
この町に存在する迷宮。まだ新しいものだが、この町では通称『美容迷宮』と呼ばれている。死霊が多く発生する為、女性からは特に不人気になりがちな町中の迷宮だが、ここは違う。それというのも、内部に美容成分を多く含む薬草が生えやすいからである。それを狙う女性ギルド員が多かったのはその為だ。
女性の美にかける執念というものは、死霊という嫌悪感をも弾き飛ばすものである。
この町の女性ギルド員は挙って死霊のはびこる迷宮に赴き、死霊をしばき倒し、薬草を手に入れては「取ったど――!!」と雄叫びを上げて凱旋し、再び迷宮に戻るのだ。それもこれも『美』を得るという、ただそれだけの為に。
この場にいる男性陣には理解出来ない感情である。
そして、ロラン達がオレリア枢機卿から受けた依頼は『美容に良い薬草の入手(可能な限りたくさん)』であった。巨乳になれる薬草もあれば良いね。
お久しぶりのオレリア枢機卿から。ちなみに、どう考えても個人的な頼みです。もしも巨乳になれる薬草が発見されたともなれば、『殺してでも奪い取る』になります。
無いから安心ですね。
一瞬だけど美容スライムさんを出そうかと考えたのは内緒。どう考えてもカオスにしかならないから……既にカオスなのに。と言う訳で普通に薬草になりました。
明日はこちらはお休みです。次話投稿は13日となります。




