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どうやら、道中の雑談らしい

 幼女お休み中。

「ゲフッ……! て、てめぇ……覚えて、ろ……よ……!」

「何の事を言ってるんだか、俺にゃぁ、さぁっぱり分かんねぇなぁ?」


 ニヨニヨ


 依頼人達を護衛しながらの旅路。馬車に並んで歩くロラン達と、力尽きたブサ。もちろん、怪我をした訳では無い。単に幼子の容赦無い遊んで攻撃に晒されて力尽きているだけの事だ。


 体の至る所にリボンを付けたブサがサミュエルを睨む。「てめぇ、さっきは良くもやってくれやがったなぁ……!」という怨念を籠めながら。

 だが、睨まれた側のサミュエルは全く意に介した様子も無い。

 よろめくブサに付けられたリボンを、指先で突くサミュエルをリュシアンが窘めるが、見捨てたお前も同罪とばかりにサミュエルから鼻で笑われた。

 実際に、見捨てた事を根に持っているブサがリュシアンに向ける目は厳しい。逆恨み……とも、この場合は言い切れないか。リュシアンが悪い訳では無いのだが。


 そんなブサ達の会話を聞いていた馬車を操る商人が、パーティーのリーダーであるロランに謝罪する。

 ちなみに、ついさっきまでブサ()遊んでいた幼女達は、馬車の中で母親の膝を枕にして夢の中だ。眠りに就いてなおブサを離そうとしないものだから、少々強引な手を使って少女達からブサを引き離している。もちろんブサを犠牲にする方向で。具体的には毛を毟る方向で。

 何とも特定の悩みを持つ方達が恐れ(おのの)きそうな方法である。ブサの毛根よ、永遠なれ。


 普段なら「他人への気遣い? 何それ美味しいの?」とでも言いそうなブサでも、眠る子供達には配慮するという常識を持っていたのか、それとも起こして再びおもちゃにされるのを恐れてか、普段よりも気持ち声を潜めて言い合っていた。そんな珍しい様子のブサをロランが眺める。

 グッタリしているブサを気にする商人からの謝罪を受け取り、少し話してからブサ達の元へと歩いて来ると、引っ張られ、毟られ、若干禿げている気のする箇所を軽く手で梳きながら、ロランがブサにジャーキーの塊を差し出した。


「あ゛!?」

「依頼人からの迷惑料(・・・)だそうだ」

「……貰う」


 差し出されたロランの手から掠め取るように奪い取ると、大口を開けて食らい付く。噛み締めると溢れて来る肉の風味は、テオドールの所に滞在していた時にデジレから貰っていたお気に入りのソレと同じだった。

 お気に入りの味に途端にご機嫌になり、アギアギとジャーキーを噛み締める。願わくば酒が欲しいと考えつつも流石に酒まで出て来る事は無く、少々物足りない気持ちになりながらも、ニンマリと顔を緩めながらジャーキーの味を堪能する。

 王都を出る時にテオドールから餞別として渡されていたのだが、あろう事か王都を出る前に食べ切るという、ある意味ブサらしい行動だろう。その結果、道中での楽しみが無くなっていたのだが。

 商人から迷惑料として貰ったコレを少しずつ楽しむならば、しばらくは堪能出来るのだろうが……恐らくこの分では早々に食べ切るのは間違い無い。


 そしてロランもまた、ブサが深く考えずにジャーキーを受け取った事にほくそ笑んでいた。何しろ、ロランは『迷惑料』とは言ったが、その範囲までは明言していない。

 依頼人は、この『迷惑料』を『依頼期間中』の物としてロランに渡している。ロランもそれと知って受け取った。これはブサには言っていないが。もちろん、ブサから何に対しての迷惑料なのかを聞かれていたら答えていたのだが、聞かれていないのだから敢えて答えなかっただけである。

 そして、ブサは既に迷惑料を受け取って、なおかつ手を付けているのだから、後から聞いていないというのは通用しない。

 

 依頼期間中、ブサが幼女達のおもちゃとなるのが決定した瞬間である。


 話の裏をきちんと読まないと、痛い目を見るのは自分だという教訓でもある。詐欺師だった癖に、警戒心の足りていないというか……これまでは自分が騙す側だったので、騙されたりする可能性を失念しているのだろう。何とも迂闊(うかつ)過ぎるが、ブサだから仕方無い。


「ん? つかよぉ? アンリの奴は何してんだぁ?」

「私がどうかしましたか?」

「お」


 噂をすれば何とやら、依頼人の馬車の後ろから出て来たのはアンリであった。何やら、妙にご機嫌である。一気に警戒心の湧き上がったブサが、ジャーキーをしっかと抱えながら後ずさっていた。


 そんなブサの反応に傷付いた様子は見せるが、それだけだ。非常におかしい。

 普段のアンリなら、ブサの態度を大仰に嘆いた挙句、アレコレとブサを構い倒そうとして、余計に嫌われる事になっている筈だが。

 アンリの認識が色々と酷い。……今さらか。


「何をしていた?」

「……秘密です。ですが、ブサにとってもある意味メリットがある事ですよ」

「……何?」


 ロランが怪訝そうな顔でこちらに歩み寄って来るアンリに問うと、少し考えた後に答えた内容にブサが反応する。

 何気に、アンリとブサが直接話すのは初めてでは無いだろうか。普段は徹底的に無視するか、近付かないか、隠れるかのどれかなので。

 今のブサはアンリの言葉の真意を精査するように考え込みながら、ジッとアンリの目を見据えていた。しばらく無言の時間が流れ、ジッと見つめられるアンリの目に喜色が浮かび、頬が赤らむ。ついでに鼻息も荒くなってきていた。


「きめぇ」

「な……っ!?」


 ガーン! とばかりに大仰に驚くアンリと、笑い出す面々。

 何とも懐かしい言葉である。あの時はまだ人の言葉を話せる事も無く、自分達も——気付いていなかった者もいたようだが——ブサを疑っていたものであった。

 何の因果か、主にリュシアンに世話係を押し付けながら良くもここまで来たものだ。リュシアンからしたら不本意でしか無い。


 まぁ、今回に限ってはブサがいるのは大きなメリットになっているが。子供連れの護衛は護衛料も高い。

それと言うのも、子供は往々にして大人の思惑通りには動いてくれないものである。騒いで欲しく無い時に騒いだり、動かないで欲しい時に動き回ったり……など。

 特に、町から離れた場所での護衛の場合は命取りにもなり兼ねない。こちらの世界の子供は地球の子供達より聞き分けの良い子供が多いが、それでも幼子(おさなご)の場合は自身の感情を優先する事が多い。

 引越しの移動中に、泣き叫ぶ子供の声に惹かれてやって来た魔獣に襲われて、一家全滅するといった事も少なくない。だからこそ、子連れの場合は護衛を出すのだが……リスクを負いたくないギルド員からは敬遠されがちである。労力と報酬が見合わない事も多いからだ。


 ちなみに、今回ロラン達が受けたのはテオドールからの紹介である事と、ブサの存在である。

 子供達はテオドールの顔に見慣れているのでロラン達にもそれほど怯えないし――かと言って、全く怯えない訳では無いが――何より秘密兵器(ブサ)がいるので子供達の意識の誘導がしやすい。依頼人が迷惑料としてジャーキーを持っていたのは、間違い無くテオドールの仕込みだろう。抜かり無い。


「まぁ、何はともあれ……美少女にモテモテだぞ? 喜べよ」

「喜べるかっ!! 俺はロリコンじゃねぇ!!」


 蛇足だが、こちらの世界でも『ロリコン』という言葉は普通に通じる。何故かと言うと、過去の異世界人がしっかりとそういった概念を広めているからだ。『YES ロリータ NO タッチ』の言葉と共に。何やってんだ、過去の人。

 もちろん、『紳士』の概念もしっかり広まっている。通常の紳士と『変態紳士』の方もだ。本当に何やってんだ、過去の人。

 小さい子は可愛いです。が、YES ロリータ NO タッチは守りましょう紳士諸君。


 赤ちゃんの腕のプニプニっぷりを見て「イカ飯みたいにプリップリだね!」と思ったのは私です。プリップリじゃないですか……。ねぇ?


 ぐぬぅ……! 月末が色々と忙しくて厳しいデス。

 ストックゼロ……新作書いてる場合じゃない……!!

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