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どうやら、ギルドマスターに相談してみたらしい

 そして巻き込まれる苦労人。

 日数は何も無ければ長く感じるものだが、タイムリミットがあると意外と早く過ぎるものであり、あっという間にロラン達が王都を出発する日は明日に迫っていた。


 この間、ブサは何をしていたかと言うと、珍しくまともにアレコレと動いていた。

 もちろん、リュシアンを足代わりに使ってだが。何しろ、ブサ単体で動こうとすると、どこからともなく大量の雌猫が湧き出てガッツリ頂かれそうになるのだから。ふと目を離した隙に猫に集られそうになっているブサを、何度助け出した事か……。

 ちなみに、ブサに襲い掛かる猫達の近くにしばしばアンリの姿があったのは、恐らく無関係では無いのだろう。


 それにしても、王都に来たばかりの時にはここまで雌猫達が寄って来る事は無かった筈だ。

 今日もセヴランに相談にやって来ていたブサが愚痴を零す。それに返って来たコメントは至って単純なものだった。


「気付かなかっただけでは無いのか?」

「それナ」

「んな訳あるかっ!!」


 それも一理あるだろうが、それだけが理由では無いだろう。ブサだけならともかく、ロラン達まで全く気付かないという事は考えられない。特に、アンリが。

 恐らくは、と前置きしてからセヴランが話し始めた。


「まぁ、可能性としては少しなりとも自身の過去を知ったからでは無いかな? それにより、無意識下で抑えられていたモノが表面に出て来た、という可能性もあり得るかもしれんなぁ」

「見てる分には面白いんだけどナ。今後も続くようなら、ちと困るんですよネ」

「むぅ……」


 真面目に顔面つき合せているが、その相談内容はなかなかにひどい。『うちのペットが雌猫にもてもてで困ってるんですが、どうしたら良いでしょうか?』である。『去勢してしまえ』と言いたいがそういう訳にもいかない。一度は言ったが。

 猫の体で去勢した場合は人になった際にはブツはどうなるのか? と何気無い疑問が浮かんだが、自身の体でうっかり想像してしまい、慌ててその想像を振り払っていた。


 ちなみに、こちらの世界でのペットの去勢方法は意外や意外。何気に現代日本と殆ど変わらない。サクッと切り開いて中身を取り出し、最後に治癒術で傷を塞いで終わりだ。手術時間も慣れた人間なら数分で終わる。

 念の為に「やるか?」と聞いてみたが全力で拒否された。まぁ、当然だ。


「ところで、何故また此処に来るんだ? ワシも暇では無いんだが……」

「同じ転生者なんだから大目に見ろよ。こっちは真面目な相談なんだからさぁ……」

「……今のが、か?」

「そっちもだが、それじゃねぇよ。……その、なんだ……今後どうしたもんかと思ってな」


 ガリガリと何やら書類に書き込みながらも、ブサの相手をするセヴラン。さり気に優しい。

 その様子を見ながらリュシアンは、そういえば自分達もギルド員成りたての頃は何だかんだ世話になったよなー、と過去に思いを馳せていた。同時に黒い歴史も思い出してヒッソリ身悶えていたが。若さ故の過ちだった。今ならもうしない、多分。


「正直、ワシから言える事は無いと思うんだがな。自分の事だ。他人に決めさせるつもりか? それで後悔するような事があれば、その責任は誰に行く? 他者に押し付けた己の責任とするか? それとも行動を勧めた他者に押し付けるか?」


 何やら怨念混じりに言うセヴランだが、セヴランは自身の行動を自身で決めて今までやって来た。それ故に、途中で起こった責任は基本的には全て自分に帰する。

 極一部の、全く関係無いところで責任を押し付けられそうになった事以外は。

 この件があったからこそ、ブサに対しての物言いが厳しくなっていた。まさにセヴランが言ったのと、ほぼ同じ事が過去にあったからの反応だった。


「ブサ殿はかなり面倒な性格のようだからな。下手な事を言えば、妙な解釈をされたり面倒事に巻き込まれるような気がしてならん。だからこそ、ワシから言える事は無いとハッキリ言っておく。どうしても、と言うならアドバイス程度なら構わんが、その結果どうなろうと責任はブサ殿自身が負うと制約を交わしでもしてもらうぞ」

「……お前、どんだけだヨ。ギルドマスターにここまで言わせるっテ……」

「俺は何もしてねーよ!!」


 否。わりと色々やらかしてる。セヴランが直接の被害を被った事は無い、筈。

 ついでに、セヴランの懸念は大体合っている、と言っておこう。

 

 仕事を片付けるセヴランの横で、ぎゃいぎゃいと騒ぐ一人と一匹。迷惑なんてレベルでは無い。

 セヴランの額に浮かんだ青筋に気付いたリュシアンが逸早くブサを沈めていた。慣れてるからか、流石に行動が早い。必要な時には危機察知能力もばっちりと働いていた。有能()である。


「何か、貶された気がしタ」


 受信能力もバッチリかもしれない。



 * * * * * * * * * *



「それで? 結局ブサ殿はどうしたいんだ」


 結局話を聞いてあげてるセヴランは優しいと思う。

 何気に仕事も全て片付けて、しっかりと話を聞く体勢になっていた。というより、話を聞かないとこいつは居座り続けると察したのか。


「そもそも、明日には出るっていうのに本n……猫の意思がまだ決まってないって事に驚いたが」


 言い直された。『人』でも合っているのだが。

 そして、セヴランの驚きももっともである。今まで一体何をしていたと言うのか。時間は十分過ぎる程にあった筈なのに。


「とりあえず、何がしたいのか言ってみろヤ」

「……まず、雌猫共から逃げたい。絶対に」

「あぁ……」「気持ちは分かル」


 ここ最近のブサが雌猫達からロックオンされている事実はセヴランも知っている。

 王都を出る前段階でギルドを訪れたロラン達と一緒に居た時、ギルドの外では猫が出待ちしているのだから、ギルド員達からだけで無く、職員達からも報告が入っていた。もちろん、ロラン達からも迷惑を掛ける事について謝罪をされている。

 ちなみに、一部の猫好きギルド員や職員達は大歓喜だった。興奮して鼻血を出す者が出る程に。さて、誰の事だろうか。


 だが、実際に狙われているブサは今日もゲッソリと尻尾を垂れさせている。今日もほぼ確実に外で出待ちをされているのだろう。

 遂に我慢し切れなくなって、ロランに強請(ねだ)って鉄製のカゴを買って貰った程である。

 外出時には自らカゴの中に入り、覆いを掛けて貰って、やっと安心して移動出来るようになった。唯一、外の様子を察する事の出来る猫耳からは、「あぉ~ぅ」「うるなぁ~お」と言う発情した雌の鳴き声が引っ切り無しに聞こえて来ている。が、視界に入らないだけまだマシだろう。

 精神的にはギリギリ抉られているが。


 ちなみに「お前が今感じている気持ち悪さが、レア嬢ちゃん達がお前に感じていたものだ」とロランに言われてヒゲが抜け落ちる程に愕然としていた。多分、ヒゲが抜けたのは偶然だが。

 そのおかげ……と言うには微妙なところだが、結果的にレアの心情を一部なりと理解出来た為、必死に謝り倒して王都にいる内にレア達と和解出来たのは不幸中の幸いだっただろう。

 抱き締めて貰う事は無くなったが、再び頭を撫でて貰えるようになっただけでも幸運である。たとえ、それが人差し指一本だけとなっても。……あれ? あまり許されてる気がしない。


 それと、レア達には元人間という事は話していない。話せば面倒事にしかならないから。

 あくまでも、薬のせいで人の言葉を話せるようになったという設定にしている。ちなみに、この手の薬は実際に存在している為、それを疑われる事は無かった。

 本来ならば、薬を飲んでもこれ程までに滑らかに人語を話せないのだが、居合わせたギルド員達からは『まぁ、こいつら(ロラン達)の連れだし』で納得されていた。何故だ。


雌猫共(やつら)の事を考えると、王都から出た方が良いんだろうけどさぁ……王都を出たら女の子いないじゃん? 何が楽しいの?」

「王都以外にも女性はいるが」

「そういう意味じゃなくて!! ほらぁ、こう……垢抜けたってーの? 如何にも! って感じの美人ちゃんなんて、王都ぐらいだろ? 村とかじゃさぁ、もっさい感じのしかいないじゃん?」


 お前にだけは言われたくない。と二人が同時に考えたのは無理も無い。踏ん縛って雌猫達に生贄に捧げてやろうかと考える程にイラッとした。


 生贄って……雌猫達は邪神か何かか?

 猫時に去勢すれば、人になっても去勢されっ放しです。怖ひ。


 それと、ブサの自分の行動を後押しして欲しいアピール。だが、失敗したら責任は押し付ける系ゲスの極み猫。こんな感じで↓↓↓


 ランチ時の会話で「ねぇねぇ、AとBのどっちにしたら良いと思う?」と聞かれて「A」と答えると「え~、あたしはBかなぁ」と言われると「なら聞くなし!」。「じゃぁAにする」と言った後で実際食べてみて「やっぱりBにすれば良かったぁ。信じたのにぃ」と言われて、「なら自分で決めろ!」。良くある事ですよね、はい。

 

 めんどうくさっ!

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