表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/152

どうやら、ちょっとだけ近付いたらしい

 猫ホイホイ。うらやま……!


 (*`ω´)ぐぬぬ・・・

 セヴランから衝撃的事実()を聞かされた後、ギルドを出たロラン達がブサを連れて宿屋への道を歩く。ふとセヴランから聞いた手紙を思い出し、注意深く周りに目をやってみれば……。


「……意外といたもんだなぁ」

「……何で気付かなかったんだろうな」

「……っ! ……っ!!」

「せめて言葉にしロ」


 屋根の上、柱の影、植え込みの中、荷物の隙間……視線を向ければ逃げるのはいつも通りだが、ロラン達が目を向ける方々に猫の姿があった。自分達に普通の動物は近付かないという先入観があったせいとも言えるが、気付かなかったというには無理のあり過ぎる数だ。

 そしてアンリはあちらこちらに居る猫達の姿に無言で悶えていた。プルプル震えながら鼻の辺りを押さえているような気がするが、気のせいだろうか。


「ひょっとしなくても……あれ、全部雌猫かぁ?」

「雄がいてどうすんだヨ」


 ひょっとしたら、極少数の雄が混じっている可能性はある、かもしれない。


 猫達から熱い視線を送られているブサ本猫は、ガタガタと顔がぶれる程の勢いで震えながら、全力で猫達の視線から逃れようとして自分からリュシアンの服の中に潜り込んでいた。


「腹がかゆイ」


 さもありなん。

 ブサ自身の振動と、ヒゲやら毛やらが服の中で蠢いているのだ。腹の当たりが凄くモシャモシャする。

 鞄に入れればこんな感覚を味わわずに済むのだが、鞄に入れるのはブサに全力で抵抗されていた。

 正面は同じ布一枚隔てただけなのだが、半面を肉の盾で守れるので安心感が段違いだからだ。つまり、リュシアン本体はブサからしたら盾と同義である。ブサならば「俺の為に犠牲になれ!」と普通に言いそうだ。


 もう一つの理由としては、ロラン達の近くにいれば猫達が寄って来ない為だ。近くに居れば居る程、雌猫達に襲われる危険性が下がる。密着していれば襲われる可能性はほぼゼロになる、筈。

 もっとも、アンリがガッチリと視線でロックオンしているので、別の意味で襲われる可能性もある。色んな意味で要注意だ。



 * * * * * * * * * *



 そして場面は変わって宿屋の一室。

 現在ブサは全力で不貞腐れていた。理由はもちろん、手紙の中身である。先日の呼び出し時に能力は何も無いと聞いていた。だが、手紙を読んで実はあったと知り、しかもそれが『魅了』であった事に喜んでいたのだが、結局はそれもぬか喜びに終わっていた。


(猫限定って何だよ!?)


 現在のブサは猫なので、それを考えると非常に正しい能力である。

 ちなみに、人に変化しても『猫限定』なのは変わらない。アンリのような猫狂いではないので、ブサにとっては余計な能力でしか無い。

 これも恐らく……というか、ほぼ確実に神の仕業だろう。本当に、何という事をしてくれやがったのか。


(……絶対に人間になってやる……っ!!)


 まぁ、人に戻る決心がより強固になった、と考えれば悪い事ばかりでは無いのだろう。もっとも、人に戻った後の事は恐らく何も考えていないのだろうが。

 ついでに、人に戻れるかどうかも不明である。


「……なぁ、ブサ?」

「あん?」

「本気でお前はこれからどうするつもりダ?」


 不貞腐れたままのブサに話しかけるリュシアン。

 以前も聞かれたような気がする質問だが、もう一度返事をする。


「人間に戻る方法を探す」

「その後ハ?」

「その後ぉ……?」


 続けざまに聞かれた質問に、胡乱げな目つきで返す。が、しばらく考えた後に何も考えていない事に気付いた。いつもの事だが。


「……考えてなかったな」

「人に戻るのは良いけどな、そうなったら俺らと行動すんのは無理だと思うゾ? お前は戦うのに向いてなイ。荷物持ち位なら出来るだろうけど、腕力も体力も無いだロ?」

「……多分な」

「多分じゃなくて、確実にそうだろうガ」


 リュシアンは人に戻った時のブサの姿を知っている。非常に不本意ながら、服を着ていない状態も。何しろ解呪薬で人の姿に戻れたは良いが、戻ってすぐは体を上手く動かす事が出来なかった為、服を着ようとした時に倒れて押し倒されたのだから。忘れたい悪夢の一つである。

 まぁ、そんな事があったが故にブサの体の肉付きを知っている訳で。だからこそ、自分達の旅に付いて来るのは不可能だろうと考えたが故の忠告である。

 そう告げると力いっぱい尻尾で叩かれた。パーン! ととても良い音がした。アレはブサにとっても忘れたい悪夢だ。


「んで、どうする気ダ?」

「……そん時考える」

「……まぁ、お前がそれで良いなら俺もこれ以上は言わないけどナ」


 とりあえず、この話は一旦これで終いだ。別の話に移る。これがあったからこそ、今の話題もあったのだが。


「とりあえずは、そろそろ次の依頼を受けて王都を出るからナ」

「どどどどど……どいういう事だ!?」

「……動揺し過ぎダ。噛んでんゾ」

「んな事どうだって良い!! つーか、王都を出るって……!?」


 ブサの驚愕する様子に、何という事も無く告げる。


「そりゃ、俺らはギルド員だからナ。依頼を受けるのは当然ダ。ギルドでも言ってたロ?」

「聞いてねぇよ!!」

「……お前が聞き逃してたんだロ。俺らの責任じゃねえヨ」


 肩を竦めながら軽くのたまう。

 ブサの顔が真っ青になった。毛だらけで何も見えないが。


「レアちゃんに誤解されたままなのに!!」

「理解した結果だと思うゾ」


 リュシアンの言う通りだ。人語を話せるようになった事に浮かれ過ぎて、レアの感情に考慮せずにベラベラとまくし立てた結果がコレである。


「なら、俺は王都に残る!!」

「どうやっテ?」

「俺の後輩だっつー奴に言えば良いんだろ!? いつでも頼って良いって言ってたじゃねーか!!」

「……お前がソレで良いんなら、俺らはそれでも良いけどナ。自分の体質を忘れてねーカ?」


 キョトン


 本気で忘れている顔だ。これは。

 頭痛が痛い、と間違った表現だが、この場合ではある意味で正しい表現でもあった。頭の中と外が痛む気がする。

 グリグリとこめかみを押しながら、ブサの体質を口にする。


「雌猫ホイホイだロ」

「ホイホイ言うな!!」


 ちなみに、この世界にはゴ◯ブリホイホイが存在する。過去の転生者の発明品だ。

 捕らえた後は自動で中身が消滅する素敵仕様。一度仕掛けておけば、後は半永久的に使える魔道具である。私も欲しい。何よりも、奴らを処理しなくて良いというのが素晴らしい。見るのも不快であるが故に。話がずれた。


 ブサの体質は、ブサにとっては不快極まりないものである。この王都に猫が一体何匹いることか。もちろん、愛玩動物であるが故に王宮でも数多く飼われている。ネズミ退治用としても。

 ブサのスペックでは、猫本体のスペックを全て引き出す事は不可能だ。ならばどうなるか?


~めくるめくケモナー世界(ワールド)へようこそ~


 そんなキャッチフレーズがブサの頭の中を高速で過ぎって行った。

 肉体的には正しいが、精神は人間である為に拷問でしか無い。

 それを思えば再びブサの顔が真っ青になった。やはり毛だらけで何も見えないのだが。


「お、俺も一緒に行く……!」


 数多の猫に交尾を迫られるなど、考えたくも無い。少なくとも、町の外にはそうそう猫はいない、筈だ。


「アンリがいるけどナ?」

「うぐっ!?」


 進むも地獄、留まるも地獄。

 グルグルと悩み始めて、頭から煙を出しそうになったブサにリュシアンが助け船を出す。


「まぁ、それも含めてロランにも相談しとケ。うちのリーダーはロランだからナ。ロランが許可しなきゃ、連れて行く事も出来ないゾ?」


 そういえばそうだった。

 これまでは何となくロランには近付きにくい為に、大体はリュシアンの側に居たのだが。サミュエルは性格が合わないし、アンリは論外である。

 他の三人よりは、リュシアンの方がまだマシである。何気無く浮かんだ疑問だが、


「あー……。一応俺も獣人の血を引いてるからじゃねーのカ? 俺は混じりもんだからナ」

「混じりもん?」

「獣人の特徴が殆ど無いだロ。その代わり、動物からは好かれやすくなるらしいって聞いた事があル。 もっとも、俺の場合はお前以外には大体嫌われてんだけど……何でだろうナ……。ハハッ……」

「イキロ」


 ポムン、とリュシアンの肩を叩く。


「はっ!? まさか、てめぇも俺を狙って……!!」

「無ぇヨ!!」

 ちょっとだけ通じ合った二人。

 ラブは無いです。そこは断固として拒絶。


 作中的なゴ○ホイホイ的なものが欲しい。コバエ用も。使用後に捨てるのも嫌なんですよねー……。それを捨てる用に火バサミをわざわざ買ったのは私です。

 ……なるべく体から離したいやん?


 (´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ