どうやら、隠されていた秘密が明らかになったらしい
多分バレバレだったと思います。
(´・ω・`)
「な、なんだって――――!?」
ブサにとって非常に残念な事に、セヴランの言葉に驚いたのはブサただ一匹であった。
しらけた雰囲気が漂う。
渾身のネタセリフが大幅にすべった事に気付いて慌ててロラン達を見やるが、自身に向けられた視線は非常に冷たいものであった。それもその筈。
「お前達は気付いていたようだな」
「あれだけ分かりやすくして貰えれば誰でも気付きますよ」
「こいつ連れて来るまでは全く知らなかったけどなぁ」
「色々とヒントもありましたしね」
「つか、気付いてなかったのはこいつだけじゃネ?」
ロラン達はブサをギルドに連れて来て、早々に気付いていたのである。
そうロラン達が口々に言うと、再び視線がブサに集まった。非常に気まずい。
「……し、知ってたし! それ位とっくに知ってたし! さっきのは演技に決まってんだろ、ばーかばーか!!」
キュッ
「正直に言えよぉ?」
「気付いてませんでした」
「知ってた」「知ってタ」「ですよね」
ロープの万能性。拘束に良し、脅迫に良し、意識を落とすのにも使える上に、それほど嵩張らなくて、手に入りやすいというお手軽さ。ただし、熟練者以外の安易な使用はお勧めしないので注意されたし。
これまでの経験でその威力を思い知っているので、ブサもあっさりと気付いていなかった事を自供していた。
しらけた空気が和んだ()ところでセヴランの過去が語られる。
ブサやイアサント、他二名を殺したアンリの前世のせいで、死を選ぶという結末にならざるを得なかった事を。
死後はブサ達と同じように謎空間で神に出会い、こちらの世界に転生する事を告げられた。その後の流れはブサ達と同じように能力などを付与される流れになったのだが、そこでセヴランは神に一つの頼み事をしていた。
「ワシは、あの男がこちらの世界でのうのうと生きているのがどうしても許せなくてな。つまり、復讐の為に、神を名乗る者に頼み込んで、お前達よりも五十年以上昔に生まれるようにして貰ったのだよ」
「……それは何でだ?」
「一部の特殊な能力を除き、ワシらが神から与えられた能力というのは、本来は弛まぬ鍛錬の果てに得られるもの。だが、それを不自然な形で与えられた場合はそれを十全に発揮する事は不可能なのだ。考えても見ろ。剣を振った事が一度も無い人間が、突然剣の達人になれると思うか?」
「それを願った元人間がここにいるガ」
セヴランの言葉に思わず突っ込んだリュシアンのせいで部屋が沈黙に支配された。
「……すみませんでしタ」
「……うむ」
気を取り直して話を続ける。セヴランの目的と、神から与えられる能力の秘密。
だが、いくら能力を与えられたとしても、ソレを使いこなせるかは本人次第だ。使いこなした上でより一層の研鑽を重ね、ギルドマスターとして認められるまでにのし上がったのは、偏にセヴランの努力によるもの。単純に強いだけでギルドマスターになれる筈も無いのだから。
技術だけで無く、知識も取り込み、交渉を重ね……そうして得たのが今のギルドマスターとしての地位である。遅れて転生してくるであろう復讐相手の情報をいち早く集める為に。
「もちろん、保険はいくつか掛けておったのだがな。まさか、同じギルドの人間が自己保身の為に、奴らの犯したアレコレを隠蔽しようとしていたとは思わなかったが……。上の人間にはほぼ徹底出来ていたんだが、下の人間には教育が足りていなかったようだ」
「……ほーん」
「ちなみに、テオドールもワシの協力者だ。ワシが元異世界人だという事も知っている」
「は!?」
「「「「あー(アー)……」」」」
セヴランが異世界人である事を知っていたのは、テオドールとヴィルジール、それとセヴランが信用した数人だと言う。その中にはこの国の上層部の人間も混じっていた。
アンリの前身の人間の性格を知っていた為、保険を兼ねて前以て準備を重ねていた。そうであったが故に、アンリ達の事が明らかになってすぐに動く事が出来たのだ。真偽官の派遣も根回しの賜物だ。まさか、その中にご同輩が居たのは完全な想定外だったが。
「何しろニュースで見た時、殺された連中は詐欺師グループとの事だったからな。まさか、真逆の立場とも言える真偽官になるなどとは考えてもいなかった。ギルドマスターを目指した理由の一つに
は、殺された事を逆恨みして、こちらの世界で暴虐の限りを尽くす可能性を危惧した為でもある。こちらの世界の人間に、罪は無いのだからな」
納得の理由だ。
「だが、あの男がこちらの想定以上に性根が腐っており、ギルドの職員の一部にも腐った連中がいたのが仇となった。可能な限りこちらの世界に生きる者達の理不尽な悲劇や死を防ぎたい、と考えていたのだが……」
「……ギルドマスターは今後どうなさるおつもりですか? あなたが復讐を誓った相手は既に裁かれており、二度と見える事は無いでしょう」
「ふむ。今さら仕事を放り出す気は無い。後任も育って来てはいるが、まだまだ頼りないところもある。時期を見てギルドマスターの職を辞する気ではあるが、それもまだ先だろう」
「そうですか……」
再び室内が沈黙に満ちた。ただし、今度は気まずい空気は無い。ある種の覚悟に満ちていたそれを邪魔する者はいない。空気を読まないこの男以外は。
「……つまり、おっさんは俺の後に死んだが、俺より昔に転生して、成り上がって今に至るって訳か?」
「ん? ……うむ、まぁ……短く纏めるとそういう事だな」
「何それ、ずりぃ!」
「「「「「は(ハ)?」」」」」
そして始まるブサ・オン・ステージ。逆恨みと妄想をふんだんに散りばめたステージである。現実を知った今となっても、欲望と妄想は止められない。
猫の時のようにぎにゃぎにゃ騒いでいる時よりも、言葉が話せるようになってしまったせいで今まで以上にうざい。身勝手な言い分も加わり、うざさ倍増である。あのアンリでさえ、額に青筋を浮かべている位なのだから、そのうざっぷりが少しは理解出来るだろうか?
こんな時には
キュッ
「黙れ」
「はい」
やはりロープは万能である。
「それより、手紙の方は良いのカ?」
「良くないな」
「うむ、ではもう一つの本題に戻ろうか」
そして改めて取り出される手紙。
差出人はというと、やはりつい先日会ったばかりのイアサントからだった。
「あの御仁からの手紙だな。先日お前達が呼び出された際に、伝え忘れていた事があったらしくてな。本人が出歩く訳にはいかんし、かと言って何度も呼び出す訳にもいかんだろう。だからこうして、手紙で送って来たのだろう。表向きはギルドマスター宛てになっているのは、お前達個人への手紙では面倒事に巻き込まれる可能性があるからだろうな」
「前回は俺ら宛てで来てましたが?」
「一度目ならギリギリ目を付けられずに済む範囲内だ」
やはり上層部は闇が深い。
「何だよこれ……! ふざけんなぁっ!!」
解呪薬を飲んで以降、ブサの状況は地味に悪化している。
話せるようになった事はストレスという意味ではマシになったと言えるが、念願だったレアとのおしゃべりの結果、本人からは接近禁止令が言い渡されてしまった。それは完全に自業自得でしか無いのだが、そこはブサ特有の原因の棚上げである。自分が悪いとは考えていない、というか認めたくないのだろう。
ブサの叫び声に驚いてそちらを見れば、セヴランの許可も得ずに手紙の封を開けた挙句、勝手に中身を読み込んでいたブサの姿だった。
あまりにも常識外れなその行動に、思わず声を上げそうになったロラン達だったが、セヴランに諌められて動きを止める。不審そうにセヴランを見るが、すでに手紙の中身を知っているセヴランにはブサの気持ちが良く分かっていた。
だが、ロラン達はその中身を知らないので、何が何だか分からない。プルプルと体を震えさせるブサと、沈鬱な表情を見せるセヴランを見比べるのみだ。
「あの手紙に書かれていた事は、お前達にはワシから話そう。一応、知っておいた方が良いかもしれんからな」
「……何て書かれていたんですか?」
「うむ。まず、ブサ殿だが何の能力も無いと聞いていただろうが、実はそれは誤りでな。『魅了』の力を持っている」
「魅了!? んなもん……って、それにしちゃぁ随分と落差があんなぁ?」
「うむ。魅了の対象は『人』では無い。その対象は……」
「「「「対象は(ハ)……?」」」」
「猫だ」
「「「「は(ハ)?」」」」
「猫。正確には猫系統の獣、らしいな。ひょっとしたら、血が濃い獣人にも効果はあるかもしれんが」
そう言われた瞬間にロラン達の頭に浮かんだのは、テオドールのところで会ったエルミーヌのギラギラと目を輝かせた姿。なるほど、と物凄く納得した。
だが、ブサにとっては当然納得出来るものでは無い。
このまま猫の姿で居た場合、いつ、何の拍子に雌猫に襲われるとも限らないのだ。肉食系雌猫に襲われでもしたら、人間としてのプライドも何もかも木っ端微塵である。
「絶対に人間に戻ってやるぅぅぅぅぅ!!」
猫限定モテモテ。うらやま、と、とあるモフラーが申しております。
鯉にもてた事ならあるんですけどねぇ。歩く先にビチビチビチビチと、鯉の上に鯉が乗る有様。むしろホラー。
明日は猫又更新日の為、こちらはお休みです。次話は23日となります。残り話数も少なくなって来ましたが、最後までよろしくお願い致します。




