どうやら、土下座男子の登場らしい
新キャラ土下座系男子。
そんな感じでなんだかんだと一週間、合間に討伐報酬を貰ったりとノンビリ過ごしていた。
ちなみに、ブサはロラン達が受け取った報酬を見て目を輝かせていた。前世においては金貨など見た事もなかったので。
その間手紙の出し手からは何の音沙汰も無かったのだが、今日になってやっとギルドに届いたらしい。
寝ていたブサを叩き起こしてギルドへ急ぐ。
「先日はこちらの不手際にて大変失礼を致しました!!」
開幕土下座。扉を開けたらいきなりの土下座である。
えっ? えっ!? と思わずうろたえるブサとロラン達にセヴランが助け舟を出した。
「使者殿、突然そのようになされても、彼らも困惑すると思うのですが……」
「えっ? ……えっ!? あぁぁ! そ、それは大変申し訳無く……っ!!」
「いや、だから……」
セヴランが何か言えば言う程、青年の土下座が深くなる。カオス。
ブサが『おい、何とかしろ』と言うように、前足でベシベシとロランを叩いてみる。が、ロラン達とて出来れば関わりたくない。
自然と押し付け合いとなり、結果的に押し切られたアンリが青年に声を掛ける事になった。
「あの……」
「はっ、はい! あぁああの! 今回は大変申し訳も……!!」
「あの、お詫びの言葉はしかと頂きましたので、一度顔を上げて頂けないでしょうか? このままでは話しをするにも差し障りがありますし……」
「えっ!? は、はい! 申し訳……ひぃっ!?」
パタリ
「「「「「…………」」」」」
青年に話しかけた途端、悲鳴を上げて倒れられたアンリの心境や如何に。
「重ね重ね、大変申し訳ありませんでしたぁ……っ!!」
「いえ、ですから……土下座を止めて頂けると助かるのですが……」
「ぎにゃー……(見事な土下座ループだぜ……)」
青年が気絶して数分後、目を覚ましてまず行った事はやはり土下座であった。土下座のプロか。やけに板についている。
ちなみに彼が気を失ったのは、やはりアンリの凶悪面を間近で見た為であった。青年に声を掛ける為に身を屈めていたのが災いした結果だ。
ひたすら土下座で謝り続ける青年を必死に宥めるアンリだが、ブサが呟いた瞬間、ガバリ! と勢い良く顔を上げる使者の青年。自身が声を掛けても顔を上げなかった青年に不満気なアンリ。
そして、突然の行動に慄くブサだが、青年の顔を見た途端に一気に不機嫌になった。イケメン死すべし。
どう例えれば良いのだろうか。おっとり犬系美青年チワワ風味、と言えば良いだろうか? 少し垂れ目の、いかにも文官といった感じの優しげな美青年である。ただし、土下座が得意。
顔を上げた後の青年は、ブサの事を目をキラキラと輝かせながら見つめてくる。
ズイッ、と拗ね気味のアンリが青年の視線を遮った。自重しろ。
「あなた様がブサ様ですね!?」
「「「「「ブサ様(ぁ)!?」」」」」
「ぶに?(俺か?)」
先程の怯えようは何だったのか、ずずいっとアンリを横にずらして、あろう事かブサを『様』付けである。
改めてブサの前に陣取り、ブサの両前足を握ってキラキラしい目で見つめる。
「良かった! これで主様のご希望を叶える事が出来ます!! ブサ様、どうか私と一緒に来て頂けないでしょうか!? 主様がどうしても、ブサ様にお会いしたいと仰っておりまして……!」
「待て待て待て待て!!」
来て頂けないか、と言いながらブサを小脇に抱えて、すでに連れ去る気満々の青年にセヴランが待ったをかける。止められた青年は、キョトンとした顔で心底不思議そうな顔だ。
「まず、ブサ殿の意思はきちんと確認されたのだろうか? ワシが見たところ、一方的にまくし立てて許可も得ずに連れ去ろうとしていたようにしか見えないのだが? それとも、貴殿の主は人攫……猫攫いをしろと貴殿に命じたのだろうか?」
「……っ!? い、いえ! 私はそのようなつもりは……!」
「貴殿にそのつもりが無くとも、今の様子はワシにはそうとしか見えなかったのだよ、使者殿。そもそも、現在ブサ殿の保護者はそこにいる彼らだ。王都に来る前、街道脇の茂みに隠れていたブサ殿を発見し、今まで保護してきた彼らを蔑ろにするというのも、些かよろしくないのではないかな?」
セヴランの言葉に顔を真っ青にしてうろたえる青年。どうやら、本気で考えが回っていなかったようだ。
どうにもこの青年、一つの事に集中してしまう性質らしい。そちらに集中するあまり、それ以外への根回しとか、本来やらねばいけない事を忘れてしまうなどなど。常習犯である。
「貴殿が与えられた仕事に全力で打ち込む姿勢は好ましいものだろう。だが、それだけに気を取られて、他を蔑ろにするようでは貴殿の主が侮られる事にもなりかねない、というのは理解して頂けるだろうか?」
「……はい、返す言葉も御座いません。ブサ様、並びに皆様にも不快な思いをさせた事、心からお詫び申し上げます。その上で今一度、こちらからお願いしたい事が御座いますので、どうか私の話を聞いて頂けますでしょうか?」
セヴランに窘められ、ションボリと落ち込む青年。本気で垂れた耳と尻尾が見えた気がした。
軽く頭を振って今見えた幻覚を振り払い、青年の言葉に考え込むブサとロラン達。
ぱっと見は無害そうに見える青年だが、手紙の出し手の使いというならそれなりの地位にいる人間なのだろう。という事は、この頼りない様子は演技という可能性もある。むしろ、最初に問答無用で連れて行こうとした態度こそが……。
「ん、あ~……何やら悩んでいる理由が分かった気がするが、この使者殿はこれが素だぞ?」
ロラン達が悩んでいる理由が分かったのか、軽く溜め息を吐いて使者を擁護するセヴランは何故か気安げだ。さっきまでの緊張感は一体何処に行ってしまったのか。
「……ギルドマスターはそちらの方をご存知なのですか?」
「正確には彼の兄を、だな」
「「「「兄?」」」」
「ふむ……そういえば、まだ互いに名も名乗り合っていなかったんだったか?」
「「「「「あ゛(ア゛)」」」」」
(あ~ぁ……)
少なくとも、ロラン達はこの青年とは初対面だ。もちろんブサも。
青年はブサの事を知っているようだが、ロラン達の事は知らないだろう。
互いに初歩的な事を忘れていた事を今さらながらに思い出し、双方共に固まっていた。我関せずなブサが呆れたように頭を振っているが、ブサにだけは突っ込まれたくない。
「ひぃぃ……っ! 先程から本当に、本当に失礼ばかりを……!」
「あ、いえ。それはこちらも同じ事でして……」
「いえ! そもそも私が!!」
「いえいえ! 私達こそ!!」
「「どっちでも良いから、話進めろ(ロ)」」
今度はアンリと青年が謝罪合戦である。
このままでは話が進まない、と判断したロランとリュシアンが思わず突っ込む。突っ込みに加わっていないサミュエルとブサは笑い転げていた。
「えーと、改めて自己紹介をさせて頂きます。私はアシルと申します。この度、ブサ様をお連れするよう主様から頼まれまして、参りました次第です」
「ご丁寧にありがとうございます。私はこの度交渉を任されましたアンリと申します。それから、私の隣におりますのがパーティーリーダーのロラン、逆側がリュシアン、サミュエルと申します」
「ぎなー(とりあえずブサと呼ばれてる)」
グダグダな初コンタクトを経て、無事……とも言い切れない自己紹介を交わし、改めて交渉は始まった。
あちらの要求はブサを連れて行く事。
その前に、何故ブサが呼ばれているのか。呼んでいる相手は誰なのか。ブサとどういう関係なのかを尋ねる。
その上で、呼ばれているのはブサだけなのか。それとも、保護者である自分達も同行しても良いのか、等と少しずつ前のめりになりながらガンガン質問をぶっこんで行くアンリに、アデルという青年はたじたじである。
ちなみに、ロラン達は同行出来たとしても、先日の宣言通りにアンリを同行させるつもりは無い。一応はロランもある程度の対応は出来る()ので、問題無い筈だ。多分。
(……それにしても、何か、こういうのどっかで見たような?)
「……なんかさ、娘の交際相手にめっちゃ絡んでる父親みてぇ……」
「「それだ(ダ)」」「ぎにゃぅ(それだ)」
「……のん気だな、お前達」
使者さん登場。
先日先走った手紙を送った張本人。色々空回りしては土下座を繰り返していたら、土下座のプロになったという、土下座系男子。
顔はイケメン故にもてる。肉食系(女王様)女子に狙われる日々。時折告白されては土下座が炸裂する。




