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どうやら、やっぱりこいつらは規格外らしい

 フードファイト!(ただし、ブサは虚脱中)

「お」「あン?」「おや」


 湯屋を出て、火照った体を冷ますついでに、何か軽く食べようと屋台街まで歩いて来た所で見慣れた顔を見つけた。

 どうやら、屋台の大盛りチャレンジに参加しているようだ。超大盛りオムライスを制限時間内に食べきれば無料というものだが、同じ器が二つ重なっているように見えるのは気のせいか。それだけに留まる事無く、手に持っている三つ目の器は何なのか。

 もはや見世物状態で観客が出来ている。ざわざわとさざめく見物人達は非常に盛り上がっている。何故か、一部では酒盛りも始まっていた。そして、何故か店主は顔面蒼白だ。 

 蒼白になる理由がいまいち分からず、店主の背後の壁紙を見て察した。


『チャレンジメニュー! 完食出来れば無料!!(完食出来なかった場合は料金をお支払い頂きます)』

『極チャレンジメニュー! 三皿完食出来れば無料! それプラス賞金:千ディル進呈!!(完食出来なかった場合は料金をお支払い頂きます)』


 これが原因だ。

 すでにサミュエルは三皿目。ロラン達を見つけて『よっ』と言うように片手を上げた後は、表情を変える事無くモリモリとオムライスを口に運んでいる。

 顔色も、口に運ぶスピードも変化は一切無い。完全に普段通りだ。

 テーブルの上の砂時計はまだ半分以上を残している。対してサミュエルが手に持っているオムライスは残り三分の一も無い。このままのペースで行けば、余裕を持って完食出来るだろう。だが……。


「全力で行け」

「も゛ぅ゛」 


 少し考えてからのロランの一言。店主には無慈悲な宣告に聞こえた事だろう。

 ロランの言葉を受けて、サミュエルがオムライスを掻きこむスピードが上がった。観客がさらに盛り上がる。店主がじわじわと涙ぐむ。

 もはや店先は完全な見世物と化していた。


 それを見ているロラン達は大笑いだ。サミュエルを(あお)ったのはロラン自身だが。

 どうやら、この店主は新参らしい。恐らく、王都にはチャレンジメニュー系の店が無いから、進出して来たのだろう。だが、人の集まる王都でそれらの店が無い理由を考えはしなかったのだろうか?

 その原因の一つはサミュエルの存在だ。

 ロラン達は凶悪面としてある意味有名だが、サミュエルは別の意味でも有名だ。すなわち、『チャレンジメニュー殺し』として。その真価を余す事無く発揮した結果、王都からはチャレンジメニューを出す店が無くなってしまった。もちろん、チャレンジメニュー殺しはサミュエルだけでは無いが。


 ロラン達が見ている内にみるみるオムライスは無くなっていき、砂時計の砂を三分の一程残して完食した。観客の盛り上がりが最高潮に達する。店主はわりと早い内から涙目だった。 

 気の毒に、あの店主の今日の売り上げはマイナスだろう。

 いや、もしかしたらサミュエルに触発されてチャレンジメニューに挑戦し始める者が出始めてるから、少しは挽回出来るかもしれない。是非とも少しでも回収して貰いたいものだ。


 涙目の店主が持って来た賞金をサミュエルが受け取る。


「お……おめで、とう……っ、ございます……。こちら、賞金の、千ディルです……っ! ……グスッ」

「お、おぉ。遠慮無く頂くぜぇ……」


 涙を流して嗚咽をあげる店主の様子に気まずそうなサミュエルだったが、賞金を受け取らないという選択肢は無い。

 ただでさえ、自身の食べる量は多いのだ。運良く(・・・)――店主にとっては最悪とも言えるが――満足出来るまで食べられて、なおかつ食事代が浮いて、賞金まで貰えるチャレンジメニューがあるのであれば、参加しない訳にはいかないだろう。


「……放してくんねぇ?」


 店主の手が賞金から離れてくれない。ギリギリと賞金を掴むサミュエルと店主の間で引っ張り合いとなる。段々と引っ張り合いが本気になって来た。

 その様子にも見物客達は盛り上がりを見せていた。もはや何でもいいらしい。


「……ちっとやり過ぎたかぁ?」

「んや、調査不足じゃネ?」


 あの後、客から注文が入った隙に無事に店主から賞金を受け(奪い)取り、そのまま店に居座るロラン達。軽く虐めでは無かろうか。気の毒に、店主は完全に怯えている。ロラン達もチャレンジメニューに挑戦するのでは無いか、と気が気では無いようだ。

 だが、さっきのサミュエルのチャレンジの様子を見ていた見物人からも、ちょこちょことチャレンジメニューを注文する者が出始めているので、少しずつ元気を取り戻しているようにも見える。


「……で、ブサはどしたぁ? 湯屋で何かあったのかぁ?」

「混浴を期待していたらしい」

「あ~……王都じゃまず無ぇなぁ。田舎の方に行きゃ混浴だけどよぉ……」


 ピクリ、とブサの耳が反応する。


「そういやそうだな。むしろ、あっちはフルオープンだもんな」


 ピクピク、と前足が動く。


「野郎が入っていようと、全く気にせず入ってくるしナ」


 ガバッ、と起き上がった。


「ぎなぁっ!!(それだ!!)」

「ただし、入って来るのはご老体ばかりですが」


 ブサの頭が机に落ちて凄い音がした。

 そのままテーブルに涙の池が広がる。


「あ、ネタバレすんなヨ。面白かったのニ」

「趣味が悪いですよ」

「そんでぇ? 何でこいつ(アンリ)は、こんなにツヤツヤしてんだぁ?」

「想像に任せる」

「あぁ、何となく理解したわぁ……」


 ブサの反応をニヨニヨと見守る悪い大人達。

 彼らに翻弄されるブサには同情……はあまり出来ない。理由が理由だけに。

 

 流石に何も注文せずに居座るのはまずいだろうと、軽く食べる目的もあったので店主を呼んで各々適当なメニューを注文する。


「ん~……おっさん。俺ぁこっちの揚げ鳥の盛り合わせ頼むわぁ」

「「「「「はぁっ!?」」」」」


 店主と客の声が見事に揃った。ロラン達も流石に呆れ顔である。

 サミュエルの言葉が本気と知った後は、もはや考える事を止めた店主が無の表情で新たな料理を提供し、サミュエルはそれを普通に食べ尽くした。チャレンジメニューとは何だったのか。

 ちなみに、サミュエルに触発されてチャレンジメニューに挑戦した他の客達は見事に撃沈していた。


「あ~……食ったぁ……」

「「食い過ぎだ(ダ)」」「どこにあれだけ入るのか……」


 ブサ自身は直接サミュエルが食べていた様子を見ていた訳では無いが、他の客の様子を見ていたので、アレがどれだけの量だったのかは知っている。それを三皿も食べて、なお揚げ鳥の盛り合わせまで食べ尽くし、その上でロラン達の皿からもつまみ食いしていたのだから言葉も無い。


(……何で、あんだけ食べてケロッとしてんだ。こいつ……)


 サミュエルに対して間違った恐れを抱きながら、ブルリと体が震える。ちなみに、サミュエルから一つ貰った(奪った)揚げ鳥は『唐揚げ』そのものだった。過去の異世界人、あるいは転生者が伝えたのだろう。そういったものはどこにでもありふれていた。ちなみにマヨネーズもしっかり添えられていた。それとレモンっぽい柑橘も。

 過去の異世界人達は仕事し過ぎである。


(今さら知識チートとか出来ないよなー)


 そもそもブサにはそういった知識は無いから不可能だ。料理すらまともに出来ないのだから。卵を材料に炭なら作る自信はあるが。農業知識は無い。軍事知識もある筈が無い。

 法律関係もきっちりと存在している。風呂はあるし、さり気無くトイレも存在しているし、魔道具も多様にあるらしいし……。

 ぶっちゃけ、異世界で出来るような事が思い付かない。あえて言うなら、愛玩ペット? それを大人しく受け入れるかは不明だが。


 知識チート―――不可能

 俺TUEEE!―――不明

 ハーレム―――不可能

 軍事チート―――当然不可能

 食べ物チート―――不可能


(……あれ? 俺、異世界で何やりゃ良いんだ??)


 物凄く今さらである。

 フードチャレンジは挑戦しようとも思えません。見ただけで胃が痛くなります。全てのメニューにハーフサイズが欲しい……。

 ついでに辛い食べ物も嫌いです。


 唯一それなりの量を食べられるのは甘味です。『和』限定で。生クリーム系はきっつい……orz

 クリーム系やバター系に弱い代わりに、黒蜜なら丸一本飲めます。(ドヤ顔)


 凄いんだか、凄くないんだか微妙ですけど。↑

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