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どうやら、ここは日本じゃないらしい

 ぇー、始めた連載が途中にも関わらず始めてしまった新連載。こちらは1話辺り、文字数3千程度で手軽……手軽? に読め、ると良いなというものにします。


 猫又主の合間、合間に投稿するようにしていきますので、此方も宜しくお願いします。

 気が付けば、其処は異世界だった……


(何を名作を汚すような事を言っているんだ、俺は……)


 そう心の中で呟いた彼は、何とも風采の上がらない姿をしていた。

 ボサッとだらしなく伸び、目元を隠した前髪。体は土埃に塗れ、何とも言えない色彩を放っている。一般の人が彼を見かけたならばなるべく関わらぬよう、近付かぬよう、眉をひそめる事だろう。

 特に何処が、というのはないのだが、全体的にどうにも胡散臭い雰囲気を漂わせていた。


(全く、一体此処は何処(どこ)なんだろうね)


 再び心の中で呟く。何故口に出さないかと言うと


 《ギギッ! ギャー!!》


 空を見上げればすぐに分かる事だが、巨大な怪鳥のような生き物が上空をグルグルと旋回しているからだ。

 しかもその生き物は、怪鳥と呼ぶよりはまさに『怪物』あるいは『怪獣』と呼ぶに相応しく、トカゲを数段凶暴にした顔と胴体、尾は長く先端は毒エイのような針まで付いている。そして肩口から広がる翼はコウモリの様な外見をしており、翼の一部には鉤爪のような物が見える。

 ファンタジー的生物を知る者なら、迷いなく『ワイバーン』と呼ぶであろう生物の姿が其処にはあった。


(しかし、困ったな。あんな生き物は見た事が無いし、そもそも何でいきなりこんな場所へ?)


 彼がそう悩むのも無理はない。今まで彼が居た場所は、こんな自然に満ち溢れた場所ではなく、薄汚れた雑居ビルの一室だったのだから。

 室内でふいに目眩を感じた、と思ったらこの異変である。人によっては大声を上げて喚きたくもなるだろう状況だった。

 もっとも、それをしたならば容赦なく上空の生き物(バケモノ)の餌食になっていただろうが。


 上空を見上げるも、バケモノが其処にいる事に変わりはなく、追い払おうにも視界に入るのは石や、枝ばかりでとてもじゃないが武器としては使い物にはならなさそうな物ばかりだった。


 ハァ……


 思わず溜め息が溢れる。

 しかし、彼は逞しかった。間違った方向に。

 現状を変える術がない、と見てとるや、その場で横になり眠り始めたのだった。



 * * * * * * * * * *



 それから数時間後の事である。


 ガタッガタガゴッ、ゴロゴロ、ゴトッ


(ったく、うるせぇなぁ……。人がせっかく寝ているっつーのによぉ!)


 地面に響く、その音に強制的に起こされた彼は目を開け、音の聞こえる方を見やる。


(……は?)


 其処に見えたのは1台の馬車だった。しかも幌馬車である。馬車を操る人の姿はハッキリとは見えないものの、馬車を囲むようにして歩く数人の男達の姿が見えた。

 其処まで確認するとバッ!と音を立てる勢いで空を仰ぐ。何もいない。男が眠り込むまで上空を旋回していたバケモノは影も形もなくなっていた。


(よし、ついてる!)


 今時幌馬車などと言う、時代錯誤にも程があるがこの状況を何とか出来るかもしれない相手が現れた事に、彼は身を隠していた藪から勢い良く飛び出した。


「「「っ!?」」」


 駆け寄って来た彼を見て警戒したのか、馬車の周囲にいた者達は揃って剣や弓を構えた。

『剣』や『弓』である。


(……は? 今時、剣に弓って……)


 あり得ないだろう、彼はそう思った。しかし、馬車を囲む彼らが手に持っているのはどう見ても『剣』である。馬車の荷台からは杖のような物を構えた人物も居た。


(……まさかのコスプレパーティーか?)


 勢い良く駆けていた脚がゆっくりと遅くなり、馬車から少し離れた場所で止まった。思い掛けない姿に思わず体の力も抜ける。


 男の力が抜けたのを察してか、彼等もまた、剣や弓を構えていた体の力を抜いた。剣を鞘に収めながら、こう呟く。


「なんダ、ただの猫かヨ」


(……は? こいつら何を言って……!?)


 そして、異常に気付く。近付いてやっと気付いた事だが、馬車も人も異様に大きい。真横まで近付けば、恐らく自分の体は彼等の膝にすら届かないだろう。


(何なんだ、コレは)


 全身から汗がブワッと噴き出るような気がした。何も考えずに、顎から滴り落ちる汗を拭おうとして気付く。


(何だ、コレは)


 汗など滴り落ちてはいなかった。自分の体が毛に覆われていて、手の甲が見えない。いや、そもそも『人間』の体をしていなかった。

 先程の男のセリフが思い出される。


『なんダ、ただの猫かヨ』


『猫』


 汗を拭う為に持ち上げていた手を恐る恐るひっくり返す。『肉球』である。グッ! と指先に力を入れるとニョキッと爪が飛び出た。


(な)


「ふしゃ——————っ!!(何なんだコレはぁぁぁぁぁぁっ!!)」


「うぉっ!? 驚いた。なーにをいきなり怒ってんだ? お前さんは」

「さっき剣を向けられたからじゃねぇのカ?」

「てめぇの顔が怖いからだろぉ」

「うるせぇなっ! 放っておきやがれっ!!」


 ぶはははははは!!


「何をバカ笑いしてるんですか? 貴方達は。まだ仕事の途中ですよ」

「お? てめぇこそ、何をノンビリしてやがったんだぁ?」


 ハァ……


「依頼人への説明ですよ。護衛が突然剣を抜いたのですから、報告は必要でしょう」

「おん? 言われてみりゃそうだったよなぁ! いやぁ、悪ぃ悪ぃ」

「悪いとも思っていない口調で謝らないで貰えませんか。思わず次の戦闘で魔法の照準を間違えてしまいそうです。

 ところで……その猫は?」


 突然の衝撃に呆然として、彼等のバカ騒ぎをただ見続けるだけの彼であったが、新たに現れた人物の落ち着いた口調に我を取り戻す。そして、その男の口に出した『魔法』という言葉に、信じられない、あり得ないという思いを込めて振り仰ぐ。


 ビシッ!!


 そして固まった。


「なぁ、アンリ。その猫、固まってんぞ」

「見れば分かります。いつもの事ですから、気にしてませんよ。えぇ、気にしていませんとも……!」


 その言葉を聞き、思わず謝った。


「ぎなぁ(その、なんだ……すまん)」


 アンリと呼ばれた新たな男の顔は凶悪の一言だった。その男が前科持ちで殺人を犯した事がある、と見知らぬ人に言われても信じたであろう顔をしていた。

 頭部の毛は髪も眉毛も1本も無く、まつ毛が薄く生えるのみであった。髭すらも1本もなくツルツルである。

 また、額と右目を縦に伸びる傷跡が、さらに風貌を恐ろしいものへと変貌させていた。

 瞳は美しいアイスブルーと言っても良いのだろうが、唯一の美点をそれ以外が完全に隠し、むしろ異様なものに感じる程だった。


 と、いうよりも彼の場合は、その外見と口調のギャップがより風貌を恐ろしいものに見せているのだが。恐らくは外見に準じた若干荒い口調で話すのであれば、此処までドン引かれる事もなかったのだ。

 だが、そんな事を知る由もない元人間の男と、アンリと呼ばれた男である。全くもって残念な2人(?)だ。

 更に言うならば、名前も彼の風貌からするとかけ離れているのも残念なところであった。


 そして、そんな凶悪面を物ともせず、普通に話しかけていた男の顔も、人が良いとはとてもじゃないが言う事の出来ない顔である。

 柄が悪い訳ではないのだが、短く切り揃えられた髪と顎全体に生えた無精髭が男らしさよりもだらし無さを目立たせていた。ある意味(おとこ)とお揃いだ。そして、左目の下から鼻を通り、右目の目尻の下までを横一文字に通った大きな傷跡がとても目立つ。それ以外にも小さな傷が至る所にあるようだった。


 よくよく見ると、残り2人の顔もそう大差はなかった。

 現在は猫の姿をしている男だが、例え人間の姿であっても決して近付かないと断言出来る類の人相を持った男達だ。別の意味で男も人を寄せ付けない風貌だった、という事を棚に上げて。


「それで? その猫をどうするおつもりですか?」

「ぁん? 連れてくつもりだったが……」


(おい、バカやめろ)


 彼等に助けを求めるつもりだったのを忘却の彼方とし、同行させられそうな事に恐怖を抱く。


「お? 連れてくのかぁ? その猫」

「あぁん? マジかヨ」


(増えやがった)


 増えたも何も、最初から彼等は全員此処にいたのだが。失礼な男だ。


「ふむ……町からそう離れてもいないこの場所に居る位ですから、飼われていた猫が逃げ出した可能性もあるかもしれませんね」

「おぉ? なら……」

「依頼人の許可を取ってから、となりますが」

「ぃよっしょぁ———! 良かったな、ブサ猫! 町まで一緒だぞ—!」


「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!(髭面擦り付けんじゃねぇぇぇぇぇ!!)」

 こんばんは、このような話を読んで頂きありがとうございます。

 今回は序章という事になりますが、モサ主も宜しくお願いします。


 タイトルへの異論、批判は受け付けます。だけど、嘘は言っていないと思うのですよ……(目線逸らしながら)


なお、2話目は明日12時公開です。

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