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第1章 第5話

 入浴を済ませると部屋に紅茶を持ち込んで、ノートパソコンと向き合った。

 昨晩公開したネット小説の第一話。



 

 高一の女の子・桐子きりこは演劇部だ。秋の文化祭でジュリエットに大抜擢され張り切っている。そんな彼女に軽音の人気バンドからボーカルのお誘いがかかった。一度は断る桐子だがイケメンギタリスト・ユウタの熱い言葉に結局OKしてしまう。

 しかし、文化祭のスケジュールを見た桐子は途方に暮れる。演劇部の上演時間とバンドの演奏時間が完全に被っていたのだ。スケジュール調整に奔走する桐子だが文化祭には色んな思惑が渦巻いていて、調整は暗礁に乗り上げる……




 アップした第一話はここまでだ。

 このストーリーは理子先輩が考えた話と全く同じ。

 この後、イケメン生徒会長のヒロトが桐子に救いの手を差し伸べる展開が続く予定。


 ネット小説サイト『ノベルメイト』にある自分のページを開いてみる。

 朝は誰も見てくれてなかったけど。

 もしかして今日の日中に誰かが読んでくれた、かも?


 少しは期待してパソコンを覗く。

 少しだけ。

 ホントにホントに少しだけ……



「えっ!!」



 声が出た!

 だって、ブックマークとやらが付いている。

 それも一気に3件も!!


 これって3人もの人がわたしの小説を気に入ってくれたって事?

 3人って、わたし結構凄いんじゃない?

 なんだか嬉しくなってきた!


 しかも!

 感想が書かれてるっ!


 えへへっ……

 どきどきするな。

 どんなかな、どんなかなっ!



  荒削りだけど面白いです。

  これから桐子がどうなるのか気になります。

  頑張れ、桐子!



 うわっ!

 嬉しいっ!


「わわあああああああああああああ~~~っ!!!」


 体が軽くなって、羽ねが生えてふわり遠くへ飛んでいける、そんな気持ち!

 もうひとつの感想も見ちゃおうっと!



  桐子、爆発しろ!



 なにこれ。

 素っ気ない感想だけど、でも嬉しいっ!


「ありがとうございますっ!」


 ついついパソコンに向かって頭を下げて感謝する!


 文芸部ってこんな気持ちになれるんだ。

 うきうきとして胸が熱くなって……

 ……

 って。


 いやいや。

 騙されるな、わたし。

 よく考えよう。

 冷静に考えてみよう。


 このブックマークも感想も、理子先輩と久里須先輩のものに違いない。

 わたしのIDも『染井佳乃そめいよしの』って安直なペンネームもふたりは知ってるんだし。


 だけど。

 ってことは。


 それでも1件は知らない人がブックマークしてくれたんだ。


「うれしいっ!」


 そうか!


 演劇部は観てもらうために頑張って。

 軽音部は聴いてもらうために練習して。

 文芸部は読んでもらうために妄想するんだ!


 この後の話、一話分近くもう書き終えてるけど、書き直そう。

 わたしの理想の妄想物語に書き直さなくちゃ!


 そうして。

 わたしはわたしの小説に向き合った。

 十二時近くまで無我夢中に桐子の有り得ないバラ色の青春を打ち込み続けた。


「はあ~っ! さすがに疲れたわあ~」


 独りごち、今日はここまでにしようかと冷めた紅茶を飲み干したわたしは、またひとつ感想が書かれていることに気がついた。


 嬉しいわ、三つ目の感想。

 知らない人からに違いない……


 何て書いてあるのかな……

 るんるんるん……



  草の戸も 住替る代ぞ ツーバイフォー



 って。

 なによこれ?

 これが感想?


 まあいいわ、世の中色んな人がいるんだし。


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