第4章 第5話
3週間後の日曜日。
わたしは市民体育館にいた。
「いけ~っ、理子先輩~!」
「はいったあ~!」
北ヶ丘女子バスケ部は一年ぶりの公式戦を戦っていた。
コートに立つのはバスケ部員ふたりと理子先輩、百代、そうして新たに入部した新入生だ。
「ねえねえ王子ちゃん、さっきは3点だったのにい、どうして今のは2点なの?」
久里須先輩は運動神経がどうのと言う以前にバスケのルールすら知らなかった。
それでよく試合に出るって言いましたね、まったく……
ピピーッ!
セカンドクオーター終了のホイッスル。
どうやらここで理子先輩も百代も交代するらしい。
3週間前、文芸部がバスケ部と合流して試合に出るって決まってから、バスケ部への入部希望者が続出した。結局「仲良しふたりだけ」の部には入りにくかったけれど、人数が増えて、しかも試合にも出れる人数がいるって分かったら入部のハードルが下がったらしい。一年生を中心に新たに5人が加わって、わたしと久里須先輩はお役御免というわけだ。
そういう訳だから、理子先輩も百代もいなくてもメンバーは揃ったんだけど、実力で選ぶとこうなった。ちなみにわたしも久里須先輩もベンチには入っている。
「次の10分、星乃さん出てくれない?」
「えっ、わたしですか? わたし下手ですよ?」
名門・西高相手に36対40、負けてはいるけど、なかなかいい試合をしているし、この緊張感のまま続けて欲しいんだけど。
「そんなことないわよ、ダメだったらすぐに交代させるから、ね!」
「じゃあ、いきます」
以前のわたしなら絶対尻込みしたと思う。
だけど、今は頑張ってみようかなって思う。
「頑張ってね、桜子ちゃん」
「あ、はいっ!」
戻ってきた理子先輩が声を掛けてくれる。
「お疲れ、さっちゃん!」
「あっ、翔くん!」
と。
二階席で笑顔を見せるお兄ちゃんに小さく手を振る理子先輩。
わたしが積極的になったのもこのふたりのお陰だ。
わたしたちが体育館で連日バスケの練習をしていたこの3週間、ふたりの間に何かが起きた。ふたりとも「友達だ」と言い張っているけど、誰が見ても恋人同士の雰囲気だし、最初わたしはふたりを無邪気に祝福したんだけど、お兄ちゃんはとんでもないことを教えてくれた。
「桜子には言っておくけど、これ、二年間限定なんだ」
それ、どう言うこと? と一瞬考え込んだけど……
「おーい、桜っち~!」
報道席から沙耶っちの声がする。この試合、校内「表」新聞に載るらしい。
そうすれば更に部員も増えるかも……
「あっ、沙耶っち! カメラの準備はいい? 次、わたし行くからねっ!」
やがて。
サードクオーター開始のホイッスルが鳴った。
第四章 完
【あとがき】
いつもご愛読感謝しますです。さすらいの俳人二十面相・奥野百代です。
急展開の四章はいかがでしたか。
文芸部なのに一向に文芸部らしい活動をしない文芸部、今回はみっちりバスケに精を出していったいなにを考えているのでしょうね。まあそう言うわらわも楽しんでいるんだけど。
それにしても最近何だか活き活きしている理子先輩と桜子。久里須先輩も執筆がノってきたみたいで、なにも面白いことがないのはわらわだけみたい。つまんないな……
さて、そんなわらわにお便りが来ているって。
ペンネーム「童亭守太」さんからです、早速読んでみましょうか。
金髪美少女の百代さんこんにちは。僕は十五才の美少年です。
……はい、こんにちは。って、自分で美少年とか図々しいヤツですね。
ところで、名前から想像するに百代さんは芭蕉のファンなんですよね。「奥の細道」から苗字を取って、その出だしの文章から名前を取って。
どうして快活な金髪美少女なのに芭蕉をリスペクトしてるんですか?
ぜひ教えてください、でないと気になって、夜、落ち着いてエロ本も見れません。
……ってなお便りですけど。
守太さん、名前って自分で付けるものじゃないんだよ。だからわらわの名前が芭蕉に由来していたとしても、それは名付け親の趣味だよな。
実はこの辺わらわも気になったので作者に聞いたことがあるんだけど、別に作者も芭蕉をリスペクトしているって訳じゃないらしい。単に本屋で見つけて薄かったから買って読んでみたからだって。困った人だよ、本当に。
ところで、エロ本って落ち着いて読む物なのか?
お母さんが来ないかハラハラしながら見るんじゃないの?
ってなわけで次章予告です。
アニメ研究部設立を目指したアニオタたち。しかし生徒会はそれを認めてこなかった。
そこで彼らは一計を案じる。そう、連戦連勝の星乃翔夜に頼るという他力本願。しかし今回ばかりは自信がないと翔夜は頭を抱える……
次章「アニメはいつもハッピーエンド(仮)」もお楽しみに。
奥野百代でした。




