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第1章 ~序章~

 第一章 若きJKの悩み



 救いの声がした。


「狼ども! けがれた手でその子に触れるんじゃねえよっ!」


 にじり寄る男達の動きがビクンと止まる。

 恐る恐る顔を上げると、すらり伸びたニーソ脚が見えて。


「「げっ、神湯御前かみゆごぜん!」」

「この可愛い子羊ちゃんは文芸部が預かってくよっ!」


 颯爽さっそうと現れてわたしを助けてくれたセーラー服のお姉さま。

 わたしは彼女の手にすがり、その場から逃げ出した。


「あ、ありがとうございますっ」

「いいっていいって! だけど、どうしてあんな事になってたのさ?」

「どうしてって……」


 そうだ。

 どうしてわたしはあんな窮地に追い込まれたのだろう?

 わたしはただ張り切っていただけなのに……



 高校生になったらちょっとだけ頑張って、ちょっとだけキラキラしたい。

 地味だった中学のわたしとさよならしたい。

 桜舞う校庭、何もかも新鮮な初めての登校日。

 るんるんと胸も心も踊らせて、わたしは色んなサークルを見て回った。


 演劇部に軽音部に。


 いいよね、演劇部って。

 華麗な衣裳にスポットライトが煌めいて、たくさんの人に観てもらうのって気持ちがいいんだろうなっ!

 だけど、演劇部は先輩が妙におかまっぽくて声でかくって、ついていけなかった……


 軽音部も憧れちゃう。

 ギターをカッコよく決めて、お客さんの喝采を浴びて! ああ、きっと爽快な充実感を感じるんだろうなっ!

 だけど、ギターはバリバリの経験者が多くって競争率メチャ高。素人のわたしにはカスタネットなんてどうかな? だって。ああ世の中甘くないわ~……


 気を取り直して次は放送部よっ、と歩き出したら演劇と軽音の先輩達に囲まれて……


「あのね、うちのガッコの演劇と軽音ってすっごく仲が悪いの。犬と猿、魔王と勇者、カミュにサルトルなの。まあ、新入生が知らないのは仕方がないけど」


 ああ、だからか。

 軽音の俺さま系先輩に挨拶していると、演劇部の先輩が大声でみついてきて喧嘩になった。この子は演劇部が先にツバつけたんだとか、今すぐ入部届にサインしたら、もれなくこの俺さまのサイン色紙が付いてくるとか、そんな色紙よりボクのうるわしい生写真5枚セットをあげるよとか、それでわたしは困ってしまって追い詰められて……


 あ、でもこの人は文芸部って言ってたけど。


「あの、あなたは……」

「アタシは二年の神湯理子かみゆりこだ、一応文芸部の部長をやってる」

「かみ、う?」

「かみゆ、だ」


 腰まで流れる黒髪。切れ長な大きな瞳にはさっきとうって変わった優しい笑みを湛えて。


「文芸部はどうだ?」

「あ、いえ、わたしは……」


 だけど文芸部のイメージって。

 日向ひなたと言うよりは日陰で。

 地味だし目立たなくって。

 どこが楽しいのか、何が気持ちいいのか、わたしには分からない……


「だよな、文芸部は地味だし演劇や軽音みたいに華がないからな。いいよ、気にするな。でも、せっかくだからお茶くらい飲んでいけよ。あいつらまだ恨めしそうにこっちを睨んでるし」


 煌めく黒髪から優しい匂いがわたしを包んで、息を飲むほど澄んだ瞳に吸い込まれそうになって。


 小さく肯くわたしの胸はどきんと大きく高鳴った。


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