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いつの世も、女は待つばかり。小さい頃から、そうだった。

隣国との戦争の時も、父と兄達は


「生きて帰ってくるから、待ってろ」


と言って、戦場に出掛けた。

母と姉、私は、ただ安全な城の中でひたすら、安全を祈るしかなかった。

私達は父達の安全をひたすら毎日願った。

来る日も、来る日も。

そうして季節が変わるかというとき。

城に、見知らぬ男が現れた。

鎧に(あか)い、(あか)い、血の色のようなマントを羽織り、金色(こんじき)の長髪を(なび)かせた、隣国の国王。後に、私の夫となるその人は、これまた血のような色の、目で私達を射抜いた。


「そなたらは、負けた。これから、この国は我が国の一部となる」


それを聞いた母は、「王は、陛下、は?(わたくし)の夫は、子供は!?」と叫んだ。

隣国の国王は、冷たい声で言った。最も、母が望まないであろうその、言葉を。


「・・・死んだ」

「ぅあ"・・・あぁ"あ、あ・・・はは、ぅふふふふっ!!!!!!あはははははっっ・・・っ!!!」


その言葉を聞いた母は、狂ったかの様に笑い出した。

涙を流して笑っている母は、何時もの母では無かった。「ひっ」何処からか、そんな怯えた声が聞こえた。姉は、ひたすら狂ってしまった母を見つめる私を、抱き締め、私の耳を塞いだ。

(まぶた)にポタリと温かい、何かが落ちる。

上を見上げると、姉もまた母を見て、怯えたかの様に静かに震え、多くの涙を流していた。

そして姉の目が見開かれた。

その姉の視線を辿ると、母は、何処からかナイフを取り出すと、それを自分の胸目掛けて、降り下ろした。

隣国の国王は、焦ったかの様に顔を強張らせ、母を止めようと動くが、隣国の国王の手が届く前に・・・ナイフは、母の胸に刺さっていた。


「あはっ!!あはは・・・ぁふふ、うっ!!ゴホッゴボッ!!」


母の胸元は、真っ赤になり、母の口から大量の・・・鮮血が溢れ出た。

母は、しばらく小さく笑いながらやがて、動かなくなった。

私は、姉を見上げ指を、母に向ける。


「ねぇ様?か、ぁ様が・・・あのまま、寝て・・・風邪、引いて・・・しま、ぃます」

「・・・あ、あ、ぁちが、違うのよ。お母様は、寝てるんじゃ・・・っない!!し、しんで」


まだ、言葉を紡ごうとする姉の口を、隣国の国王が塞いだ。


「それ以上、何も言うな」


力強い目で言われ、姉はコクンと頷く。その時の姉の怯えた目が印象的だった。



そして、両親を失い、王女で無くなった私達を隣国の国王が、引き取ってくれた。

彼の城で暮らしはじめて、一ヶ月の事。姉と私は、謁見の間に呼ばれ、国王から私達を養子として、欲しがっている者が居ることを、聞かされた。




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