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プロローグ

 それはまだ私が幼く世界を詳しく知らない時のことであった。

 

 当時世界には魔物があふれ幾度となく人類は侵攻され、蹂躙され、絶望を思い知らされていたらしい。そんな時に現れたのが異世界から召喚された『勇者』と呼ばれる存在だった。『勇者』の力は偉大で、彼が振るう剣の一太刀は大地を割り、彼の魔法は世界の理を捻じ曲げるほどであった。彼の活躍により魔物はその数を劇的に減らし、人類は救われた。   

 当時私が住んでいたのは王都に近いそれなりに栄えていたところであり、その時一度だけ『勇者』にあったことがあった。まさしくその姿は物語の登場人物そのものであった。人にやさしく、仲間想いで、なにより眩しかった。私には生まれつき人や物の「力」や「性質」を目視できる能力『魔眼』が備わっていた。『勇者』のそれは光り輝く、まるでやさしい太陽の光であった。幼い私は純粋に憧れた。彼のようになりたかった。いや、彼の為になりたかった。


 それからの私はただひたすらに自分を磨き続けた。まずは剣術を独学だが学んでみたが筋力がつきにくい性質だったらしく、また才能もなかったのだろう、剣術はすぐに諦めた。次に取り掛かったのが「魔術」であった。元来適性があったのだろう。生まれが三代続く商家であり魔術所を手に入れるのは苦労せず、『魔眼』の力も幸いし、瞬く間にその能力を伸ばしていった。ただ彼の役に立ちたかった。

『勇者』は世界を救った後に『救国の英雄』として第二王女を娶り、元の世界には戻らず今も王族としてこの国に携わっている。時折魔物の発生や何かしらの災害があった時にはすぐに駆けつき問題を解決していた。

 そしてそれは私の能力が王宮に認められ『宮廷魔術師』に就いたころに起こった。魔物の大発生である。しかも今回のそれは前回とは違い魔物を束ねるもの『魔王』と名乗るものが現れたらしい。前回のときと同じく『勇者』は人類を救うべく立ち向かっていった。だがあっけなく彼は死んでしまった。彼の力は全く衰えていなかった、なのにである。どうやら『魔王』と呼ばれる存在は『勇者』よりも強大な力を有していたらしい。その後『魔王』は人類の王たちと話をつけお互いに不可侵条約を結び魔王領を定め、統治した。

 だが魔王領など私にとってはどうでもよかった。私は『勇者』を殺した『魔王』を許せなかった。青く澄み渡る空から太陽を奪われ、その元凶である『魔王』が憎かった。

 あれから長い時が流れた。

 人類が魔王領に宣戦布告をしたらしい。なんでも次代の『勇者』を召喚することに成功した国が現れたらしく、その国の『勇者』は以前の『勇者』よりも強大な力があり『魔王』に匹敵するらしい。けれども私にとってほかの事はどうでもよく、『勇者』が再び現れたことが何よりも嬉しかった。憧れたのは『勇者』という存在である。『彼』でなく『勇者』である。前回は何も力になれず、ただ悔しい想いをしただけだった。しかし今回は違う。私には力があり『魔法』があった。一度奪われた太陽の光をもう一度消させないために私は決心した。

 

 今私は王宮にある自身の研究室にいる。

 思えばこれまでの道のりは長かった。そう思いながら部屋の中心にある魔法陣に目を向ける。この魔法陣に私の魔力を通せば完成である。

「長かった」

そう一人ごちて魔法陣に魔力を通わせ始める。

「次こそは、あなた様の為に」

 次の瞬間魔力が満ち、部屋が魔法陣からあふれる光で何も見えなくなった。

 


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