表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

やっと少し冷静に

 後は、七海の存在か。

 

「ちょっと、昔の彼女を生き返らせることになったから、しばらくの間、留守にする。」

 

 その言葉に嘘偽りなんてないのだが、こんなことが彼女にすんなりと受け入れられると思うほど、俺も馬鹿じゃない。かといって、これほど非現実的なことを彼女に納得させるだけの説明は、出来そうもない。

 

 どうしたものか。

 嘘をつくのも必要か。

 

 出来れば七海には、誠実でありたい。

 

 嘘をつかない=誠実だとは言わないが、嘘をつく人間が不誠実であることは多い。

 それに、男女間の嘘は、バレた際にまず浮気が脳裏を掠める。たとえそんな事実はなくても、人の心など、その人でなければ分からない。もし、それがどれほど七海にとっては些細な嘘でも、七海が俺に嘘をついたとして、その嘘が明るみに出れば、俺は裏切られたと思うだろう。ならば、その逆もあって当然だ。

 

 俺は七海を好きだし、七海も俺を好いていてくれる。そんな感情が未来永劫続く保証はないが、続かない保証もないのだし、その現状に何の不満もないのだから、続ける努力はするべきだ。

 

 仕事はまあ、問題ない。手に余るようなら、最悪、浩哉に丸投げすれば良い。

 

 七海を説得する自信はない。

 しかし、彼女に嘘はつきたくない。

 

 そして、出来れば、波留が生き返るものなら、生き返らせてやりたい。

 

 何の解決策も見出せないが、把握できる現状としては、こんなところだろう。

 

 うん。現状が袋小路だということが判明した。

 

 現状を打開するためには、もう一度波留ときちんと話すことが必須だな。前回は、俺が寝ている間に夢に出てきた。今回もそうだと仮定して、まったく眠くはないが、まだ残っている睡眠薬を飲んでみるか。

 

 そうして、俺は、もう一度薬を飲んで、眠りに就いた。

 

 

 駄目だった。

 波留の姿はおろか、夢さえ見ることなく目が覚めた。

 

 時計を見れば、一時間半しか経過していない。

 

 どうやら、さっきまで熟睡し、風邪の症状も緩和した身体では、いかに薬の助けを借りても熟睡し続けることは難しいらしい。

 

 どうしたものか。

 波留の肉体があるとして、その場所は地元である可能性が極めて高い。そんな今の状態では地元に帰るわけにもいかない。

 

 ここ数日の体調不良と寝不足で、仕事が少し滞っている。

 もうじき七海の仕事も終わるだろう。

 

『昨日はプリンと、ポカリありがとう。

 一晩ぐっすり眠ったらかなり回復したよ。

 

 だから心配はいらないよ。

 

 ただ、ちょっと顔見たい。

 仕事終わったら、今日も来られるかな?』

 

 もっと早く七海には連絡するべきだったが、事の大きさにかなり混乱していたらしい。

 とりあえず、俺はメールを打った後、仕事を始める。

 

 ピロリロリン。

 

『良くなった?良かったぁ~□


 もちろん行くよ□

 もうちょっとだから、待っててね□』

 

 仕事中はあまりメールを返して来ない彼女からすぐに絵文字付きで返信が来た。

 それだけ心配してくれていたのだろう。弱った俺を看病してくれたのも彼女だ。やはり彼女とは、この先もともに歩みたい。

 

 彼女が来るまでの間、溜まってしまった仕事をこなす。

 

 彼女を蔑ろにしてまで波留を生き返らせる意義は…?

 

 ないんだよな。うん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ