ゆめにっき~お岩~
ふすまだらけの部屋の真ん中に
とても薄い布団がひかれ、
わたしはその上で気付けば寝ていた。
パッと目が覚め、あたりを見渡す。
少し薄汚れたふすまだらけ。
そのふすまの前におばあさんが
足を崩してうなだれて座っていた。
うつむいてぶつぶつと何かを言っている。
わたしは布団から出ずに、
顔をおばあさんの方に向け
何を言っているか聞き取ろうとした。
「わたしはね...」
おばあさんの声が少し大きくなった。
わたしに話しかけているのだろうか。
「わたしはね、昔お岩さんの役をしていたのよ」
おばあさんの髪の毛は肩のラインで
切り揃えられたいわゆるおかっぱだった。
白髪の髪の毛がたくさん覆いかぶさり
顔は見えない。
「たくさん辛い思いをしたわ...
ねぇ、あなた。そうだったでしょう?」
わたしはなんのことかわからず
ただその話に耳を傾けていた。
「あまり良い事なかったでしょう?
だってそれ...
わたしだもの」
パッと目を覚ます。
夢だと確信した。
そして見上げたわたしの頭上には
長い髪を垂らした女が
大きな目を開いて
わたしを見下ろしていた。