異世界人とお祭りへ
今回はちょっと長いです。ラストスパート頑張ります。
「完成―!どうどう?浴衣の感想は?」
「動きづらい」
「第一声がそれ!?」
ものすごく似合ってるのになぁと、濃紺の浴衣を身にまとったジルを見る。サラサラの金髪に濃紺がよく映える。うんうん、目の保養。
「まぁ、悪くはないがな。お前はそのままで行くのか?」
「いやいや、さすがに部屋着じゃないかないから。ちょっと待ってて着替えてくる!」
「ここで着替えてもいいぞ」
「遠慮するわ!」
まったく、何を言い出すかと思えば。本当に今日帰るのだろうかと言うほどいつもと変わらない。まぁ、その方が気まずくなくてすむ。
「さて、これをこうしてっと」
着付けなんて久々過ぎる。特に帯は難しい。どうにか形にして完成と鏡を見る。ピンク生地に古典柄の浴衣、久々に着る浴衣に少しワクワクする。
「あっ、しまった!?」
髪型のことまで気にしてなかった。簡単にならできるけど、せっかくのお祭りに浴衣だ。それならちゃんとしたい。けど、今更美容院なんて行く時間がもったいない。
「仕方ない。ここは、困ったときの姐さんだ!」
最近頼ってばかりだけど、仕方ない。次から頑張りますということで!
「ジルー!荷物持って姐さんの所に行くよー。って、何してるの?」
部屋の隅でガタガタ何かしてるジルを後ろから覗き込む。
「それ」
そこには、ジルがここに来たときに着ていた防具と短剣だ。あれから綺麗に磨いたけど、ボロボロには変わりない。
「それ、持っていく?」
唯一、ジルがこっちの世界に持ってきた物だ。お祭りに持っていくのは重たいけど、帰るときは必要になるかもしれない。けれど、ジルは少し考えると首を振った。
「いや、俺がまたこっちに戻って来る時まで預かっておいてくれ」
「了解」
戻ってくるとき。いつになるかわからない約束。だけど、私にとってはとても大切で嬉しい約束。さて、それまでは部屋のオブジェになっててもらおうかな。しばらくは誰も部屋に招き入れならないことがネックだけどね。
「よし!なら、いこっか!」
「で、髪を結ってもらいに来たと。まったく、私も暇ではないんじゃが」
「困ったように言ってるが、顔が明らかに楽しんでるのはなんでだ?」
呆れたように瑠依姐を見るジルに苦笑する。確かに、鏡越しに見える瑠依姐は器用に腕を動かしながら顔は笑顔だ。
「気のせいじゃろ。ほら、できたさね」
「さすがー!」
鏡で後ろを見ると、編み込みシニヨン風になっていた。プロの腕前とも言いたい出来に感動する。まったく、何でもこなすんだ、この人は。本当に羨ましい。いつもと違う髪型にウキウキしていると、横からシューという音が聞こえた。
「!?」
「お主もこれで良いじゃろ」
姐さんグッジョブとつい親指を立ててしまったのは仕方ないと思って欲しい。姐さんによってセットされたジルの髪型は毛先が程よく散らしており更にかっこよくなっていた。
「ほら、そろそろ行かぬと、花火大会に間に合わないさね」
「はーい!そう言えば、今日榊さんは?」
いつも姐さんの近くてワタワタしている榊さんは今日は見当たらない。
「今日は仕事場で原稿をチェックしてるんじゃないかの。そういう時もあるさね。だから気にすることはないさ」
「ん?そっか」
一瞬その言葉はジルに投げかけられたかのように聞こえたけど、気のせいだったかな。
「ほら、そろそろ私も仕事に戻らなければならんから」
そうだった、姐さんの仕事の合間にお邪魔してたんだった。時計を見るとあともう少しで花火が始まる時間。これは急がないと。後ろを振り向くとジルと姐さんが何かを話してる。何だろう?と近寄ろうとしたらジルがこっちに来てほら、行くぞと手を引っ張ってくる。いや、待ってたの私なんですけど。
「楽しんでおいで」
「はーい!いってきまーす!」
(さぁ、楽しい思い出作りをしましょう)




