カウントダウン1日前~異世界人の問題~
あれからが大変だった。暴走車に送ってもらい帰ると、もう次の日になってて、緊張が抜けた私はすぐにでも寝たかった。そう、寝たかったのにそれを許してくれないのが融通の聞かない異世界人で。無謀なことをするな、勝手にフラフラどこか行くな、良く知らない人の家に行こうとするななどなど説教が始まった。私は子供か!と何度叫んだことか。
説教も終わり、やっと寝れると思ってベッドに倒れ込もうとした時、ジルの左足の腫れに気づいて、それに怒ったりと結局寝たのは昼前、起きたのは夕方近くになってしまった。
「うん、明日ジル帰るのよね?何でそんなに呑気なの?」
洗濯を片付け終わってテーブルにつく。
暑いとシャリシャリかき氷を作ってるジルを見ると本当に帰るんだよね?と聞きたくなる。
「ミコト?」
「何?んっ!?」
「うまいか?」
無理やり口に突っ込まれた苺味のかき氷は甘い。大人しく頷くと、だろ?と笑ってくるジルにだんだん顔が熱くなる。その不意打ちは本当にやめてほしい。
「足……大丈夫?」
「あぁ、まぁ、別に大したことなかったしな」
「いやいやいや、十分重症だったけど!?折れてたんだけど!?」
「けど、治ったろ?」
まぁ、そうだけどさと、左足を見る。応急処置だけして、今日起きてから瑠依姐達に来てもらって、榊さんに治してもらったんだけど、本当にあの人何者なんだろ。結局、瑠依姐のまぁまぁでまたしてもごまかされてしまった。
「魔法って凄いよね」
改めて見たそれは、私を感動させるのには十分だった。まだまだ他にも色んな魔法があるんだろうなと思うと少しワクワクしてしまう。
「けど、何で瑠依姐達はこの世界で魔法を使えるんだろう?ジルは使えないんだよね?」
「俺も詳しくはわかねぇが、どうやらあいつの腕輪にはある程度の魔力が備わっていてそれが尽きるまでは、ある一定条件で使えるらしい」
「条件って?」
その条件があれば、ジルも指輪があることだし使えるじゃない?というとあっさり首を振られてしまった。
「条件までは教えてくれなかったからな。けど、どっちにしろ俺には無理って言ってたから無理なんだろう」
聞くだけ無駄だと手を振るジルにそんな物?と首を傾げてしまう。あの人は本当に謎ばかりだ。
「ねぇ、ラインティアってどんなとこ?」
確か、人は空を飛ぶけど、地は馬で走って、海には人を好んで食べるマーメイドがいたはずだ。
「急にどうした?」
この質問は予想外だったのが、少し驚いたようにこっちを見てくるジルに苦笑する。だって、その世界は私にとってはまるでおとぎ話のよう。だけど、そこがジルの生きる本当の世界。
「ジルの世界のこと知りたいなって」
そしたら、あなたが帰っても、どんな世界で何をしてるのなかって少しは想像つくでしょ?そんな、私の心内を知ってか知らずか、ジルはそんなもんか?と苦笑する。
「そうだな、あっちの世界には様々な種族が存在する。マーメイドもそうだが、妖精族もいるし、獣族も存在する。今は敵対している種族もいるがな」
なにそれ!?全然想像つかないんだけど!?えっ、耳がトンガってたり、尻尾が生えてたり、羽があったりするわけ!?
「凄く楽しそうだな。後は、そうだな、魔法石によっては風や炎、雷などを操れたりもする」
「凄いね。ジルも出来るの?」
子供みたいだ?そんなこと気にしてられない。
「あぁ、今は出来ないけどな」
パチンと鳴らす指からは相変わらず何も出てこない。けど、向こうの世界に戻ったらそこからは見たことのない魔法が出てくるんだろうな。
「ジルは、いつもどんなことして過ごしてるの?」
「俺は……、王のお守りだな」
なぜか、ため息をついて疲れた顔をするジルに驚いて良いものか、慰めて良いものかわからなくなった。けど、王に仕えてるってことだからやっぱり凄いんだろう。
「そんなに俺のいた世界に興味があるのか?」
「当たり前じゃない!一度で良いから見てみたい」
昔読んでもらった絵本のような世界にワクワクする。けど、行けないんだよねぇ、ちょっと残念と苦笑する。
「来るか?」
「へ?」
「一緒に俺と来るか?」
「まーた、そんな冗談を…い…う」
笑いながらジルを見るとその顔はとても真剣なものだった。何?だって、帰れるのはジル一人なんでしょ?
「このテラス石を使ったら、明日俺と一緒に向こうの世界に行けるって言ったらお前どうする??」
差し出してる手とは逆の手に持つテラス石に目が行く。ジルの言葉が嘘には聞こえなくて私はもう一度差し出された手を見た。
(私は……)




