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やってきたのは異世界人  作者: 如月 玲
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カウントダウン2日前~異世界人の救出劇4~

 あぁ、ブチギレてしもうたの。先ほど見せたあの表情。冷酷、冷徹という言葉が一番あっとるじゃろうの。全てを投げ打った人間程怖いものはない。ジル坊も同じじゃ。先ほどとは比べ物にならぬ、力を発揮しておる。


「怖いのぉ。これも全部お前のせいじゃ、ミコト」


 まったく、どうして。どうやらとんでもない奴に見初められたもんじゃな。


「瑠依様」


 未だに処置をしてくれているフィニの手元はドクドク溢れかえっていた血が静まり返っていた。痛かったろうに、そう思いながらフィニを見ると何かに気づいたようにある一点に視線をよこす。


「どうした?」


「あそこから、何か変な気配が」


 あそこからという場所は血に染まったミコトのスカートのポケットだ。この子なら何か私に感じ取れるものがあるのかもしれん。ポケットを探ると何かが指に当たる。そのまま取り出す。あぁ、これは。


「お主もただでやられる奴じゃないというわけじゃな」


 もう冷たくなってしまった頬を撫でる。隣では大きな音を立てて坊やが暴れているというのに、この空間だけはお主のせいで静かじゃ。


「とととというか、瑠依様!?今気づいたのですが、あのままジルヴェスター様が敵を倒してしまったら必然的にラインティアに帰られるのでは!?」


「あ」


 忘れておった。そう言えば、そういう話じゃったな。さて、ワタワタしながらも処置をしておるこの子を止めに入らせるわけにはいかんし。ということは、私か?


「面倒じゃの」


「そそそそんな事言ってる場合じゃ!?」


 今にも止めを刺しにいってる坊やにやれやれと重たい腰を上げる。これが、最後の魔力になるか。


『大丈夫』


「は?」

  

 腕輪を掲げ、ここで出来る最大限の魔法を繰り出そうとした時、横を何か小動物が走り抜けていった。


「なんじゃ、あれは?」


 淡い光を放ったそれは、もう大輝に突き刺さるであろう短剣を弾き、大輝と坊やの間に入ったではないか。よくよく見るとその姿は十になるかならぬかくらいの娘。いったい何者じゃ。


『約束破るつもり?』


 約束?なんじゃ、知り合いか?と思ったが「退け」と容赦なく冷たい声で言われている辺りそうでもないらしい。あの娘じゃ暴走坊やは止められまい。


『帰る時は黙って消えないんでしょ?』


 寂しそうに紡がれる声に、坊やは何か思い出したのか驚いたように少女を見る。なんじゃ、何の話をしておる。


「お前、誰だ?」


 その答えを口にしないまま、少女は黒いワンピースの胸元からヨイショと何かを取り出した。


『この人の処分は私が引き受けます』


 そして、気絶している大輝の上着のポケットから何か取り出した後、四角いキューブを向けた。あれは、対人捕獲用のキューブのはずじゃ。よくもまぁ、次から次へと出てくるものよ。少女は慣れてないのか緊張の面持ちでキューブをかざしケーラ(封印)と唱える。唱えたあとはキューブが反応しダイキを収納し終りということなんじゃが、何やら本当に入ったのかと疑問のようにキューブを見る娘は可愛いの。


「で?お前は何者だ?」


 先ほどの殺気は成りを潜めたものの、一連のことに納得できてない坊やは娘に詰め寄る。子供の姿といえど、あの迫力で睨まれたらあの少女が逆に不憫でならぬ。


『そんなの、約束を破りそうになるからじゃない!!』


「おや」


 ビクビクするものや思っておったが、そうでもないらしい。娘はドンと坊やを突き飛ばすとこちらに向かってやってきた。


『ね…お姉ちゃんの手の中の物を貸してもらっても良いですか?』


「別に良いが、ここでこれを扱える代物ではないぞ?」


 恐る恐る手を差し出す少女の顔に合わせるように座り込む。よくよく見るとその服装はワンピースかと思っておったが王室のメイド服ではないか。目をクリクリさせて、ツインテールを震わしてる表情は、坊やに向けられるのより固い。まぁ、良いかと娘に指輪を渡すとペコリとお辞儀をして坊やの元へと戻る。さて、どうするのやら。発動条件を満たしていない魔法は使えないこの世界で、あれは取り扱えまいに。


『えっと……』


 ジルの元へと戻った少女は何やらポケットを探り一枚の紙を取り出した。何じゃ?手紙かなにかか?


『えっ?いやいやいや。絶対嘘だし。他にって、あのバカ!』


 何じゃ独り言が耐えん娘よの。面白いものでも見るかのように娘を見ておったら、何やら決断したように良しと声をだす。


『座って』


「何でだ?」


『いいから!こっちは、真剣に言ってるの!』


 顔を赤らめ真剣にと言われても困るだろうに。だが、坊やは困惑しながらも少女に合わせて座る。娘はそれを確認すると指輪を宙に投げパンと両手を叩く。すると、指輪は形を緑の光へと変化させる。その光が娘を包んだ瞬間、娘は坊やへキスをした。


「ほぉ」


「ほ……ほぉ、じゃありませんよ!こんな所美琴様に見られたら」


「お主はちと落ち着け」


 赤面しながらちゃっかりその様子を見てワタワタしているフィニにどうしたものかとため息をつく。緑の光が娘から坊やに移動した瞬間、それは起こった。


「っつ!」


 一瞬、苦悶表情を見せた次の瞬間、緑の光は大きくなり、坊やの身体が大きくなる。良かったの、と思いながら先ほどの指輪を思い出す。あれは、大輝がなくしたと思っていた坊やの力を封印していた指輪じゃ。まぁ、どこで手に入れたかは分からぬが、美琴はいつの間にかそれを手に入れいてた。まぁ、どちらにしろ、あの指輪の力を解放させるだけの魔力を誰もが持っておらぬから私の中では後回しになっておったが、まさかの助っ人というところか。


『あとは』


 そう言って今度は先ほどとは反対のポケットから何やら卵型の入れ物を取り出す。何じゃ、次から次へと忙しいの。


 今度はどんな事をするのかと見守っておると、今度は美琴の側へと寄る。初めはフィニが警戒しておったが、卵型の入れ物を見るなり場所を引渡し寄った。何じゃ?あの中に何が入っておる?


『痛そう』


 そりゃあ、まぁ、そうじゃろうの。引き攣り気味に感想を述べる少女は顔を少し青ざめさせながらも美琴の胸へと手を当てようとした。


「何するつもりだ」


 娘の腕を掴みそれをやめさせようとする坊やに娘はキッと睨む。


「おやめください!」


 制止の声をあげようとした時、横から先に声が上がった。何じゃ、さっきまでのワタワタしたのはどこへいった?


「ジルヴェスター様!その子が持ってるのは美琴様の魂です!」


「「は??」」


 まさかの発言に、私も坊やも固まる。確かに、処置をしていた時、聞くには聞いておった。


『フィニ!美琴は戻らぬのか!?』


『そ……それが、傷は塞ぎましたが、美琴さまの魂がここにありません。もしかしたら、先に身体と切り離させたのかもしれません』


『なんじゃと?』


『もしそれなら希望はあります。この体を生命維持出来るだけ保ち魂を戻したら生き返る可能性があります』


 それを聞き、ジル坊に制止の声をかけたんじゃが、あやつは聞いてはくれんかったからの。


「なんで、ミコトの魂をお前が持ってる?」


 グッと腕を持つ力を強めたのか、娘は顔をしかめる。しかし、それにもフィニは慌てて声を荒立てる。


「ダメです!その子もまた魂魄です!」


「なっ……!?」


 その言葉で坊やが力を緩めた瞬間、娘はその場所から逃げる。それはそうじゃろう。魂魄だけということは、それを傷つければダイレクトに生命に関わってくる。どうやって、やって来たかは知らぬが、その状態で異世界を渡るなど命懸けもいい所じゃ。


「初めから話せ」


 坊やの言葉に、少女は逡巡するとポツポツと話しだした。


『詳しい話はできないの。だけど、私はあなた達を助けたかった。こうなることを知ってから。体ごとこっちに来ることはできなかったけど、魂魄だけならこっちにこれたから、色んな人に協力してもらって来たの』


「まったく詳細が見えねぇが、ミコトの魂を抜き出した理由は何だ?」


『言ったでしょ?知ってたって。だから、お姉ちゃんの魂魄を先に抜き出しておいたの。あっ、何で知ってるかは言えないからね!怒られるから』


 ふむ、要はわからぬが、こうなることを知り、二人を助けたかったから来たということか。何じゃ、もしかしたら坊やの隠れファンか何かかの?


「まぁいい。で?他に話せることはないのか?」


 ある程度規制がかかってるということは理解したようじゃが、どうやら、話せることは全部話させようとしとるの。


『あっ、あの人から伝言が』


「あの人?」


『えっと“君がいないと僕仕事溜まって大変なんだから早く帰って来なさいね”とのことです』


「あいつ!!」


 いったいそれが誰の言葉なのかは不明じゃったが、どうやらその言葉だけでわかったらしい。


「わかった。お前のことは信用する。ミコトを戻せるか?」


『うん!』


 何が信用の証となったのかは知らぬが、坊やは娘の頭を撫でるとその先を促す。娘は美琴の方を向き卵型の入れ物からオレンジの光を取り出した。それは淡い光を放ち、胸元まで持っていくとスっと吸い込まれたように美琴の体へと入っていく。


『じゃあ、後はお願いね』


 自分の用は済んだというように、今度は娘の体が光に包まれる。きっと、こっちにおれる制限時間一杯一杯だったんじゃろうの。


『あっ、そうだ。お兄ちゃん。テラス石があれば、お姉ちゃんも一緒に向こうの世界に連れていけるけど、どうする?』


「なっ!?」


 娘の爆弾発言に目を見開いて驚く坊やをよそに、娘は笑顔で消えていった。


(あぁ、これはこれは面白くなってきたの)


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