カウントダウン2日前~異世界人の救出劇3~
口元から頬へ、首元へ、心臓へと震える手を動かす。あぁ、冗談だろ?何で、そんなに冷たいんだ?何で、鼓動をやめてんだ?何で、暖かいのが、腹から出てる血だけなんだ!!
「こんな所で死ぬな!まだ、約束果たしてねぇだろ!花火大会行くんだろ!?」
くそ!こんな声かけ無意味なの何かわかってる。無意識に鳴らす指からは音だけしかでない。あぁ、本当にこんな時、無力な自分に腹が立つ。
「フィニ…、そうじゃ、フィニ!!」
ルイが何かを思い出したように、入口に向かって叫ぶ。いったい誰を呼んでやがると声に出そうとした瞬間、そいつは目の前に現れた。
「瑠依様!!」
「フィニ!美琴の傷を塞げ、まだ間に合うかもしれん!」
「はい!」
「お前……」
フィニと呼ばれたそいつは、ルイの言葉通り血を流しているミコトの腹に手をかざし赤い光を放つ。何で、こいつが簡単に魔法を使えるのだとかそういうのは今はどうでもいい。
「ルイ、こいつただの人間じゃないな」
睨みつけるようにルイを見ると、あからさまに目を逸らす。疑うべきだった。こいつの近くに当たり前にいるから逆に気がつかなかった。まさか、さっきまで車の運転で目を回していたサカキという女が、こっち側の奴だということを微塵にも思わなかった。
「へぇ、そんな隠し玉まだ持ってたんだ?」
「邪魔じゃ!!」
真後ろで聞こえた声にルイが容赦なく蹴り飛ばす。だが、あいつは蹴飛ばされたと同時に体を後ろに引いてその力をいなした。
「安心してよ。もう俺の仕事は終わったんだから」
「どういうことだ?」
初めのように椅子に座り魔法玉で余裕坦々とダイキはこっちを見る。
「だって、そうでしょ?君が帰れる条件はその女の命を使うか、この俺を殺すしかない。だけど、俺は殺される予定は生憎ないからね。君は本当の消滅を待つだけなんだよ」
そういうことか。だから、ミコトを狙ったわけか。だが、そう言えばこいつさっき。
「テラス石って何のことだ?」
あの時は、聞き流したが確かこいつはさっきそんな言葉を言っていた。だが、俺はテラス石なんて物は知らない。ルイを見るも首を横に振る。
「あぁ、これのこと?これが賭けの対象だったんだけどね。そうだなぁ、これで終わるのもつまらないから教えてあげようか?この石がどんな物か」
時間もまだあるしねぇと楽しげに笑うダイキを睨みつける。あれが、賭けの対象ということは何かあるのは間違いない。
「これは一部の人しか知らない奇跡の石って呼ばれる物だよ。そしてテラス石はこの一つしかない。それが、何かの偶然でこの世界にやってきたんだ。そして、それを偶然にも手に入れたのがその子だ」
何だ、その確率は。いったいどんな運の持ち主なんだ、こいつは。
「このテラス石は奇跡の石と呼ばれると同時に召喚石とも呼ばれてる。だから、君がその子の前に現れたのは偶然じゃない。実際俺が現れたのも外に投げ捨てられたであろうテラス石の近くだったんだ。そしてこれはチャンスだと思ったね」
なるほど、道理であれだけ探しも見つからなかったわけか。こいつは見た瞬間それがどんな物かわかったんだろう。
「俺の最終目的は君を確実に消滅させることだ。だから、一つでも邪魔な物は抹消したかった。苦労したよ、魔宝玉を使って志保の記憶を操作したり、君たちをあの遊園地に誘い込むのはね」
まさか、そんな初めからこいつの計画に乗っていたとはな。ダイキは計画通りに進んだことが満足なのか、嬉しそうに語ってやがる。だが、その顔も一変した。
「本当はあのお化け屋敷で始末するはずだったんだけど、まさかの誤算だったよ。あそこから抜け出すとはね。まぁ、二重トラップを敷いてたから良かったんだけど」
似合ってるよ、その姿と笑う、ダイキを睨む。
「全てがお前の思い通りになるとは思うなよ」
「まぁね。で、次どうしようかなと思ってた矢先にそこの獲物が飛び込んで来たんだ。どこで知ったんだろうね?テラス石と俺の存在を知ってたよ。これを返してってさ。まぁ、そうだろうね、これはあの子の命を使わず無償で君をラインティアに帰すことができる唯一の存在だから」
無償でラインティアに帰れる。いったいミコトがどんな理由でテラス石の存在を知ったかは知らねぇが、ここに無謀にも飛び込んだ理由がやっとわかった。
「それで、こいつに無謀な賭けをぶつけたわけか」
「そうだよ。懸命に返してって言うからチャンスを上げたんだけど、残念だ」
何が残念だ。そのチャンスはミコトのチャンスじゃなく、お前のチャンスだろうが。
「で?お前はそれで元の世界に戻ろうっていうのか?」
理屈で言えばそういうことだ。そうすれば、こいつは何の代償もなしに戻れる。
「これで戻りたいのは山々なんだけどね。これは俺じゃあ扱えない。だから、正規のルートで帰ることにするよ」
君の消滅は確実だしねというダイキに腸が煮えくり返りそうになる。ミコトの治癒の時間稼ぎにコイツの話を聞いていたがそろそろ限界だ。
「おい、ミコトはどうだ?」
懸命に治癒と蘇生をしているフィニという女に声をかける。見たところ腹の傷はどうにかなったようだが。
「ダメです。ミコト様は……」
泣きながらそれでもフィニは治癒と蘇生を止める気はないらしい。そのフィニの最終宣告を受け入れられない俺はミコトのそばに座る。なぜ、あの時ミコトの様子に気付かなかったのか。
「お前はお人好し過ぎだ」
口元についている血を拭い、髪を撫でる。初めからそうだった、見ず知らずの俺を家に住まわせたり、嘘をついてソファーで寝たり、一人で過去を背負い込もうとしたり。
まぁ、そんなお前だから好きになったんだが。
「あはは。やっぱりどうしようもないみたいだね。君のせいで彼女は死んだも同然だね。かわいそう」
「あぁ、そうだな」
本当にその通りだ。
「ジル……坊?」
何、少し怯えた顔してやがる?お前は大人しくミコトの傍で声をかけてればいい。俺は、俺の責任を果たすだけだ。
「待て!!」
後ろから聞こえる静止の声何て関係ない。俺は短剣を拾うとダイキに勢いよく突っ込む。
「っつ!!何?キレちゃった?」
「消えろ」
キンッと小刀で跳ね返されたが、そんなの構わなかった。ただ、俺の頭の中には目の前の奴を殺すことしかない。
さっきよりスピードを上げ、急所を狙う。時々、反撃をくらい血が流れたが正直どうでも良かった。あいつの痛みに比べたら大したことなかった。
「クソッ!これで終わりだ!」
喉を狙い一太刀浴びせようとした瞬間、ダイキが魔宝玉を取り出す。そう言えば、持ったやがったなと頭の中は焦ることなく冷静だ。
「終わりに何かなるか」
魔法を発動させようとした瞬間、宝玉を短剣で貫く。そんなこと自殺行為だ?そんなこと知るか。俺はただ、目の前の奴を殺せたらそれだけで良かった。予想通り、宝玉は中途半端な力にその身を爆発させる。体重の軽い俺は簡単に吹き飛ばされた。爆風と共に飛ばされた瓦礫が左足にぶつかり変な音が鳴ったが、まぁ、いいか。
「何だ、まだ生きてたのか?」
直撃をくらった本人は相当なダメージを負って倒れているが、息はしてるな。まったく、魔法に頼るだけも問題ってことだな。
「何か色々言っていたが、これで終わりだ」
じゃあな。その一言と同時に俺は短剣を奴の胸元へと突き刺した。




