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やってきたのは異世界人  作者: 如月 玲
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カウントダウン2日前~異世界人の救出劇1~

お久しぶりです。後、もう少しで完結です!お付き合いお願いします。

「おはよう」


 もう一度寝ても良いですかという、心境とはこういうことだろうか。冷たく硬い椅子の上に手足を固定されて身動きさえ取れない状態だ。そして、目覚めに見たのが作り笑い全開な大輝の顔。


「ここは?」


 さっきまでは確か大輝の部屋にいたはずだ。けど、ここは廃屋と呼ぶにピッタリな場所だ。


「それを答える前に、質問があるんだけど。君はどこまで知ってるのかな?」


 どこまでって言われても知ってることなんて、少ししかない。黙ってようかとも思ったけど、大輝の右手に握られている玉が気になる。確かあれは、遊園地で見た時の魔宝玉と酷似してる。


「あ…あなたが、ラインティアの住人で、テラス石を持ってるってことは知ってる」


「へぇ」


 驚いた顔に私の言葉が意表を突いたのは間違いなかった。せいぜい驚いたら良い。


「それより、テラス石を返して!」


 あれを求めにここに来たんだ。あれがあればジルは代償を払わずに元の世界に戻れる。


「どうやら、ジルヴェスターの帰し方も知ってるみたいだね。というか、返してって言われて、はいそうですかって返すと思ってるの?わかってると思うけど、俺は敵だよ?」


 そんなこと百も承知だ。簡単に返してくれないのもわかってた。けど、未知数な相手に対して方法なんて思いつかなかったんだ。


「そうだなぁ、ゲームをしようか?」


「えっ?」


 唐突なその言葉に今度は私が意表を突かれる。そして、魔宝玉らしきものを私に差し向けてくる。


「そこまで調べて、乗り込んで来たんだ。チャンスくらい欲しいだろう?」


「どんなゲーム?」


 いったい何を考えてるのかはわからない。けど、チャンスがあるならつかみたい。


「生死をかけた宝探しゲーム。ある空間に君を送り出す。君はそこでテラス石を見つけ出すという簡単なルールだ。だけど、それだけじゃつまらないから敵も準備しておく。その敵は君を攻撃して、殺そうとするだろう。勝負は君がテラス石を見つけたら勝ち、君が死んだら負けという簡単なルールだ」


 どう?と微笑みながら聞いてくる大輝に一瞬戸惑う。勝ち目があるだろうか。運動神経はそう悪い方ではないとは思う。けど、目の前の奴に常識が当てはまるとも思えない。


「どうする?やらないならそれでも良いけど、テラス石は絶対に渡さないよ」


「やる!」


 頑張るって愛華の前で誓って来たんだ。簡単に諦めたりするもんか。


「そうこないとね。簡単に死んでもらっても困るから、敵には魔法も武器も持たさないようにするから頑張って俺を楽しませてね」


 その言葉と同時に手足の拘束が取れる。


「じゃあ、ゲームスタート」


 パキンと言う軽い音と共に光が発せられる。眩しいと思った次の瞬間、目の前の景色が一変した。


「嘘……」


 さっきまで廃墟だった空間はまるで嘘のように一変した。周りにあるのは私より何倍もの大きさがあるおもちゃ達。ぬいぐるみもあればロボットやボール、まるでおもちゃ箱の中のようだ。こんな状態だけど少しだけワクワクする。


「このぬいぐるみ可愛い」


 自分より何十倍もの大きさのある真っ白でフワフワなクマのぬいぐるみに年甲斐もなくはしゃいでしまう。このフワフワ感が気持いい。


『敵、発見。捕獲します』


「へっ?ってぇええええ!?」


 可愛らしい声が聞こえたと思った瞬間、目の前のクマのぬいぐるみが急に立ち上がった。そしてクマの右腕が頭のギリギリをかすって通り過ぎる。何かが破壊された音を確認するかのように自分の左手を見ると、そこには西洋人形がグロテスクな感じで破壊されていた。


「やばっ!」


 捕獲というレベルではないそれに、絡まる足を無理やり動かし走る。可愛いとか言っている場合じゃなかった。あれがこの空間の敵なんだと、混乱する頭の中で理解する。


 辺りを見渡すと、色々な所に宝箱が見える。とりあえず、あれを片っ端から開けていこうとクマに注意しながら決心した。


「って、ないじゃない」


  決心してどのくらい経っただろうか。手当たりしだいに開けていった宝箱には何も入っていなかった。途中クマの攻撃に合い、右足を負傷してしまったが、どうにか動くからまだマシだろう。


「本当にあるの?」


 それさえ疑わしくなってくる。先にクマをどうにかしてしまおうかと、今度は武器を探す。走りながら武器らしい物はいくつか見つけた。おもちゃの剣だろうけど、何故か鋭さがあったそれは左方向のプレゼントボックスに刺さってる。


「とりあえず、あれを取りに行こう」


 クマさえどうにかすれば落ち着いて探しに行ける。嬉しいことにクマの動きは速くない。そのクマも見当違いな所で暴れていた。


「今のうちに」


 クマを警戒しながら、クリスマスツリーを登っていく。まさかこんな所で木登りをする羽目になるとは思わなかった。


「っしょ!」


 クリスマスツリーから積み木へと移動し一息つく。いったいこの空間に閉じ込められて何時間経つのだろうか。高い所から見るとある程度の広さはあるが、四面を白い高い壁に囲まれている。脱出は無理だろう。


「もっと、楽しい魔法が見たいんだけど」


 汗を拭いながら苦笑する。今はそんなわがまま言ってる場合じゃない。積み木の橋をゆっくり渡りプレゼントボックスまでたどり着けた。目の前にある剣はレイピアみたいな細身の剣だ。これなら私にでもどうにか扱えるかもしれない。

 ゆっくりと抜いたその剣は思ったよりも軽い。それ分威力はないかもしれないが、扱えないよりましだと思わないと。


「クマは」


 タイミングが良いのか悪いのか、クマは私を見つけたらしくこちらに走ってきていた。さて、剣技なんて知らないから取り敢えず振り下ろすしかない。


「狙うは右腕」


 私を狙って腕を伸ばした所を狙うしかない。そんな芸当できるかはわからないけど、やるしかない。


「後、もう少し」


 落ち着け、落ち着け。フワフワな外面と異なってドタドタと大きな足音で近づいてくるクマに狙いを定める。


「今だ!!」


 腕を伸ばして来た所を避けて、思いっきりジャンプして右腕を切りつける。


“ガキンッ!!”


「えっ!?うわっ!!」


 予想ではあの柔らかい腕を切り落とせるはずが、途中で硬いものにぶつかり弾かれて吹き飛ばされてしまった。


「予想外……」


 たまたま、吹き飛ばされた先がクッションだったから良かったけど、もう少しずれていたらおもちゃの兵隊の銃剣に突き刺さってる所だった。


 急死に一生ってこういうことを言うのかもしれない。


『バカ!よそ見するな!』


「えっ?」


 どこからか聞こえた声を理解するより先に、視界に入ったのは残り数センチで私の心臓に届くクマの鋭い爪だった。


(あっ、終わった)


ありがとうございました。次話こそ速く更新できるよう頑張ります。

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