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やってきたのは異世界人  作者: 如月 玲
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~閑話~

えー、今回は閑話です。読まなくても支障はないです。ちみっとR15です。本編も頑張って執筆しておりますので、お待ちください(早く書けよ

「ジル、ごめん。部屋干ししちゃうから洗濯物に扇風機向けて回してもらっていい?」


 台風のおかげで外干しできない洗濯物にゲンナリする。今日は久々に布団も一緒にと思っていたのにだ。天気予報何て最近見てなかったからなぁ。パンっと洗濯物を広げてハンガーにかけていると横から手が伸びてきた。


「何?」


「何じゃなくて、洗濯物貸せ。手伝ってやるから」


 ほらと、言いながら私の手から洗濯物を取っていく。ありがとうと言うと、クシャっと頭を撫でられる。それが気持ちよくてジルの方へ擦り寄っていく。


「ったく」


 頭を掻きながら、仕方ねーなと抱き寄せてくれるジルに笑が溢れる。幸せだなぁーと思いながら、ふとこっちに向かって回っている真新しい扇風機を見る。


「どうした?」


 クスクスと笑い出した私を変に思ったんだろうジルは首を傾げる。


「ごめっ、思い出し笑い」


 私の視線の方を確認したジルが一つため息をついて今度は頭を叩いてきた。どうやら何を思い出したのか、バレてしまったらしい。けど、仕方ないじゃない。今となっては笑い話なのだから。そう言って、私は懐かしいなぁと思い出す。



 それは、ジルがこっちの世界にまだ慣れていない時の話。



 その日は、ジルが来て溜まってしまっていた洗濯や掃除を片付けていた。たまにサボるとすぐこれだとため息をつく。とりあえず片付けたからお昼ご飯でも作ろうかなと、材料を取り出す。今日のご飯は、カレーにしよう。うん、お手軽万歳!そう思った時、視界の隅に最近増えたもう一人の住人が視界の隅に映り込む。


「ちょっと、ジル!ゴロゴロしてないで手伝ってよ!」


「俺はテレビを見るって仕事してるだろ」


 ソファーで横になってクッションを抱えているジルは堂々とそんなことを言い放ってきた。テレビの存在を知ってからテレビに夢中なのは頂けない。


「何、休日のお父さんみたいなこと言ってるの!」


「………ミコトお前馬鹿だろ?」


「なんでよ!?」


 いきなりのバカ発言に驚いてしまう。バカ発言をしてくれたジルはチャンネルを変えながらため息を付いた。


「俺、お前を育てた覚えねーけど」


「育てられた覚えもないわ!」


 むしろ、ジルに育てられたらどんな娘に育つことやら。もうジルは放置してカレーをさっさと作ってしまおうと、野菜を取り出す。


「ほら」


「へ?」


 右手から人参が消えたと思ったらいつの間にか横に立っていたジルの手に渡っていた。意味がわからず首を傾げていると、他にも出していた野菜たちを攫っていき、まな板の上へと乗せていく。


「手伝ってやるよ」


 仕方ねーなと笑いながら包丁をクルクル器用に回して野菜を切っていくジル。あぁ、何か悔しい。


「まだ、何か切るもんあるか?」


「って、もう切ったの!?」


 横でサラダを作っていると、既に綺麗に切られた野菜たちがボールの中に入っていた。何でこんなに手際がいいんだろうか。他にないことを伝えると、俺の仕事終了と伸びをしてまたテレビの元へと舞い戻ってしまった。これはテレビの時間制限を作るべきだろうか。って、あいつは小学生か。


 後は、圧力鍋で煮込むだけと、鍋に諸々投下してしまう。それにしても暑いなぁと手で顔を仰ぐ。換気扇を回しているからクーラーをかけるのは勿体ないし、かと言って窓を開けるとあの生暖かい熱気が入り込んでくるのが目に見える。


 何かいい手はないかなぁと思っていると、ジルのそばにいい物を見つけた。最近クーラーばかりで使ってなかったな。


「ジル、悪いんだけど、そこにある扇風機回して貰っていい??」


「ん?あぁ」


 扇風機の方へ近づくジルを確認して、これで良しといい匂いのし始めたカレーの続きへと戻る。


“バキッ!!”


「あ?」


 聞いてはいけない音と共に困惑したジルの声が耳に届いた。うん、今のはきっと幻聴に違いない。


「何でだ?こうか?」


“バキ……ボキッ!!”


「……ミコトー、扇風機壊れたぞ」


「何で、扇風機が壊れるのさー!」


 後ろを振り向くとそこには扇風機の首と頭がお別れしていた。うん、いったいどうやったらそんなことが起こったのだろうか。おかしい。扇風機ってボタン一つで動くと思ってたんだけど。どういうことよ、これ。


「こっちの世界はややこしいな」


「あんたがややこしくしてるだけでしょ!」


 本来ならボタン一つで動くんだからもの凄く便利な物なんだけど。まぁ、私が魔法を理解できないのと一緒なんだろうなと呑気に思ってる間に、さらに羽をもぎ取っているジルが視界に入る。


「とりあえず、もうやめてー!!」


 それが、私とジル。いや科学と魔法の世界との違いを目の当たりにした瞬間だった。



「懐かしいよねー。そう言えばその後どうやったか最新の扇風機、半額くらいで手に入れてたじゃない?あれどうやったの?」


 ソファーの上で後ろからジルに包まれるように座っている状態で、顔だけをジルの方に向ける。


「……ねぇ、何でそこで顔を違う方に顔を向けるわけ?」


 あからさまな態度に眉根がヒクつく。ジルの良い所は嘘をつかない所だけど、こういう時は大概ろくなことがない証拠だ。主に私にとってのだけど。


「言ってもいいが、機嫌悪くならない保証あるか?」


 こう言うことをわざわざ言うってことは十中八九、女関係のことだろう。別にこういう関係になる前の話だし、外に出たらジルがモテるのは初めての買い物の時でわかってる。頭では理解しているんだ。だけど、そう思ってもムカムカするのは仕方ないことであって。


「言う前から、そんな顔するな」


 どんな顔をしているのか自分でもわかるから今度は私がそっぽを向く。こんな嫉妬まみれな顔を見せるくらいなら隠す方がましだ。


「悪かった」


 耳元でする低音ボイスに体がビクッと震える。別にジルが謝ることでもないし。あの時、安くて良いのを買ってきてって言ったのは私だ。ジルからしたらそれを遂行しただけの話だし。


「って、何してるの!?って、んっ!!」


 浮遊感が襲い、天井が見えたと思った瞬間。唇に柔らかい物が当たった。数回軽く触れた、それは一気に深くなる。歯列をなぞられたと思ったら、今度は舌を吸われ、甘い痺れが体に走る。


「ひゃっ!!やっ!ジルっ!」


 唇は徐々に下へ降りていき、胸元で止まった瞬間鋭い痛みが走る。声が抑えられないと、手で口を覆い、声を殺そうとするとジルによって手が外される。何度か胸元を吸われ息が上がっていると、ジルが顔を上げる。


「わかるか?」


 何がとか、そんなこともう考えられない。そんな力の抜けた私の右手をジルは取ると心臓の上へとシャツ越しに誘う。その手に伝わるジルの心臓はいつもより早く拍動しているのがわかる。


「俺をこんなにさせられるのはお前だけだ」


「っつ!!」


 そんな顔は反則だ。何で、男のくせにそんなに色気があるんだとか、こういう時だけ微笑んでくるのは反則でしょとか思っていられない。


「だから、嫉妬なんかしなくていい。まぁ、そういう顔を見られるのも悪くないがな」


 撫でられる頬にさらに熱がこもる。返事もできず成すがままの私の服を器用に脱がしながら安心しろと囁く。


「お前以外の女、興味ない」


 あぁ、どうしてこの人は。


「なぁ、ミコト」


 こんなにも。


「好きだ」


 私を溺れさせてしまうんだろう。


ありがとうございました。

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