異世界人の困惑
ここまで読んでくださりありがとうございます。じれったり二人ですが、よろしくお願いします。
「で、本当に思考が停止して気絶したじゃと?アハハハ!傑作じゃないか!通りで、ジル坊が微妙な顔をして美琴を連れて降りてきたはずじゃ」
お腹を押さえながら思いっきり笑う瑠依姐さんを前に私は赤くなった顔を隠すように机に俯せる。このやり取りで分かった人は少なからずいると思う。そう、私は、ジルから告白された後、何とその場で気絶してしまったらしい。というのも、次に目が覚めた時は布団の上。当たり前のように隣で寝ていたジルが「起きたのか。俺はもう少し寝るから昼飯パス」とまるで何事もなかったかのように言うため、わかったと一言残しシャワーを浴びたまでは良かった。シャワーのおかげで蘇る数々の記憶にその場にいることがいたたまれなくなり、瑠依姐の所に行ってくると飛び出したのはほんの一時間前の出来事だ。
「どうしよう」
「どうしようも何も、ジル坊のことを好いておるのじゃろ?ならば、後は告白するだけじゃないか。これだから女子の悩みは困る。答えは決まっとるのに後押しして欲しいがために悩み相談してくるんじゃからな」
「いやいや、姐さんも女子でしょうが。ていうか、悩みの原因はそれだけじゃないのよ」
そう、私にはある言葉が引っかかっていた。それは、目の前にいる姐さんに告げられた言葉。お互いの気持ちが通じ会った時に消えてしまうかもしれないという可能性。それが私の心に引っかかっていたのだ。いつかは、向こうの世界に帰ってしまう。それが、いつか何て誰にもわからない。だけど、思いが通じ合って消えてしまうのだけは勘弁願いたいのだ。
「ジル坊が、異世界人だから悩んでおるのか?」
「なっ!?」
何で知ってるんですか!?と叫びそうになる。キセルを美味しそうに吸いながらニヤニヤしている瑠依姐は楽しそうだ。
「どうして知っておるのかは企業秘密じゃが。そうか。どうやら私は余計なことを言ったらしい。美琴のことじゃ、逆トリップの恋愛オチを気にしておるのじゃろ?なら、アドバイスをしておこう」
「アド…バイス?」
「良いか?きつい物言いかもしれんが、ジル坊はいつか元の世界に帰る」
ドキッと胸が鳴る。そうだ、向き合わなければいけないことはまだあった。ジルが元の世界に帰る時。それは、別れを意味してしまう。
「それが来るのは一年後かもしれんし、一週間後、もしかしたら、今この瞬間かもしれん」
「えっ」
ジルがいない。それを想像した瞬間、一瞬目の前が真っ暗になった。思い出させるのはジルが帰ったと思った数日前のことだ。
「二人に与えられている時間は限られておる。もしかしたら、想いが通じ合った時にジル坊は帰るかもしれん。だがな、美琴。想いを伝えきれないまま別れるのも辛い物があるぞ?」
決めるのは、美琴自身じゃがなという瑠依姐の言葉を聞くか聞かないかのうちに、いてもたってもいられなくなり、また来るわという言葉を残し瑠依姐の家を飛び出した。
「良かったのですか?瑠依様。あれでは告白しろと言っているようなものではないですか」
「決めるのはあの子自身だ。それに時間がないのも本当のことよ。時間は刻一刻と迫ってきておる。私はな、同じ轍を踏ませたくないのだよ。想いを伝えられず、それを未練がましく未だに抱えている私のようなね」
「瑠依様」
切なげに手元にあるお守りを握りしめた瑠依は、心配そうに自分を見る人物の方を向く。
「お前も、もう良いのだよ?私の世話などせず、そろそろ自由になっても。もう、刻印は消えてしまったのだろ?」
「いいえ。たとえこの胸の刻印が消えようとも、私はラインティアにいた頃より瑠依様のサーバントにてございます。嫌だと言われようともお傍から離れませんから」
綺麗な笑顔で言い切る子に瑠依は苦笑する。どんなことがあろうと私から離れなかったこの子に幾度助けられたことだろうか。
「それに、今私は先生の担当者でもあるんですよ!離れたくても離れられません!わかったなら次の原稿隠さず提出してくださいよ!締め切りまであと六時間切ってます!」
「本当、お前は優秀過ぎて困るよ。榊」
やれやれと引き出しからすでに出来上がっている原稿を取り出す。それと同時に一対のピアスが床に転がる。もう魔力はかすかにしか残っていない、それを大事に引き出しへと戻す。
(頑張りな。美琴)
ありがとうございました。実は異世界人だったこの二人。私も意外でした(おぃ。次回は少し早めにUPできると思います。お付き合いお願いします。




