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やってきたのは異世界人  作者: 如月 玲
20/50

異世界人と涙

いつも読んでくれてる方に改めて感謝の気持ちいっぱいです。

「……ぃ。…きろ。…しろ。この馬鹿娘が!!」


「いったぁ!!!」


 頭を襲った激痛に一気に目が覚める。どうやら、泣き疲れ果てて眠ってしまったらしい。一晩中起きてたんだからそれも仕方ないか。


「で?目は覚めたか?大馬鹿娘」


「誰が大馬鹿でって、ジルッ!?」


 バッと後ろを振り向くとそこには鬼の形相で立っているジルがいた。ジルと認識した瞬間、足が勝手に動き出す。


「グッ!」


「ほぅ。俺は汗だくになりながらやっとお前を探し出したと言うのにまだ逃げると?」


 いや、冗談です。逃げないので是非とも襟を離して欲しい。今度は別の意味で意識が飛びそうです。ギブアップと襟を掴んでいる手をバシバシ叩くと舌打ちしながらその手を離してくれた。その変わり目の前に座り込み袖を掴んでくる。そんなことしなくてももう逃げる元気はないというのにと、ジルを見て驚いた。


(こんなジル見たことない)


 その姿は汗だくでサラサラな髪もボロボロに崩れている。眠っていないのか目元に薄ら隈ができていた。


(まさか、こんなになるまで私を探してくれたの?)


「逃げないで、俺の話を聞くことができるか?」


 落ちてきた髪を掻き上げながら疲れた顔で尋ねてくるジルに小さく頷いた。それを見たジルは小さな溜息を付くとその場にドサッと完全に座り込む。


「あー、疲れた」


「ご…ごめん」


 慌てて鞄から温くなったミネラルウォーターを取り出して渡すと一気に飲み干していった。その疲れっぷりに申し訳なくて俯いているとポンッと頭に手が乗せられる。


「俺が好きでやったことだから気にするな。それに、俺も悪かったしな」


 その言葉にビクッと肩を震わすと、ゆっくり頭を撫でられる。無意識に拳に力が入る。


「あれから、ルイからも話を聞いた。アズサと話が食い違う所もあったが、正直どうでも良い」


「えっ?」


 最悪罵倒されると思った私は予想外の答えに顔を上げる。そこには苦笑しているジルがいた。


「どうせお前のことだ。俺があの話を聞いたら嫌いになるとか、罵るとかそんなこと思ったんだろ?」


 ばっちり思ってましたとも言えない私は目線を横に逸らすとジルから溜息が聞こえた。


「こっち見ろ」


 スッと頬に手を当てられ、顔をジルの方に向けられる。それでも、視線はジルの方を中々向けないでいると、ミコトと名前を呼ばれ、渋々目線を合わせる。


「お前がやったことは間違いじゃないだろ?」


「けど、愛華が」


「もし、お前がアイカの立場だったらどうした?」


 もし私が愛華の立場だったら?そんなの愛華に頑張って欲しいからちょっと辛くても、我慢して愛華を応援してるに決まってる。


「もし、それで自分が死んだとして、お前はアイカを恨むか?」


「そんな…、恨むわけない。むしろ、良く頑張ったねって思う」


 褒めることはあっても、恨むことはしない。でも、それは私の場合であって、愛華は違うかも知れない。


「俺は、アイカを知らない。けど、アズサやルイの話からアイカの性格は大体分かった。だから言えることがある。アイカはお前と同じで恨んでない。お前のためになりたかったんだ」


 スッとジルの手が目元を撫ぜる。涙と気づいた時、気づけばジルの胸の中にいた。


「ジルッ」


「気負うな。恨まれてもいないのにウジウジしてたらきっとアイカは怒るぞ。お前がやるべきことは前に進むことだと俺は思う」


「前に…進んでもいいの?」


 本当は前に進んでいるようで、全然進めていないことはわかっていた。いつもどこかで愛華の事が引っかかってたんだ。


「本当に恨んでないかな?怒って…ないかな?嫌われてないかなぁ?」


 今じゃ聞けないその答え。ギュッと目の前の服を握ると私を包む腕に力が入る。


「大丈夫。アイカはそんな奴じゃないだろ?むしろ前進しないお前を怒ってるんじゃないのか?」


 俺はそんな気がすごくするぞ?と苦笑するジルに零れる涙の量が増えていく。


「お前が心に溜めているものゆっくりでいい、全部この場で吐き出せ。受け止めてやるから」




 あの後、促されるまま、ジルが呆れるくらい泣きながら今までの想いを話した。その間、ずっとジルは相槌を打ちながら話を聞いてくれていた。そのおかげで、話終えた頃には胸のモヤモヤが取れてすっきりした思いだった。


「ボロボロだな」


「仕方ないでしょ」


 言われなくてもわかってる、昨日からの化粧はもうほぼ残ってない状態だし、髪だってボサボサ。泣き疲れて声もガラガラだ。ジルはクスクス笑いながら私のボサボサの髪を整えていく。


「落ち着いたようだし、帰るか。と言っても、道は忘れたけどな」


「そう言えば、どうしてここがわかったの?」


 髪をジルの好きにさせながら、辺りを見渡す。ここは、この街を一望できる丘の上。愛華が大好きだった場所であり、愛華が眠る墓がある所でもある。この場所を知ってる人は少ない。


「ルイに下まで送ってもらった」


 その答えに納得する。瑠依姐さんならこの場所を知ってるはずだ。どうせ、運転は榊さんにさせたに決まってる。


「なぁ、気になってたんだが、あれ何だ?」


「あれって、墓のこと?」


 榊さんの運転する車にはもう一生乗りたくないと思っていると、ジルは愛華の墓を指さし不思議そうな顔をしていた。墓と伝えてみるけど、ジルは墓?と首を傾げている。えっ?ここでも、異世界のズレがあると?


「ちょっと待って。亡くなった人が眠る場所はあるわよね?」


「何言ってんだ。人は死んだら眠らないだろ?」


「「………」」


 ジルの話曰く、異世界に墓というものはないらしい。仕方ないから墓について説明するとへぇと墓の前に立つ。


「どうしたらいい?」


「拝み方?なら、こうするの」


 墓の前に座り、両手を合わせる。日本人にとって常識のことだが、異世界人にとったら不思議なことらしい。


「ちょっと待て。それはいただきますだろ?」


「うん。それを説明しようとすると日がくれるから、おとなしく拝んでくれるとありがたいんだけど」


 さすがに、そこまで説明するのは面倒だし。わからないことが多すぎる。ジルは納得しない顔をしながらも拝みだした。さて、拝んでいるのはいいことだが何を拝んでいることやら。


「そう言えば、ルイが言ってたが、アイカがお前に口癖のように言ってたごとがあるらしいな」


 拝み終わったらしいジルは面白い話でも思い出したように言ってくる。さて、どれのことだろうか。あの子は結構色々な口癖があった。しかも、時期によって変わってくるからどれのことかわからない。


「ミコトに彼氏が出来たら真っ先に連れてきなさい。私が判断してあげる。私が認める男でないと許さないからってやつだ」


「あぁ、そう言えば、それだけは言い続けてたわね」


 飽きるくらい聞いたセリフ。愛華のお眼鏡に叶う人が中々いないおかげで私に彼氏ができることは中々なかった。けれど、それがどうしたというんだろうか?


「なぁ、ミコト」


「何?」


 真剣な表情で見てくるからドキッとする。一体なんだと言うんだろうか。


「俺は、アイカに認められる男だと思うか?」


「へっ?」


 待って、意味がわからない。今ジルは何て言った?いやいや、言ったことは良く聞こえた。愛華に認めれたらどうなるんだっけ?


「いやいやいや」


 どんな希望を抱いてるんだ私。顔が火照る。胸が煩いくらい早鐘を打つ。落ち着けと言い聞かせるのに体は言うことを聞かない。その間にも目の前までジルが来る。その藍色の瞳から視線を外したいのに外せない。スッとジルの手が私の頬を包む。その場所に熱が集まる。


「好きだ」


(思考が…停止する)


ありがとうございました。暗い部分から中々抜けられずどうしようか私自身悩んでいましたがどうにか抜け出せました。そんなんでいいのかよと思われる方いらっしゃると思いますが、許してください。先に進みたかったんです。よろしければ、次回もよろしくお願いします。


*10/23誤字訂正 1箇所

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