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やってきたのは異世界人  作者: 如月 玲
14/50

異世界人消失

ここまで読んでくださりありがとうございますw

 何かふわふわする。伴場さんから貰ったお酒を半分程度飲んだ辺りくらいから程よく酔い始めたのは覚えている。


「ちょっと、美琴カクテル飲んでたんじゃないの!?」


「のんだー!」


「飲んだー!じゃないって!って、抱き着くな!」


 一件目の店先で、一人じゃふらふらして立てない私は近くにいた志保に抱き着く。うん、一人で帰れる気がしない。


「彰人君でしょ!美琴こんなにしたの!何飲ましたの!?」


「紅茶っぽいやつー!」


「あはは。そうそう」


 あれは美味しかったー!と言うと、アホか!と頭を殴られてしまった。それは駄目だ。頭がおかしくなる。志保は、ポイッと私を女友達に渡すと、伴場さんに詰め寄っていた。


「そうそうじゃない!彰人君もしかしなくても、ロングアイランドアイスティー飲ませたんでしょ?」


「あっ、バレた?」


「ろんぐあいらんどー??」


 何だそれ?とどっかの島みたいな名前に酔った頭なりに考えてみるけど、何も思い浮かばない。志保はつかつかと私に近寄ってきて、ガシッと肩を掴んだ。


「いーい。あんたが飲んだのはロングアイランドアイスティーって言う、度数二十五度近くあるアルコールなの!このお酒はラム、テキーラ、ウォッカ、ジンで出来てるんだから。あんた、どんなチャレンジャーよ!」


「がんばったー!」


「頑張るな!」


 もう、あんたどうするのよーと言う志保に、さぁ?というと呆れられてしまった。あー、駄目だ。今度は、眠たくなってきた。布団をください。


「あらら、蓮見さん眠たそうだね。仕方ないから俺が責任もって、送ってくよ」


「彰人君それ、送りオオカミ宣言?堂々とやめて」


 伴場さんと、志保が何か言ってるけど、眠たいから、早く帰りたい。歩くのは大変だけど、どうにかなるさーと、ふらふら歩き始める。


「あっ、蓮見さん送るって」


 後ろから、誰か来るけど、止まったら歩けなくなっちゃうと前に進む。ボーっと前を見てると、少し先の電柱に誰かが寄りかかっているのが見えた。暗がりで良く見えなかったけど、少し近づくとはっきり顔が見えた。


「あー、ジルだぁ!」


 ブンブンと手を振ると、呆れた顔をしながらこっちに来た。目の前まで来ると、ジルは顔をしかめて、おいおいと言った。


「ミコト、結構飲んだな?」


「のんだー!ジル、お留守番はー?」


 暗くて見えずらいジルの顔を見上げると、今度は頭を抱えられた。頭でも痛いのだろうか?


「一人で歩けるのか?」


「むりー!」


「無理じゃねぇよ。ったく」


 元気に言うなと怒られてしまった。だって、歩けない物は仕方がないじゃないか。仕方ないから、頑張って歩こうっと意気込んだ時、後ろからグッと右肩を掴まれる。


「蓮見さん、こいつ誰?」


 怖い顔で来たのは、伴場さんだった。肩を掴む力が強くて痛みが走る。やめてと言おうとした瞬間、腕を引かれ、右肩の圧迫が取れた。


 良かったと思った次の瞬間、体がふわりと浮きあがる。倒れると思ったけど、倒れることは最後までなくて、気づけば誰かの腕に抱きかかえられていた。


「ジルー?」

 

 名前を呼ぶとジルの腕に力が入り、ギュッと抱きしめられる。暖かいその人肌が心地良くて、まだ寝ちゃダメなのに瞼が自然に降りてくる。


「おやすみ。ミコト」


 まるで魔法のようなその言葉とともに私はそのまま夢の中へと旅立った。






「あれ?ジルどこ行くの?」


 何故か荷物を両手に抱えて今にもどこかに行きそうな、ジルに声をかける。私の声に気づいたのか、ジルはこっちを振り向いた。


「時が来たみたいだから、帰る」


 目の前のジルは淡い光に包まれて今にも消えそうになっていた。そんな、本当にいきなりなの?と思って近づこうとすると、近づくなと言われた。


「何で?」


 その目は、私を冷たく見ていた。初めてこの世界に来たときでさえそんな目をしていなかったのに何で?


「まさか、お前があんな奴だったとは思ってもみなかった」


「何の…話?」


 もしかして、食事会と偽って、合コンに行ったことだろうか?いや、そうじゃないとは思うけど、もし、そうなら謝るから。けれど、ジルは違うと首を横に振る。じゃあ、いったい何よ?


「アズサから聞いた」


「……まさか」


 その言葉に数年前の過去が蘇る。梓から聞くようなことなんて一つだけだ。ドクドク煩い心臓を掴むように服を握る。


「まさか、ミコトがそんな女なんて思ってみなかった」


 後、もう少しで消えてしまうだろうというとこで、ジルはこっちに近寄ってきた。頭に手を乗せられる。ゆっくり顔を上げても、そこにある冷たい表情は変わることがない。


「お前とやっと離れることができて嬉しいよ」


 やだ、そんなこと言わないでと声に出そうにも、上手く声が出ない。自分でも泣きそうになるのがわかった。私の表情を見て、ジルが笑う。あぁ、やっぱり、冗談だったんだよね?そう思っていると、ジルが口を開いた。


「じゃあな、人殺し」


「いやー!!」



“ガバッ!!”


 はぁはぁはぁと乱れる呼吸を無理やり整える。目を開けて周りを見ると、そこは寝室で、さっきのは夢だと教えられる。時計を見ると、短針が七を指し示していた。服は昨日のままで、さっきの夢のせいか、汗を多量に吸い込んで濡れていた。


「いたっ!」


 立ち上がろうと頭を動かすと、ズキズキと痛みを訴える。飲み過ぎたと思いながら、今度はゆっくり慎重に動く。

 七時ということは朝ご飯を作らないといけない時間だけど、今日はジルにごめんなさいをして作って貰おうと心に決める。昨日の記憶はあいにく、曖昧だ。だけど、何となくジルが連れて帰ってきてくれたことは覚えていた。ご飯を頼むのと一緒に、連れて帰ってもらったお礼もしなければならない。


「あれ?」


 キッチンに繋がる扉を開けると、そこは薄暗くて人の気配が感じられなかった。じゃあ、どこだ?と考える。なぜか予備のベッドがないことがばれた日から一緒に寝ているため、他の部屋で寝ていると言うことはないだろう。シャワーかな?と思って扉の前まで行くがそこも薄暗い。


「買い物?」


 それにしては、机の上にスマホも買ってあげた財布も置き去りにされている。外に出る時は現代人なみにスマホを持ち出ているジルが忘れることはないだろう。


「まさか、帰った?」


 ソファーに座りながら思い浮かぶのはさっきの夢だった。ブンブンと首を振ると頭痛がひどくなる。けれど、今はそれどころじゃなかった。


 この家のどこにもジルがいないのは一目瞭然で、シンとする部屋にポツリといる私は何だか虚しく感じた。そんな時、ふと姐さんの言葉を思い出す。


“突然現れ、突然消えていく物”


 まさか、今回はそれが正しかったのだろうか。突然現れて、突然消えていく何てずるすぎる。お別れの言葉だって伝えてないじゃない。


「あ…あれ?何で?」


 頬を伝うそれに自分でも戸惑う。止めようと服で拭うが止まる気配がない。私の隣には当たり前のようにジルの服があって。部屋の隅には大量の男物の衣類。洗面所にはまだ真新しい歯ブラシとか置いてある。部屋の至る所にジルがいた痕跡がある。だから、これまでの生活が、夢でなかったのは一目瞭然だった。


 一人暮らしして七年。一人には慣れていた。それに戻るだけじゃないかと自分に言い聞かせる。けど、それでは納得できない自分がいる。たった数日。それだけのはずなのにジルヴェスターという存在がいなくなったという事実は予想していたよりもはるかに深く私の心に影を落とした。


 口の悪い奴がいなくなって清々したじゃない。そうでしょ?と自分に言い聞かせる反面、言葉の端に隠れたジルのさりげない優しさとかを思い出してしまう。


 今までだって、永遠の別れをしたことは仕事上何度もあった。大好きだった患者さんが亡くなったことだってあった。家族を看取ったこともある。けれど、これ程までにズシリと胸に落ちてくる苦しさは初めてで、どうしていいかわからない。


(ねぇ、ジル。悲しいとか、寂しいとか、そんなの全て通り越して…胸が苦しいよ)

ロングアイランドアイスティー、実際飲んだことはありません(汗 何か違ってもスルーしてください(笑 さてさて、これからどうなることか、次話もよろしくおねがいしますw

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