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やってきたのは異世界人  作者: 如月 玲
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異世界人の苦労

しばらく、ギャグが途絶えるかもしれませんが、おつきあいお願いします。もうこの二人がどう動いていくのか私にも不明です。

“ガチャン!!”


「あっ」


 自分の手からすり抜けて床に落ちて行った皿を見て、やってしまったと溜息を着く。薄かったその皿は簡単に割れてしまい、見る影もない。片付けなきゃと、破片を拾っていく。お気に入りだったのにと、大きい破片を拾った瞬間、指に痛みが走った。


「っつ!」


 一拍遅れて、人差し指から一筋の血が流れる。本当に、踏んだり蹴ったりだ。


「お前、馬鹿だろ?」


 血を止めないとなぁとボーっと指を見ていると、呆れ声でジルが声をかけてきた。私の指を見ると、眉間に皺をよせ、腕を引き私を立たせる。


「ほら、こっち来い。お前この間からおかしいぞ?」


 ソファーに座らされると、ジルは救急箱を取り出し、慣れた手つきで処置をしていく。それを見ながら、思い出すのは梓が現れた三日前のことだ。


 捨て台詞のように私に言葉を放った後、梓はジルに何か言い立ち去ったのを見送った私はその場に座りこんだ。それに、慌てて駆け寄って来たのはジルで、何か言われるかと覚悟していたのに、言われた言葉は大した言葉じゃなかった。


『立てるか?疲れたから帰って休むぞ』


 これだけ。詮索されなかったのは正直ありがたい。説明しろと言われても上手く答えられる自信は全くないし、どう説明したらいいかもわからない。あの日以来、まるで何もなかったかのようにジルは過ごしている。調子を取り戻せないでいるのは私だけだ。


「……はするなよ」


「えっ、何?」


 ボーっとしていた間にジルは何か言っていたらしい。聞き返すと、聞いとけよという目で見られてしまった。

 

「だから、あの女と何があったか知らねーけど、話したくなったら聞いてやるから、無理だけはするなよって話だ」


 パチンと救急箱を閉じながら立ち上がるジルに、うんと頷く。けれど、きっと話せないだろうなぁとどこかで思った。


“~♪~♪”


「電話?」


 誰からだろう?と音を頼りにスマホを探しだす。着信画面に書かれていたのはこの間やめた病院の同期だった。コールボタンをタッチし耳に当てる。


『ひさぁ!元気してる?』


 そこから聞こえたのは私とは正反対の元気な声だ。それに苦笑しながら、相手の顔を思い浮かべる。


「元気よ。それよりどうしたの?志保」


『それはなにより。ちょーっと、困ったことになっててさぁ、美琴にお願いがあるんだよね』


「何?私にできること?」


『もちもち。実はさぁ、今日の夜、私主催の合コンがあるんだけど、女子のメンツ一人どうしても集まんないんだよねー。だからさ、お願い!』


 彼氏と別れたみたいだし、丁度いいじゃんという志保に、またこれもどこから漏れたことやらと脱力する。ズルズルとソファーの背もたれに体を預けどうしようかなぁと天井を見る。


「どうした?」


 んーと唸っていると、救急箱を片付けたジルが戻ってきた。ジルもいるし、今回は不参加かなぁ。


「んー、友達が食事会に来ないかって言ってるのよ」


 さすがに合コンパーティーとは言えない。いや、言ったところで合コンパーティーと言う言葉が通じるとも思わないけど。


「行って来いよ」


「えっ?」


 やっぱり、不参加でと断ろうとした時、あろうことか、ジルがGoサインを出してきた。えっ、まじですか?


「気晴らしに行って来いよ。そして、ましな顔になって戻ってこい」


 プシュと缶ジュースを開けながら雑誌を見ているジルに、目をパチパチさせる。なるほど、ジルなりに気を使っているわけかと笑みがこぼれる。合コンパーティー自体は興味ないけど、久々に友達に会うと思えば良いかもしれない。


 電話口で何かを言っている志保に、行く旨を伝えると相当困っていたのか凄い勢いでお礼を言われてしまった。


 詳しい詳細を聞くと、時間も夜の七時からだし、場所も家から十分程にある居酒屋だった。これなら、嫌になったらすぐ帰れるだろう。ジルに場所と九時くらいには帰れる旨だけ伝え、今日は、嫌なこと何か忘れて楽しく飲み明かそうと準備を始めた。



 やっぱり来るんじゃなかったと思ったのは、始まって三十分をしない時だった。楽しく飲めると思ったのはどうやら期待外れらしい。


「美琴ちゃんって、看護師なんだって?凄いね。俺尊敬するよ」


「いや、今はしてないから」


 こんなのばっかり。志保の口から看護師と出た瞬間、何人かが声をかけてきた。何の再来だろうか。数年前の事を思い出しげんなりする。店員から飲み物を受け取った志保が近づいてきた。


「ねぇねぇ、どんな感じ?私頑張って、イケメンそろえたと思わない?」


「イケメンねぇ」


 声をかけてきた志保につられ、カクテルを飲みながらメンバーを見る。男女ともに五人ずつ。男は多分それなりにカッコいい方なんだろうけど、いかんせんここ数日ジルと過ごしているせいかイケメンとは思えない。ある意味困った状態だ。


「何々?これじゃあ、不服?あんたどれだけ理想高いわけ!?」


 いや、理想を高くした覚えはない。ただ、目が肥えただけだ。さっきからやたら話しかけてくる名前も忘れてしまった彼には申し訳ないが興味を惹かれないのは何故だろうか。


「美琴、もしかして拓哉のことまだ引きずってる?」


「いや、そんなわけじゃないけど」


 むしろ、家にいるジルが碌でもないことをしていないか心配してるくらいだ。まるで好奇心旺盛な子供みたいに機械を色々触ってくれるもんだから、故障寸前の物が増えている。やっぱり、早く帰った方がいいかもしれない。何か、そわそわしてきた。


「まぁ、忘れろとは言わないけど、さっさと次作っちゃいなよ」


 見当違いなことを言って席を離れた志保は、さっとこのメンバーの中でもカッコいい部類の男の所へ行ってしまった。それを見ていると、立ち代りに、見た目爽やかそうな男性が隣に座ってくる。さて、名前何だっただろうか?


「蓮見さんだっけ?飲んでる?」


「あっ、カクテルを。お酒強いほうじゃないから」


 そう言いながらストローでカクテルを混ぜる。飲もうと意気込んで来たけど、そういうテンションになれずに未だに一杯目を半分飲んだ程度だった。それに気づいているのかいないのか、男はそっかと言いながら近くにあったチップスを引き寄せる。


「蓮見さんって、自己紹介の時、話し聞いてなかったでしょ?」


「ぶっ!!」


 飲んできたカクテルを吹き出しそうになり、慌てる。確かに、自己紹介の時、鍵かけてくるの忘れたけど、ジルいるから大丈夫かなとか、違うことを考えていたのは確かだ。よく見てる人だ。私の様子がおかしかったのか隣でクスクス楽しそうに男は笑っている。


「その反応からしたら、ビンゴでしょ?じゃあ、あんまり合コンに乗り気じゃない者同士固まっとこうか?」


「えっ?興味ないの?」

 

 その以外な言葉に驚く。乗り気じゃないのは私くらいなもんだと思ってた。男は苦笑しながら口を開く。


「実はね。友達に無理やり連れて来られたんだ。だから、一次会で抜けようと思ってるんだけど、なんなら一緒に抜ける?」


 それは願ったりもしないことだ。この人の話だと、二次会もあるみたいだけど、そこまで参加する気分じゃない。一人なら抜けにくいけど、二人なら話は別だ。


「その話に乗るわ」


「なら、決まり」


 志保には悪いけど、ここまで参加すれば文句ないだろう。抜けられると思った瞬間、気が楽になった。


「ちなみに聞いてなかっただろうから言うけど、俺の名前は伴場ばんば 彰人あきと。よろしく。蓮見さん、飲み物なくなりそうだけど、どうする?」


 よろしくと言いながらいつの間にか空になっていたグラスを見る。そう言えば、手持ち無沙汰になっていた時に飲んでいたのを思い出す。


「伴場さんは、何飲んでるの?」


「あぁ、これ?飲んでみる?」


 はいと当たり前のように渡され少し戸惑う。間接キスとか気にするのは私だけだろうか。まぁ、いいかとグラスに口をつけ飲み込む。味は紅茶風味って感じだ。


「美味しい」


 思ったよりも飲みやすい。ついつい二口目を飲んでしまいハッとする。しまった、これ人のだった。


「気に入ったなら飲んでいいよ。飲みかけ渡した後で言うのもなんだけど、俺その味にちょっと飽きてきた所だったから」


「あ…、ありがとう」


 まだ半分以上残っているそれに、まぁ、いいかと貰うことにする。気に入ったその味にチップスをつまみながら飲んでいく。


「お酒弱いならほどほどにね」


「ん?わかった」


 その時は、そのままの意味だと思い、深く考えなかった。だから、隣で伴場さんが呟いた言葉に気づくことができなかった。


「きっと、それだけ飲んだら大変なことになるだろうから」


(うー、もう一杯!)

(美琴、飲み過ぎ!)

ありがとうございました。イケメン(もう言い方古いか)だらけの合コン行ってみたいなと思いながら書きました(笑)次話もどうかお願いします。

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