異世界人の帰界方法
ページを開いていただきありがとうございます!暇つぶしにどうぞw
目を覚ますと豪華な朝ご飯が出迎えしてくれました。
「って、どうしたの!?」
「作った」
「嘘!?」
目の前に並ぶ料理の数々に唖然とする。カリカリに焼かれたトーストに、卵料理、チーズや、ベーコン、ソーセージなどなど、いったい誰がこんなに食べるんだってくらい並べられていたのだ。うん、美味しそう。
「いいから食え」
ほらと、無理やり座らされる。お腹が空いていた体は正直でおいしそうな匂いにキューとお腹がなる。いただきますと、目の前の卵料理に手を付ける。
「うわ!ふわっ!うまっ!?」
何だ、これと口に入れた物を咀嚼する。正直すごくおいしい。ふわふわの卵料理に感動したのは初めてだ。
「えっ、いつから魔法が使えるようになったの!?」
「まだ寝ぼけてんのか?」
さっさと起きろとパシッと頭を叩かれる。だって、こんなにおいしい料理をジルヴェスターが作った何て思いたくない。悔しすぎる。
「ラインティアって、料理も魔法で作るんじゃないの?」
こう、パチンとマネをしてみる。それに、ジルヴェスターはコーヒーを飲みながらあぁと口を開く。
「魔法で混ぜたり、炒めたりとかはできるな。けど、俺は昔から手作りしろって言う、うるさい奴がいるから、魔法で作らないけどな」
「魔法と、手作りじゃ何か違うわけ?」
ジルヴェスターにわがままを言える奴がいることにも驚きだけど、手作りしていることにさらに吃驚だ。
「味が同じになるからな。飽きるんだよ。それが嫌な奴は手で作ってるけど、数は少ないだろうな」
「ふぅん。で、何でジルヴェスターは朝ご飯作ってくれたの?」
凄くおいしいから嬉しいんだけど、どうも裏がありそうで怖い。そう思っていると、ジッとこっちを見ているジルヴェスターに気づいた。何を訴えたいの、その眼は。
「朝、俺が言ったこと覚えてるか?」
「朝?」
何の話だっただろうかと、首を傾げ記憶を呼び覚ます。しかし、思い浮かぶのは残念ながら目の前の男の寝顔だけという本当に残念な結果だ。
「名前」
思い出せないのがわかったのだろう、ジルヴェスターはポツリと呟いた。その言葉に、そう言えばと思い出す。
「ジル??」
「正解」
どうやら当たっていたらしい。てっきり寝ぼけて言った言葉だと思ってたわ。私の答えに満足したらしい、ジルはトーストを食べながら意地悪そうな顔をする。
「ちなみに、これは、お前を太らせようと思って作った」
「虐めですか!?」
何を言い出すのだろうか。このお腹にさらに贅肉をつけろという。どうりで少し脂っこい物が多いはずだ。
「まぁ、それは良いとして」
「良くないわ!!」
悲しい現実を受け止めようとしていたら、さらっと流されてしまった。これは、一度話をしとかなければならない。そして、今度は何だ?と訝しげに見る。
「この辺りに図書館あるか?」
「えっ、図書館?」
また変なことを言い出すのではないかと思ってた手前、図書館という言葉にキョトンとする。文字の勉強でもしたいのだろうか、勉強熱心な奴。
「図書館なら、車で十分の所にあるけど、どうしたの?」
「あー、そろそろ真面目に向こうに帰る方法を探そうと思ってな。異空間転移魔法とか、それに近い資料を探したい。お前のあの部屋にある本棚にそんな本見当たらなかったしな」
「ブハッ!見たの!?あの部屋!?」
「見た。あの部屋でどうやって寝るんだろうな。なぁ、ミコト?」
噴き出したコーヒーで汚れた口元を拭きながら、横を向く。隠したいことは全てばれているらしい。気まずいことこの上ないじゃないか。
「ほら、向こうに帰る方法探すんでしょ?」
「お前な……」
無理やりすぎる話題転換に、ジルは呆れた顔をする。はい、すみませんでした。ここはおとなしく謝ろうじゃない。
「でも、図書館に言ってもそういう本ないと思うんだけど」
異空間何だったか忘れたけど、異世界自体おとぎ話のようなものだ。そんな本があるとは思わない。
「なら、他に手がかりが見つかりそうな所があるか?」
そう言われるとかなり、困る。昔読んでいた逆トリップの話の主人公は一体どうやって帰ってただろうか。何か、しれっと帰ってた記憶しかない。学生時代に読んでいた話だし、記憶も霞んでしまってる。
昔の記憶を、遡っているとある人物が思い浮かんだ。
「あっ、そうだ。いたいた、詳しい人」
ポンッと手を打つ。最近連絡してないが、今の時間なら手が空いてるかもしれない。思い立ったらすぐ行動と、何だかんだ全部食べてしまった朝食の皿を片付ける。
「どんな奴なんだ?」
「んー、学生時代の先輩で、今は小説家しながら占い師もしてる人」
「わかんねーよ」
うん、言ってる私もわからない。けど、本当のことだから仕方ない。名前は広江 瑠依ファンタジーを中心に小説を書いている人気作家だ。ただ、ちょっと、変わってるのがネックだけど。
「それより、こっち来て。瑠依姐さん捕まえるの一苦労なんだから」
洗った皿を適当に乾燥機に放りこみ、ジルを連れてパソコンがある部屋に行く。ジル曰く、私が寝床と偽っていた部屋だ。
パソコンの電源を入れ、起動まで数十秒。その間に、ジルにパソコンが何かを簡単に説明する。不思議そうにしていたけど、まぁ、こればっかりは仕方がない。
メッセンジャーを開き、ログインしている人たちを見る。朝から暇人な友達の名前を見ながら目的の人物を見つけ、ログアウトされる前にクリックして捕まえる。後は、テレビ電話に設定して完成だ。
『おや、久しいね。どうしたんだい?』
「ね…姐さん相変わらずセクシーですね?」
パッと映し出されたカメラからはスラッとした肢体に単を一枚着た、セクシーなお姉さんが現れた。その姿を一言で表すなら妖艶だろう。何で私の周りにはこんな人たちが多いんだろうか。私にも切実に分けて欲しい。
『褒め言葉と受け取っておこうじゃないか。で?何か用があるんだろう?』
「そうそう、姐さん昔、逆トリップの話書いてたよね?逆トリップのことについて聞きたいんだけど」
『逆トリップ?別にいいけど、どうしたんだい?まさか物書きにでもなろうとしてるんじゃないだろうね?およしよ、才能ないんだからさ』
「凄い言われようだな」
「本当のことだけどね」
昔姐さんのマネをして小説を書いてみたが、その文才のなさに皆に笑われたことがあった。そのことを思い出してげんなりするが、今はそんな話じゃない。
「違う、違う。逆トリップをしてきた主人公が自分の世界に戻る方法ってどうだったかな?って思い出せないから聞いてみようと思って」
『また唐突な話だね?どうしたんだい?まさか、カメラの端にチラチラ写ってる坊やが異世界から来た何ていう面白い話じゃないだろうね?』
あはは。笑えない。何で、変な所で勘が鋭いのだろうか。ジルはジルでほぉとか感心してるし。少しは助けて欲しいんだけど。
『まぁ、いいさ。戻る方法何てセオリー的にはそう数はないさね』
そう言いながら、一本一本指を立てていく。
『一つは、突然現れ、突然消えていく物。
二つ目は、何らかの事象、例えば目の前に光が現れてそれに吸い込まれ異世界に来て、再度その光に飛び込むことによって戻る物。まぁ、この種類の事象は考えたら限がないさ。簡単に言えば、異世界に来た時と同じことをこっちの世界でもしたり、起きたりすれば良い話さ。
そして、三つ目は召喚物。これはこっちの世界で何か起こしたことで異世界から人を呼んでしまう物。この場合異世界から大体誰から呼び戻してくれるはずさ。
最後はあまりないし、私も好きじゃないから書かないけど、恋愛オチ物くらいさ』
「恋愛オチ物?何それ?」
読んだことのない話だ。あれだろうか、結局恋人同士になって、相手が異世界に戻らない話。あれなら数は少ないが読んだことがある。それを伝えると、瑠依は手を振った。
『違うに決まってんだろう。お互い思いが通じ合った時に消えてしまうっていう何とも言えない話さね』
その言葉に何故か胸がドキッと鳴った。何だろう?変なのと思ってそれを無視する。けれど、どこかわだかまりが残ったのは私だけの秘密だ。
(で?坊やはどれがお望みだい?)
(どれも、いまいちだな)
(って、姐さん!?)
ありがとうございました。次話もよろしくおねがいします!
*9/6 文章訂正