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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
第2章 ユーレイと魔法と黒い紐

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番外編 王都の教会

―アルテト司教視点―


 コンコンコン。


「アルテト司教、失礼します。ミーアスです」


「どうぞ」


 私の返事を受けて執務室の扉が開き、新任の護衛騎士の一人であるミーアスが入ってくる。チラッと彼女に目を向けるが、すぐに手元の書類へ視線を戻し、署名をした。


「忙しそうですね」


 ミーアスが、手に持っている書類を差し出しながら言う。それを受け取り、内容を確かめてから署名した。


「裏切り者が多数出ましたので、そのしわ寄せですよ」


「奴らは話したのですか?」


 ミーアスの問いに思わず眉間にしわを寄せる。


「話していないのですね」


「えぇ、余計な事は話すのに、肝心な事は一つも口にしません。そろそろ王家に引き渡す話も出てきています」


 ここは女神を信仰している拠点の教会。その場所で暴力や薬を使った尋問などできませんが、王家が管理する王城は違います。おそらくあちらに移されれば、奴らも口を割るでしょう。


「そうですか。アルテト司教、宝玉はどうですか?」


 私がミーアスの問いに首を横に振ると、彼女は肩を落とした。


 一年ほど前、『女神の祈りの間』で大切に保管されていた宝玉が、侵入者によって割られてしまった。調査の結果、魔王を崇拝する組織がある事が発覚した。また教会内に裏切り者が多数いる事もわかった。捕まえた裏切り者たちを尋問しているが、良い報告は来ていない。


 女神の祈りの間で守られていた宝玉は、女神さまの声を届ける、とても大切な教会の宝です。その宝玉が割られた事で、私たち司教の込めた聖なる力や、前聖女さまが込めた神聖力の大半が失われてしまいました。


 そのせいで、女神さまからの神託が正しく届かなくなり、誕生したはずの聖女さまの行方がわからなくなってしまいました。密かに私と私の護衛騎士たちで捜索していますが、見つかっていません。


 宝玉が割れた事は、いつか公表しなければならないでしょう。それは、隠し通せる事ではありませんから。

 

 ただし、聖女さまの行方がわからない事だけは、決して公表できません。もし下手に公表すれば、宝玉を割った異端者たちが聖女さまに危害を加えるかもしれませんから。聖女さまになりすます者も現れるかもしれませんしね。


「アルテト司教、フォガス先輩を最近見かけないんですけど、どこにいるか知りませんか?」


「フォガスにはある仕事をお願いしたので、王都にはいません」


 私の返事に、ミーアスはわずかに動揺した。


「フォガスに用事がありましたか? 伝えておきますよ」


 彼女の動揺には気づかぬふりをして、優しく微笑んだ。


 フォガスは私が信用している護衛騎士の一人です。その彼の動きが気になるようですね。どうしてでしょうかね?


「いえ、大丈夫です。最近、見かけないので心配になっただけですから」


「そうでしたか」


 ミーアスに微笑んで頷くと、彼女はホッとした表情を見せた。

 

 コンコンコン。


「フォンです。失礼します」


 返事をする前に執務室の扉が開き、フォンが部屋に入ってきた。彼の珍しい態度に、目を見開く。


「ミーアス? 報告ですか?」


「いえ、書類の提出です。終わりましたので、私はこれで失礼いたします」


 ミーアスは、私に向かって深く頭を下げると、フォンには軽く頭を下げて部屋を出て行った。ミーアスの後ろ姿を見送っていたフォンが、私に視線を向けた。


「もしかして邪魔をしてしまいましたか?」


「いえ、大丈夫ですよ。ですが、彼女の身辺と交友関係を調べてください」


 私の返事を聞いたフォンは、わずかに目を見開いたが、すぐに頷いた。


「わかりました。すぐに手配します。こちらをどうぞ」


 フォンが私に向かって一枚の紙と封をされた手紙を差し出した。


 「ありがとう」


 両方を受け取り、まずは紙に書かれた内容に目を通した。


「やはり、まだ裏切り者がいましたね。実行したのは誰でしょうか?」


 受け取った紙には、牢に収容されていた裏切り者の一人が死亡した事を知らせる内容が書かれていた。


 教会内の裏切り者については、バルス教皇が調べましたが、もう一度私が調べ直すように言われました。新年度になり、新しい護衛騎士や職員が増えたからでしょう。


 ただ私は今、聖女さまの捜索中ですので、それほど調査に時間は取れません。そのため、捕まえていた裏切り者を利用したところ、見事に引っ掛かってくれました。


「教会の警護に当たっている騎士です。今は泳がせています」


「そのまま泳がせて、誰と接触するのか調べてください。他の裏切り者たちは、王城へ移送する手配をお願いします」


「わかりました。どのルートを使いますか?」


 フォンの質問に少し考える。


「来るでしょうね?」


 生き残った裏切り者たちを殺すために。


「間違いなく」


 フォンも確信しているのでしょう、私の言葉に力強く頷いた。


「二つの馬車を用意して、一つは最短ルート。もう一つは大通りのルートを。そして二つとも囮に使いましょう。表の護衛は通常通り、密かに護衛する者たちを選んで守らせてください。襲ってきた者たちがいたら、なるべく生きたまま捕まえて欲しいですが、ムリはしないようにと伝えてください。実際の移動は地下通路を使い、王城まで移送させます」


「わかりました」


 受け取った手紙の封蝋を見る。そこには、フォガスに渡しておいた封蝋印が使われていた。


「フォガスからですね」


 手紙を開けて、内容を確かめる。


「ランカ村の教会は無事に修復できたようです。あとは、確認するだけだとあります」


「そうですか。かなりめちゃくちゃになっていたので、もっと時間が掛かると思いましたが、早かったですね」


「腕のいい大工がいてくれたお陰ですね」


「あの、もう一つの方は?」


 フォンが微かに心配そうな表情を浮かべる。


「『お二人とも問題なし。また、これ以上の報告はなし』と書いてあります」


 私の言葉を聞いたフォンは、息を呑んだ。


「こんな時に『見える』者が見つかるなんて。女神さまの慈悲なのでしょうか?」


 フォンの言葉に、私は小さく頷く。


「そうなのかもしれませんね」


 宝玉が割れてしまった時に、女神さまと親しい精霊の見える者が現れるなんて。


「ですが、『報告はなし』という事は……」


 精霊は「見える」者以外を受け入れなかった、という事ですね。


 残っている文献や、「見える」者が残した手記を読むと、精霊は人間をあまり好まない事がうかがえます。特に、教会関係者を強く嫌う精霊たちもいるようです。

 

 教会に残っていた日誌や司教たちが残した手記や走り書きからは、精霊を害した記録などはありません。だからといって、精霊を害した事がないとは言い切れませんよね。記録しなかっただけなのかもしれませんし、書かれた物を処分した可能性だってありますから。


「どうしますか?」


「静観するしかないでしょうね」


 精霊が拒否している以上、我々が近づく事はできません。


「フォガスが、彼女と良い関係を築けているといいのですがね」


 手紙を読む限り、期待できそうですが。


「私を殺したユーレイは今日もやかましい」を読んでいただきありがとうございます。

「番外編 王都の教会」ですが、修正する前の設定で書いている事がわかり、2月23日に修正しました。

大変、申し訳ありません。

ほのぼのる500

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