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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
私を殺したユーレイと、一緒です。
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2話 死にたくない!

『起きて! 起きて! また死んじゃうから!』


 うるさい。また死んじゃうって何? あれ? 苦しい。


「くっ、うっ」


 えっ、誰かが私の首を絞めている? ウソ、本当に死んでしまうかも……死ぬ? 私が?


「死んでたまるか!」


『起きた~。大丈夫? 急に苦しみだしたから? あれ? まだ苦しいの?』


 目の前をユーレイが通り過ぎるけど、今は無視! そんな存在より、息が苦しい。首が絞まる。


「な、にが?」

 

 誰かに首を絞められている。でも、誰もいない。


「どう、なってる、の?」


 もう一度、首を絞める原因に手を伸ばす。でも、私の手は何も掴まない。

 

 本当に、このままだと死ぬ!


「イヤ! 死にたくない!」


 首を絞める原因が見えない、触れない。どうしたらいいの?


 ギュッ。


 首の絞まりがきつくなる。これはやばい。


「くっ」


 首をかきむしるが、やっぱり何も掴めない。


 くっそう、このままでは本当に終わる!


 首をもう一度かきむしる。


 ここに何かある。絶対にある。そう、絶対にあるんだから!


 ドクン。


 体が熱くなる。

 

「はっ」


 見えないという事は、ユーレイだろう。私の霊力レベルは弱いから、触れないはずなんだけど。


「うぅっ」


 目の前の何もない空間を睨む。きっとここにユーレイがいる。絶対にいる!


 ドクン、ドクン。


 心臓の脈打つ音が聞こえる。どんどんと、体が熱くなっていく。


「あっ」


 目の前に黒い紐が見えた! 違う、縄だ!


「これか!」


 目の前にある黒い縄を両手で掴む。あとは、ユーレイを見つければ……。


 く、くる、しぃ。


「ダメ」


 目が霞んできた。縄を何とかしないと……。


 両手で持っていた縄を左右に引っ張る。


「くっ……」


 手に力が、入らない。でもここで諦めたら、死んでしまう! それは絶対にイヤだ!


「切れて~」


 ドクン。


 両手がカッと熱くなる。


 ブチン。


 切れた!


「ごほっ。ごほっ」


 咳き込むと、誰かが背中をさすってくれた。


「あり、ごほっ、がとう。ごほっ」


 少し落ち着くと、両手を見る。爪の先に血が付いている。きっと私の首は今、酷い事になっているだろう。


「あれ? ない?」


 私の首を絞めていた縄がない。しっかり握っていたのに。

 

「消えた……」


 やっぱりユーレイの仕業だったのかな? でも、どうして?

 

 少し戸惑いながら、大きく深呼吸する。


「えっ?」


 部屋を見渡して、固まる。


「……どこなの、ここは」


『さぁ? 俺にもわからない』


 声が聞こえた方を見る。さっき、目の前を通り過ぎたユーレイだ。


「あれ?」


 ユーレイの顔を見る。どこかで見た事がある。どこでだっけ?


『何? 俺の顔に何か付いているのか?』


 ユーレイが自分の顔をぺたぺたと触る。そして首を傾げて私を見た。


「あっ思い出した! 私を殺したユーレイでしょ!」


『あの時は、申し訳ありませんでした!』


 ユーレイが、目の前で土下座する。違う、したように見えた。なぜなら、目の前にいるユーレイは腰までしかない霊力レベル一の姿だったから。


「あれ? 前に見た時は完全体だったよね? それなのにどうして今は霊力一なの?」


『完全体って何?』


 私の呟きに不思議な表情をするユーレイ。


 コンコンコン、ガチャガチャ。


 扉を叩く音と開けようとする音に、飛び上がる。慌てて部屋の扉に視線を向けてホッとする。


 良かった、扉には鍵がかかっているみたい。


「リーナ? リーナ? 叫び声が聞こえたけど、どうしたの? リーナ?」


 リーナ? 部屋の中を見渡す。私しかいない。目の前にユーレイはいるが、これは除外してもいいよね。


「リーナ? 鍵を開けてちょうだい? どうしよう何かあったのかしら?」


 私しかいないという事は、私がリーナなのかな?


「大丈夫」


 私がリーナなら、まずは安心させた方がいいよね。 鍵を壊して入って来られても困るし。


「リーナ? でも叫び声が聞こえて」


「ごめんなさい。怖い夢を見て、叫んでしまったみたいなの」


「そう? 本当に大丈夫?」


「うん。大丈夫よお母さん」


 えっ? お母さん? お母さんって、この声の人? どうしてわかったの?


「そう、良かったわ。何か飲み物でも持って来ようか?」


「いいえ、もう寝るからいらないわ」


「わかったわ。お休み、リーナ」


「うん。お休みなさい、お母さん」


 扉の前から人の気配が消える。それに大きなため息を吐く。


 誤魔化せたのかな? それより、お母さんという言葉が自然に出た。


「そうか、体が覚えているんだ。もしかして私、リーナという少女に憑依したの? でも、どうして?」


 傍を浮遊しているユーレイに視線を向ける。霊力レベルが一だから、周りの影響で勝手に浮遊しているみたい。

 

「これも、変なのよね」


 私が死んだ時に見た彼は、完全体。足の先まであったし、何より色付きの服を着ていた。それがどうして、今は白い服に腰までの姿なの? 霊力がなくなる話は聞いた事がない。でも現実問題として、目の前のユーレイは完全体から今の姿に変わっている。


「どこで霊力を失ったの?」


『悪い。君……リーナでいいのかな?』


 たぶん私がリーナなのだろう。両手を見る限り、本来の私の姿ではない。だって、どう見たって子供の手なんだもの。


「たぶん」


『リーナの言っている霊力が何かわからない』


 霊力がわからないという事は「ユーレイが見える者」ではなかったという事ね。


「霊力は魂が持っている力の事よ」


『魂って、死んだら体から出てきた物だよな?』


「そう。体は、存在していた世界に借りている物なの。だから、その世界で鼓動が止まると魂は外に押し出されるのよ」


『借りている物? 俺の体だろう?』


「心臓が動いている間はそうね。でも心臓が止まって死んだ瞬間から、体はあなたの物ではなくその世界の物になるの」


『その世界、つまり地球の物って事か?』


「そうよ。借りていた物を返して、また新しい体を借りて世界に誕生するの。もしかしたら、別の世界に移動するかもしれないけれど」


『別の世界? 今のように?』


「いいえ、これは違う。この世界にとって私たちは、予定外の存在だと思う」


『どうしてそう思うんだ?』


「だって、この世界が認めた存在なら体を借りられるはずだからよ。でも、私はリーナという少女に憑依してしまっているし、あなたもユーレイのままだから」


『つまりこの世界が認めた存在ではないから、体を借りられなかった。という事か?』


「そうよ。ただ、私に何が起こったのかわからないから『たぶん』が付くけどね」


『そうか。なぁ』


「何?」


『どうしてそんな事を知っているんだ? そんな話を、聞いた事はないんだけど』


「私の家は『家を守る神様を祭る神社』なの。そのせいか霊感の強い家族が多かったのよ。霊能者として仕事をしている祖母や親戚もいたしね」

 

『霊感体質?』


「そう呼ばれる一族だと思うわ」


『リーナも?』


「私は家族の中でも霊力レベルが弱くて、見る事しか出来なかったわ。ユーレイの霊力レベルが二以上だと声も聞こえたけどね」


 見るだけで祓う事も出来ないから、本当にいろいろあったわよね。ユーレイに見える事がバレると、付いて回られたり。声が聞こえるとわかったら、時間帯など気にせず話しかけてきたり。仕事中だろうが、睡眠中だろうが、まったく気にしないんだから。本当に迷惑な存在だったわ。


『だ、大丈夫か? すごく恐ろしい顔になっているけど』


 ユーレイがポンと私の肩に手を置く。


「大丈夫よ。いろいろ思い出して……えっ?」

 

 ユーレイが触れている肩を見る。


『どうした?』


 どうしたって、なんで? どうしてこのユーレイは、私に触れるの? 私は、霊力レベルが弱くて「見る」だけのはずなのに。そしてユーレイはどう見ても霊力レベル一なのに。


 肩にあったユーレイの手を掴む。


「触れる」


『何? 何? 怖いんだけど』


「触れるの」


『うん、それはわかる。リーナが握っている手は俺のだから』


 困惑した表情で私を見るユーレイ。


「私は霊力レベルが弱くて『見る』事しか出来ないはずなのに触れるの!」

 

 どういう事? 霊力レベルが強くなった? どうやって? 時々、何かの拍子で霊力レベルが強くなると聞いたけど。もしかして憑依した事で強くなったの?


「何が起きているの?」


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