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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
第3章 番外編 王都と教会
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101話 手紙

―教会の司教 アルテト・ルーグ視点―


 馬車の御者に合図を送ると、馬車のスピードが少し落ちる。


「どうかしましたか?」


 私の乗っている馬車の護衛をしていたフォンが馬車に近付くと、私は窓を開けた。


「朝からずっと走り通しなので、休憩をしましょう」


「わかりました」


 私の言葉にフォンは頷くと、前を走っていた護衛騎士に手で合図を送った。しばらくすると、馬車は完全に止まった。


「アルテト司教、どうぞ」


 馬車の扉が開くと、フォンが手を差し出す。


「ありがとう」


 フォンの手を借りて馬車を降りると、固まった体をほぐすように全身を動かす。

 

「大丈夫ですか?」


 傍に来たタバロの問いに、私は肩を竦める。


「年ですね。前回の視察ではこれほど疲れなかったのですが、今回は少しきついです」


 今まで馬車の乗り降りに、護衛騎士の手を借りた事はありません。でも、視察が四ヶ月を過ぎたあたりから、足が疲れやすくなり、少し不安を感じる事もありました。フォンは私の変化に気づいたのでしょう、そのあたりから馬車の乗り降りの時に手を差し出すようになりました。最初は驚きましたが、さすがに視察中に怪我などしている場合ではありません。ありがたく、フォンの手を借りる事にしました。


「もう少しゆっくり進みますか?」


 タバロの問いに、私は首を横に振ります。


「いいえ、大丈夫です。急ぐ必要がありますから」


 視察だけでしたら、ゆっくり進む事もできます。でも、今回は聖女さまを見つける事が主です。だから、ゆっくり進んでいる余裕などありません。


「どこにいるのでしょうね」


 フォンの呟きに、タバロも神妙な表情で頷く。


 視察に出発して二日後に、私は護衛騎士たちに今回の視察は、聖女さまを見つけるための目くらましだと説明した。最初は少し驚いた護衛騎士たちだが、すぐに理解を示し協力してくれる事になった。


 そうやって始まった聖女さまの捜索は、全く進んでいない。村や町に着くと、私は教会に赴き、牧師や教会の運営に関わっている者たちから話を聞いた。同時に、数字に強い護衛騎士たちが、教会運営費が正しく使われているか、教会の管理をしっかり行っているかなどチェックする。私と数名の護衛騎士が教会の視察を行っている間に、残った護衛騎士たちは村や町のあちこちに散らばり情報を集めた。


 その結果、不正をしていた牧師と、教会を私物化していた貴族など、教会の問題を見つける事はできた。だが、聖女さまに関する情報は、全く見つからなかった。


「次は、トラス村でしたね」


 「ト」が付く村ですが、聖女さまはいるでしょうか?


「はい。前回の視察で、牧師が運営費を横領している事が発覚したので、牧師が変わっています」


「そうでしたね。トラス村を管理している貴族は、タンリガ村と同じでアーオス伯爵家でしたか?」


 タンリガ村の教会に勤める牧師は、アーオス伯爵家と上手に付き合っているよです。そういえば、アーオス伯爵家は後継者問題が起こっているという噂が流れていました。それが本当なら、牧師に巻き込まれないようにと: 注意したほうがよいでしょうか?

 

「そうです。でも実際に管理しているのは、アーオス伯爵家の分家です」


 フォンの説明に頷く。


「トラス村に着いたら、すぐに視察に取りかかりましょう。アーオス伯爵家に勤めている者から、視察の情報が流れているかもしれません」


 トラス村に、聖女さまがいてくれればいいのですが……。


「「「「「わかりました」」」」」


 私の周りにいた護衛騎士たちは頷くと、トラス村に着いたあとの動きについて相談を始めた。


 視察を始めてすでに九ヶ月。教会の問題を解決しながら、聖女さまの捜索をしてきた。この間に、王都の教会にいた裏切り者たちのあぶり出しが終わった。


 最終的に判明した裏切り者は一六人。ユーフィン司教の護衛騎士から四人も裏切り者が出たそうだ。


 裏切り者のあぶり出しが終わったため、魔石の捜索が始まった。だが、最高ランクの魔石の情報は少しあるようだが、特級ランクの魔石の情報は今のところ全くなく、捜索は難航している。

 

「そろそろ出発しましょう」


 休憩が終わると馬車に乗り込み、トラス村の教会に向かう。トラス村の教会に着くと、驚いた様子で出迎えてくれた牧師に軽く挨拶をして、すぐに視察に取り掛かる。牧師や関係者の話を聞きながら、護衛騎士たちの調査結果を待つ。二日かけた視察の結果、トラス村の教会に問題はなかった。聖女の情報もなかった。


「失礼いたします」


 牧師と少し雑談をしていると、トラス村の情報を集めていたアスータが私に声を掛けた。私は牧師に小さく頭を下げると、アスータと一緒に移動する。


「どうかしましたか?」


「こちらの手紙を預かりました」


 アスータはそう言うと、一通の手紙を私に差し出した。


「誰からですか?」


「アーオス伯爵家の当主補佐をしているチャルト・オートス・タンリガ子爵からです」


 手紙を受け取り、内容に目を通す。チャルト・オートス・タンリガ子爵から届いた手紙には、アーオス伯爵家の長男が禁止されているマジックアイテムに手を出した可能性があり調査をお願いしたいというものだった。


 「後継者問題でしょうか?」


 貴族の後継者問題では、たびたび血が流れます。暗殺者や毒、そして禁止されているマジックアイテムがよく利用されます。


「アルテト司教。手紙の内容はどんなものでしたか?」


 アスータの問いに、私は手紙を彼に渡す。アスータは手紙を読むと、険しい表情をした。


「これが本当なら、大変な事になるかもしれません」


「そうですね」


 禁止されているマジックアイテムはいろいろあります。後継者問題でよく使われるものは、洗脳するタイプの物が多いです。洗脳も問題ですが、一番の問題はマジックアイテムを起動させる時に、膨大な魔力を複数人分必要とする事です。

 

「生贄を必要とするマジックアイテムの使用は死罪なのですが、どうしてこう使いたがるのでしょうか」


 この情報の真偽を調べる必要があります。


「すぐにタンリガ村に引き返して、これについて調べましょう」


もしこの情報が本当なら、マジックアイテムが使用される前に止めなければなりません。


「わかりました」


 牧師に用事ができた事を告げ、教会を出るとすでに夕方を過ぎていた。


「これからタンリガ村に行きます。疲れているところ申し訳ありませんが、よろしくお願いします」


 私の言葉に護衛騎士たちは頷き、それぞれの馬にまたがった。私は馬車に乗ると、御者に出発の合図を送る。


 速度を上げて進んでいた馬車が、急に勢いを失う。それに体が前のめりになりながら、窓から外を見た。


「何かあったのですか?」


「ランカ村から来た冒険者が『司教と話しがしたい』と、いっているようです」


 私の問いに、フォンが少し警戒しながら答える。


「ランカ村からですか?」


 私がトラス村にいる事をどうして知っているのでしょうか?

 

「話を聞きましょう」


 急いでいますが、どこで私の事を知ったのか知りたいです。


「はい」


 私の言葉に、フォンはすぐに馬車の扉を開けた。冒険者のもとに行くと、顔見知りの冒険者がいた。


「リットン?」


 彼なら、私の情報を知っていてもおかしくはないですね。


「お久しぶりです。まずはこれを読んでください」


 冒険者のリットンから渡された手紙に目を通す。


「呪いですか」


 リットンを見ると、彼の傍にいる子供たちが私を必死に見つめている事に気づいた。


「大丈夫です。すぐに向かいます」


 私は護衛騎士たちを集め、予定の変更を伝える。


 呪い、それは決して疎かにしてはいけない問題です。


「フォガス」


 腕が立ち、そして聖なる力が強いフォガスを呼ぶ。


「はい」


 傍に来たフォガスに、先にランカ村へ行き、助けを求めた子供たちを守るように伝える。


「わかりました」


 ランカ村へ向かったフォガスを見送ると、タンリガ村へ行く護衛騎士たちに声を掛け、馬車に乗り込んだ。


「リットン、あとは任せてください」


「お願いします」


 馬車が動き出すと、受け取った手紙をもう一度読む。


「牧師が呪いを使った者に協力するなど……」


 苛立つ気持ちを深呼吸で落ち着かせると、少しでも早くランカ村に着くように祈った。


「私を殺したユーレイは今日もやかましい」を読んでいただきありがとうございます。

申し訳ありませんが、2月16日(月)の更新はお休みいたします。

次回の更新は、2月18日(水)となります。


これからもよろしくお願いいたします。

ほのぼのる500


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