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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
第3章 番外編 王都と教会
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100話 聖女さまの捜索

―教会の司教 アルテト・ルーグ視点―


 届いた調査結果に目を通す。そして、ホッと安堵の息を吐き、書類を執務机に置いた。


 傍に控えていたフォンを見ると、私の様子から結果がわかったのだろう、彼もまた安堵の表情を見せていた。


「フォン」


「はい」


「聖女さまを極秘で捜索する事になりました。そうですね……私の護衛騎士の中から一〇名を選んでください」


「一〇名ですか? それは少なすぎませんか?」


 フォンが私を見て不思議そうな表情をする。


「バルス教皇主導で、教会内部にいる裏切り者の調査が行われます。その結果が出るまで、誰にも聖女さまの捜索を知られるわけにはいきません」


「調査……裏切り者をあぶり出すんですね」


「はい、そうです。裏切り者が排除されるまで、聖女さまに関する事は、すべて極秘扱いです」


「わかりました。あっ、それでしたら、アルテト司教が自ら捜索に当たるのはどうでしょうか?」


「えっ?」


 フォンの思いがけない提案に、私は彼を見つめる。


「あと一ヶ月もすると、アルテト司教が予定していた視察の時期になります」


 そういえば、今年は王都から遠い場所にある教会の視察を行う予定でした。王都から遠い教会は、教皇や司教の目がいき届かず、いろいろな問題が起こっています。そのため、私は五年に一度をめどに、抜き打ち調査を行っています。


「今すぐ出発は無理ですが、すでに視察の準備は始まっていますので、急げば二週間後には準備が整うと思います」


「それは良い案ですね。ユーフィン司教もチェスラ司教も、私が今年、視察へ行く予定にしていた事を知っています」


 私が視察に出ると、私が行っていた仕事を彼らに任せる事になります。だから、前もって、私がいつ頃から視察に出るのか連絡していました。


「私が教会を離れても、教会内部にいる裏切り者たちは視察に行ったと思ってくれるでしょうね」


「はい。予定が少し早まりますが、牧師が教会を裏切っていた事が判明したため、調査を早めたのだろうと考えると思います」


「どこまで騙されてくれるかわかりませんが、フォンの言う通り視察に行く準備を早めてください」


「はい、わかりました」


 フォンが執務室から出て行くと、肩から力を抜く。


「はぁ、調査結果をこんなに緊張しながら確認するのは初めてでした」


 執務机に置かれた護衛騎士の調査書類に、そっと手を置く。


 信じていました。でも、心のどこかで「もしかして」という不安がありました。


「本当に良かった」


 フォンにこんな情けない姿を見せられないと思って耐えましたが……。


「疲れましたね」


 小さな声で呟くと、調査結果の書類を、重要書類用のマジックボックスに入れた。


 

出発に向けて最後の確認をしているフォンへ視線を向ける。

 

「アルテト司教、すべての準備が整いました。いつでも出発できます」


「ありがとうございます」


 フォンにお礼を言い、集まった護衛騎士たちを見る。


「視察の予定を急に早める事になって申し訳ありません。今から、各地にある教会の視察に向かいます。抜き打ち調査になりますので、目立つ行動は控えるようにお願いしますね」


「「「「「はい」」」」」


 用意された馬車に乗り込み、出発の合図を送る。窓から外を見ると、バルス教皇が見送りに来ていた。


 バルス教皇は、この二週間、教会内部にいる裏切り者のあぶり出しを行っていた。そしてこの二週間で、裏切り者を三名見つけ出した。


 ユーフィン司教の護衛騎士の中に一人、食料を教会に届けてくれる者の中に一人、ボランティアで教会の掃除などをしてくれる者の中に一人だ。


 彼らは今、捕まえずに監視されている。彼らの交友関係から、他の裏切り者や、教会の外にいる異端者を探るためだ。


 バルス教皇と視線が合ったので、私は頭を下げる。バルス教皇は少し険しい表情を浮かべると、私に向かって深く頭を下げた。


「バルス教皇は、できるなら自分で聖女さまを捜索したいのでしょうね」


 馬車がゆっくり動き始めると、護衛騎士たちも一緒に動き出す。教会が見えなくなると、カーテンを閉め、チェスラ司教が持ってきた封筒を見つめる。


 チェスラ司教は宝玉を調べると同時に、聖女さまについても調べていたそうだ。そして、私が聖女さまの捜索に当たる事になったため、わかった事を書類に纏めて渡してくれた。

 

 封筒から書類を出し、内容を確かめる。書類には、歴代聖女についての情報が書かれていた。


「一代前の聖女さまは、覚醒時に髪色の一部が変化。二代前の聖女さまは、胸元に印が現れた?」


 聖女さまについて勉強した時に、髪色の一部が変化する事は学びましたが、胸元に印ですか?

 これは、全く知りませんでした。なぜ、これについて学んでいないのでしょうか?


「二代前の聖女さまは、髪色の変化はなかったのですね。えっ、待ってください。胸元の印はどうやって調べればいいのでしょうか?」


 髪色の一部が変化する事はとても有名です。この事については、民にも広く知れ渡っています。だから、聖女さまを見つけるのは簡単だと思ったのですが……。もし二代前の聖女さまのように、印だったら?


「三代前の聖女さまは、髪色の一部が変化。四代前の聖女さまは……太ももに印ですか」


 覚醒時に髪色の一部が変化しない場合は、体のどこかに印が現れるのですね。どうやって調べれば……護衛騎士のアテネにお願いしましょう。女性の護衛騎士を今回の捜索に参加させてよかったです。


「えっ、臨時の聖女さま? 臨時とは何ですか?」


 書類を読み進めると、思いがけない言葉に目を見開く。


「宝玉が何者かによって割られ、早急に修復しなければならなかったため、教会が臨時の聖女さまを用意した?」


 聖女さまは、女神さまに愛された存在です。教会が用意した聖女など、偽りの存在です。なぜ偽りの聖女などを用意したのでしょうか?


「この時に、虹色の光を放つ特級ランクの魔石を使って宝玉を修復したのですね。んっ? 偽りの聖女が宝玉を修復したように見せた? もしかして、宝玉を守れなかった教会に非難が集中したため、女神さまに愛される聖女さまという存在を利用したのですか? 教会への非難を落ち着かせるために……」


 民の怒りは、集まれば恐ろしい力になります。それはわかっていますが、だからといって偽りの聖女さまを利用するのはどうなのでしょうか?


「他人事ではありませんね」


 宝玉が割られた事はまだ公表されていません。公表されれば、きっと教会に非難が集中するでしょう。バルス教皇の判断になりますが……まさか今回も?


「今、私が考えても意味がありませんね」


 最後の書類に目を通す。


「虹色の光を放つ特級ランクの魔石を見つけられたのは、精霊さまの協力があったからかもしれない?」


 女神さまの友人である精霊さま。ですが、過去の記録から、精霊さまは教会や我々のような教会関係者を嫌っています。それは過去に、精霊さまを利用した牧師や司教がいたからでしょう。


 馬車に揺られながら、両手を組んで祈ります。


「精霊さま。どうか我々に力と知識をお恵みください」


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― 新着の感想 ―
どうも教会関係者が精霊と思っている存在って、ユーレイっぽいな。 利用しようとした関係無しに、悪霊として祓われかねないから教会関係者から離れるよねぇ。
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