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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
第3章 番外編 王都と教会
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99話 私は、彼らを信じています

―教会の司教 アルテト・ルーグ視点―


「バルス教皇。裏切り者が排除されたらすぐに動きたいので、決めていただきたい事があるのですが」


 ユーフィン司教の言葉にバルス教皇が視線を向ける。


「聖女さまを捜索する人員は、何人くらいがいいでしょうか? あと、聖女さまがお乗りになる馬車も用意したいのですが、王家へ新しく作るようお願いしていただけるのでしょうか?」


「それか……」


 ユーフィン司教の話に、バルス教皇は少し考え込む。


「聖女さまは極秘で探す」


「「えっ?」」


 バルス教皇の決定に、ユーフィン司教とチェスラ司教が驚いた様子で声を上げる。


「それはいけません。まさか、聖女さまが誕生した事を公表されないのですか?」


 チェスラ司教が焦った様子でバルス教皇に声を上げる。


「そうだ。公表は聖女さまを無事に保護できた後で行う」


「なぜですか?」


 声を荒げて立ち上がるチェスラ司教に、私は違和感を覚え、彼に視線を向ける。


「教会から裏切り者を排除したとしても、取りこぼしがあるかもしれないからだ。それに、教会の外にいる異端者を我々は把握していない。先ほども言ったが、魔王の復活を望むような者たちだ。聖女さまを害する可能性が高い。そんな状況で聖女さまが誕生したなど、呑気に公表できるわけがないだろう」


 バルス教皇の強い言葉に、チェスラ司教が視線をさまよわせる。


「チェスラ司教。まさか、貴族に聖女さまの誕生を話したのですか?」


 神託が下るときに鐘が鳴るため、神託が下りた事は知れ渡っています。

 でも、内容までは教会が正式に発表するまで、関係者以外に話す事は禁止されています。


 私の問いに、チェスラ司教の顔色が変わる。


「チェスラ司教。言ったのか?」


 バルス教皇が強い口調で聞くと、チェスラ司教は微かに頷いた。


「申し訳ありません。ですが、彼らには、まだ誰にも知られないようにと口止めして――」


「彼ら? 複数の貴族に情報を漏らしたのか」


 チェスラ司教の言い訳を遮るようにバルス教皇が話す。


「あっ……はい」


「異端者たちに聖女さまの誕生を知られた可能性がありますね」


「アルテト司教。彼らは情報を漏らすような者たちではない!」


 私の言葉に、チェスラ司教は怒った表情で私を睨む。


「教会で働く者は、調査され、問題ないと判断された者たちばかりです。それなのに、教会を裏切っている存在が紛れ込んでいます。貴族家に仕える者たちの中にも裏切り者がいるかもしれません。チェスラ司教。情報を漏らすのは、話を直接聞いた貴族だけではないのです」


 私の説明を聞き、チェスラ司教は困惑した表情を浮かべる。


「それは……」


「人払いをし、絶対に話が外に漏れない場所で話をしたのですか?」


 私の問いに、チェスラ司教は首を横に振ると力なくソファに座った。


「申し訳ありません」


 チェスラ司教が小さな声で謝ると、バルス教皇はため息を吐いた。


 これは、早急に聖女さまを捜索したほうがよさそうです。ただ、今のユーフィン司教とチェスラ司教に、聖女さまの捜索を任せるのは不安です。


「異端者たちは、すでに動いている可能性がありますね。バルス教皇。護衛騎士の中に、すでに調査を済ませた者たちがいます。彼らに聖女さまを探してもらってはどうでしょうか?」


「すでに調べた?」


 ユーフィン司教が、不思議そうに私を見る。


「はい。少し不安に感じたので、私の護衛騎士たちを全て調査しました」


 私の説明に、ユーフィン司教とチェスラ司教は目を見開く。


 正確には、今調べている最中ですね。


「アルテト司教は、護衛騎士たちを信じていないのですか?」


 ユーフィン司教が、怪しげに私を見る。


「いいえ、信じています」


「ではなぜ、調べたのですか?」


 ユーフィン司教を見ると、微かに笑っている事に気づく。


 私の弱みを握ったと思ったのでしょうか? 愚かです。


「少し不安に思う事がありました。だから調べただけです。そして結果が届いた後、調査した事を護衛騎士たちに伝え、問題がなかった事も伝えました」


「えっ?」


 私の説明を聞いたユーフィン司教が小さな声を上げる。


「調べた事を、護衛騎士に話したのですか?」


「はい。私は、命を掛けて私を守ってくれている護衛騎士たちを信じています。だから不安を感じた時、裏切り者は出ないと信じ、彼らを調べました。そして私が思った通り、彼らは信じられる存在でした。その安心感を護衛騎士たちと共有するために、全て知らせました。何か問題がありますか?」


 私は、彼らを信じています。だから、少し先の未来で起こる事を話しても問題ないでしょう。


「いえ、問題はないです」


 ユーフィン司教を見ると、視線を落とし、両手をギュッと握っていた。バルス教皇は、そんなユーフィン司教を見ると、小さく首を横に振った。


「聖女の捜索には、アルテト司教の護衛騎士に頼む事とする。チェスラ司教は、聖女について話した貴族にしっかり口止めをしておくように。勝手に動いた場合は、教会から除籍する。教会内部にいる裏切り者の調査は、私の指示で行う。調査をしている事は、結果が出るまで護衛騎士たちには言わないように。結果が出てからは、それぞれの司教たちの判断に任せる」


 教会から除籍された者は、「女神さまから見捨てられた」と言われ、居場所がなくなります。貴族たちの世界からも追い出されます。だから、情報を聞いた貴族は、これでしばらくはおとなしくしているでしょう。


「わかりました」


 バルス教皇がチェスラ司教を見ると、彼は真っ青になって頷いた。


「ユーフィン司教?」


 返事をしないユーフィン司教に、バルス教皇が視線を向ける。


「すみません、わかりました」


 ユーフィン司教を見ると、苛立っているのがわかる。

 

 私を陥れる事など考えず、女神さまの教え通り、正しく生きればいいのです。でも今のユーフィン司教には、それが難しいのでしょうね。


「では、今日はここまで」


「お先、失礼いたします」


 バルス教皇の言葉を聞いたチェスラ司教は、少し慌てた様子で部屋を出て行く。


 これから話してしまった貴族たちに会いに行くのでしょうね。


 ユーフィン司教が無言で立ち上がったので視線を向ける。彼は、バルス教皇に頭を下げると、私を見ずに部屋を出て行った。


「はぁ」


 ユーフィン司教の姿が扉で見えなくなると、バルス教皇がため息を吐いた。


「聖なる力が弱まっている事を知って、態度を改めるのかと期待したが……」


 バルス教皇がもう一度ため息を吐く。


「仲間の足を引っ張ろうとするとは。ユーフィン司教に弱みを握られないように気をつけろ」


「はい」


 バルス教皇に頷きながら、ほんの少し、悲しさが押し寄せる。


 異端者だけでなく、仲間にも気をつけなければならないのですね。少しだけ、昔が恋しいです。


「聖女の捜索を頼む事になったが、大丈夫か?」


「はい、お任せください。では、失礼します」


 護衛騎士たちの調査結果を、早急にもらわなければなりませんね。


 ソファから立ち上がると、バルス教皇に頭を下げ、部屋を出る。すぐに、フォンが私の傍に来た。


「調査結果が届いています」


 フォンの言葉に思わず足が止まる。


「アルテト司教?」


 立ち止まった私を、フォンが不思議そうに見つめる。


「いえ、ちょうどそれが欲しかったので驚いたのです」


「何かありましたか?」


 フォンの問いに、私は苦笑する。それを見たフォンが、何かを察知した様子でため息を吐いた。


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― 新着の感想 ―
最高評議会の4名の内2名、つまり半数がダメって終わってんな。 これで「調査した」っつっても、信頼が置けないよ。
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