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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
第3章 番外編 王都と教会
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97話 関係者の死

―教会の司教 アルテト・ルーグ視点―


 熱が引いて数日後、王国騎士団と、第二王子を守ったとして評価された侍女の調査が終わった。


「少しホッとしましたね」


 報告書を読み終えフォンへ視線を向けると、彼も静かに頷いた。


「はい。王国騎士団に問題がなく良かったです」


 そう、王国騎士団に裏切り者はいなかった。


「第二王子の毒殺も、侍女を第二王子に近づけるための仕込みだったのかもしれません」


「そうかもしれませんね。侍女は今、第二王子の専属になっていますから」


 フォンの言葉に頷くと、侍女の報告書に視線を向ける。


 問題の侍女は、ナリガ子爵家の次女。名前はルース・ナリガ・チョアトで、年齢は二二歳。婚約者がいた事はなく、これまで問題を起こした事はない。また、ルースの交友関係を調べたが、問題のある人物は見つからなかった。


「彼女を動かした人物は不明ですか」


「はい」


 第二王子に毒を盛るなど、侍女一人にできることではありません。きっと、彼女の裏には誰かいると思います。引き続き調査をするようにお願いしておきましょう。


 コンコンコン。


「ルードスです」


「どうぞ」


 執務室に入ってきたルードスを見ると、紙袋を私に差し出した。


「届きました」


 ルードスから紙袋を受け取り、中身を確認すると、バルス教皇の護衛騎士団についての報告書だった。


「ありがとうございます」


 報告書に目を通すと、思わず眉間に皺が寄る。


 バルス教皇が言ったとおりでしたね。バルス教皇を裏切り、情報を漏らしている護衛騎士が……まさか四人もいるなんて……。


「大丈夫ですか?」


 ルードスの心配そうな声に、私はため息を吐く。


「えぇ、私は大丈夫です。ただ、これをバルス教皇に報告すると思うと……」


 言葉をつづけられず、報告書を見る。


 バルス教皇の悲しみを思うと、とてもつらくなります。


「何名ですか?」


 フォンの問いに、私は書類に書かれている名前を指でなぞる。


「四人です」


「多いですね」


 えぇ、本当に多いですよね。


 バルス教皇を裏切った護衛騎士たちの情報を確認します。

 

「失礼します!」


 いきなり開けられた扉に視線を向けると、真っ青な顔色のアスータがいた。

 

「どうしたのですか?」


 彼の様子に嫌なものを感じながら問いかける。


「バルス教皇の護衛騎士が、襲われました。死亡者は五名、怪我人は三人です」


 アスータの言葉に、目が見開く。


「犯人はどうなりましたか?」


「その場で自害したそうです」


 アスータの報告に、思わず手にしていた報告書を握り締めてしまう。


「あっ」


 焦って報告書の皺を伸ばすと、四人の名前が目に入った。


「死んだ護衛騎士の名前はわかりますか?」


「はい、聞いてきました」


 アスータが殺された護衛騎士の名前を言うたびに、私は書類に記載された名前を確認する。


「どうやら、我々がバルス教皇の護衛騎士を調べている事がバレていたようです」


 殺された五名のうち四名の名前が、報告書に記載されていた。


「口封じでしょうか?」


 フォンの問いに、私は頷く。


「おそらくそうでしょう」


 なぜ、調べている事がバレたのでしょうか。この事は、調査をお願いした者たちしか知りません。


 ふと、嫌な言葉が頭をよぎる。


 私の護衛騎士の中にも……。


 小さく息を吐き出し、気持ちを落ち着かせると、アスータに視線を向けた。


「この報告書を急いでバルス教皇に届けてください」


「わかりました」


 アスータは、私から書類の入った紙袋を受け取ると、急いで執務室を出て行った。


 あの書類を見れば、どうして彼らが殺されたのかわかるでしょう。


「アルテト司教」


 フォンに名前を呼ばれたため見ると、フォンは真剣な表情で私を見つめていた。その隣でルードスも私をジッと見る。


「少しでも我々が怪しいと感じたなら、しっかりと調べてください」


 フォンの言葉に息を呑む。


「調べたとしても『我々の事を信じてくれなかった』などと愚かな事を言う事はありません。必要な事なのだろうと思うだけです」


 フォンのまっすぐな視線に、私は思わず微笑む。


「ありがとうございます」


 そうですね。不安に思うなら、その不安を取り除くためにも調べましょう。


 コンコンコン。


「キーフェです」


「どうぞ」


 執務室に入ってきたキーフェが私の前に来る。


「行方不明になっていた護衛騎士を見つけました」


「どこで見つけたのですか?」


 私の問いに、キーフェは小さな紙に目を落とした。


「王都の端にあるタクダ区の廃墟。伯爵家が所有していたとされる建物の二階で、死んでいました。今、その建物の所有者を調べています」


「行方不明の護衛騎士も死んでいたのですか?」


 私の呟きに、キーフェが首を傾げる。


「他にも誰かが死んだのですか?」


「バルス教皇の護衛騎士が五人、殺されたんです」


 キーフェの問いにフォンが答えると、キーフェが小さく頷いた。


「教会が、いつもと違う雰囲気だったのは、それが原因だったのですね」


「見つかった護衛騎士ですが、いつ頃亡くなったのかわかりますか?」


「昨日だと思います」


 キーフェの答えに、私は首を傾げる。


「昨日ですか?」


「はい。昨日、廃墟の近くにあるパン屋の主人から『今日、パンを買いに来た男が、教会の探している男に似ている』と情報が届きました。すぐに主人から話を聞き、周辺を捜査。廃墟となっている建物を見つけ、中を調べたところ、護衛騎士が死んでいました。後ろから心臓を一突きされていたので、殺されたのだと思います」


「つまり、彼も口封じされた可能性が高いですね」


 キーフェの説明を聞いて、私は頭を抱える。


 私たちが相手にしている者たちは、人を簡単に殺してしまうようです。

 

「これからは、もっと慎重に動く必要がありますね」


「「「はい」」」 


 相手にこちらの動きがバレると、関係者が全員殺されてしまいます。あっ、まだ生きている関係者がいました。


「問題の侍女をすぐに保護してください。彼女を殺されるわけにはいきません」


 護衛騎士や侍女を調べている事も、バレている可能性が高いです。


「フィン、手紙を書きますので、その手紙を持ってすぐに王城へ行ってください」


「はい」


 王国騎士団団長に向けて手紙を書き、フィンに渡す。フィンはすぐに執務室を出て王城に向かった。


「大丈夫でしょうか?」


「わかりません。間に合えばいいですが……」


 キーフェの問いに、ルードスが神妙は表情を浮かべる。


 私は二人の会話の聞きながら、両手を組み祈った。


 女神さま、どうかルース・ナリガ・チョアトをお守りください。


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― 新着の感想 ―
仮にも護衛騎士5人を殺害し、3人を負傷させ、そして拘束されることなく自害できる。 これほどの使い手を使い捨ての駒にできる組織が恐ろしいな。 「ゴミ拾い」の方もだけど、悪の組織が最初の内は強いのよね。…
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