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私を殺したユーレイは今日もやかましい  作者: ほのぼのる500
第3章 番外編 王都と教会
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96話 牧師の恋人が死んだ理由

―教会の司教 アルテト・ルーグ視点―


 コンコンコン。


「フォンです。入ってもいいでしょうか?」


「どうぞ」


 ベッドの上から許可を出すと、フォンが部屋に入ってきた。


「大丈夫ですか?」


「熱も下がりましたから、もう大丈夫です」


 スチュース公爵とパチュラ伯爵に会った日、ある者たちにバルス教皇の護衛騎士たちの調査を頼み、教会に戻ってくると、私は倒れてしまいました。医者によると「聖なる力」の使い過ぎらしいです。


「良かったです。ですが大事を取って、明日までお休みください。これはバルス教皇からの指示です」


 大丈夫と言いたかったですが、休みの指示が出てしまったのですね。


「わかりました。久しぶりにゆっくり休ませてもらいます。それで、それは報告書ですか?」


 フォンが持っている数枚の紙に視線を向ける。


「バルス教皇から仕事はさせないように言われたのですが、これは早めに報告したほうがいいと判断しました」


 フォンから数枚の書類を受け取り内容に目を通す。


「侵入者は、教会を追放された牧師だったのですね。なぜ、調べるのに時間がかかったのですか?」


 追放された者は、それほど多くはないです。だから、調べたらすぐに判明すると思うのですが。


「それなんですが、人事に関する書類が数十枚、紛失していました」


 フォンの説明に、私は彼を見つめる。


「いつ頃に紛失したのですか?」


「不明です。今、書類があった部屋への出入りを調査しています」


「わかりました。はぁ、教会内部に、女神さまを裏切っている者たちはどれほどいるのでしょう」


 報告を聞くたびに、気が滅入りますね。


「王国騎士団の調査はどうなっていますか?」


「今のところ、問題になりそうな者はいません。ですが、毒に気づいた侍女について、怪しいお金の動きが確認できました。今は、そちらを先に調べています」


「わかりました。引き続きお願いします」


 次の報告書を確認して、思わず息を呑む。


「宝玉を壊した牧師の恋人は、呪いで殺されたのですか?」


 病気ではなかったのですね。


「はい。そのようです」


 自殺した時の牧師を思い出します。


「まさか、女神さまが救ってくれなかったと逆恨みしたのでしょうか?」


「その可能性はあるかもしれません」


 私の問いに頷くフォンを見て、少し複雑な気持ちになる。

 

 大切な者が呪いで殺されたら、やるせない気持ちになるでしょう。だからといって、女神さまを逆恨みするなんて……。


「犯人は……」


 二枚目に書かれた呪いをかけた者の名前を見た瞬間、唖然とする。


「牧師の……母親?」


 なぜ、牧師の母親が息子の恋人を呪ったのですか? えっ、牧師として歩み始めた息子の邪魔になる……から……。


「十一歳の頃、父親が病気で亡くなり、それからは母と子の二人暮らしだったようです。その母親が恋人を呪い殺したと知って、情緒不安定になり病院に通っていたようです」


「そうですか」


 手に持っていた書類をフォンに渡す。


「悲しみと怒りをどこに向けたらいいのかわからなかったのですね。そして、それらを女神さまに向けてしまったという事なのでしょう」


 どんな事情があれ、女神さまに怒りを向けるなど許される事ではありません。でも、彼の苦しみを考えると、複雑な気持ちになります。


「牧師については、もう一度詳しく調査をし直しています」


 フォンの言葉に視線を向ける。


「なぜですか?」


「恋人の死について、教会にあった資料には虚偽の内容が記載されていました。また、病院にかかっていた事も書かれていません。もしかしたら、他にも書かれていない事があるかもしれません」


「確かに、あるかもしれませんね。わかりました」


 少し頭に痛みを感じ、指で押さえる。


「大丈夫ですか?」


「えぇ、大丈夫です」


 小さく息を吐き出すとフォンを見る。


「お昼から、宝玉に力を込めに行ってきます」


「ダメです。医者から許可が下りていません」


「ですが――」


「医者の許可が下りてからにしてください」


 私の言葉にかぶせるようにフォンが首を横に振って言う。


「わかりました」


 残念ですが、力の使い過ぎで倒れたので仕方ありませんね。


「俺は知りませんでした」


 フォンを見ると、かすかに怒っていることに気づいた。


「何をですか?」


「ユーフィン司教とチェスラ司教の、聖なる力が弱まっている事についてです」


 フォンの説明を聞いて、私は目を見開く。


「どうしてそれを知っているのですか?」


「護衛騎士の間で噂になっています。アルテト司教の様子から、本当の事なのですね」


「彼らは……」


 どう言えばいいのでしょうね。


「民に奉仕をしていないからですよね」


 フォンの言葉を聞いて、彼に視線を向ける。


「そんなはっきりと言ってはダメですよ」


「本当の事です。まさか……」


 確かに、私は驚きました。彼らの聖なる力が、私の半分ほどに弱まっている事に。


 私が倒れる前日、昔の文献に「宝玉に力を込める時、複数で同時に行うと、一人ずつ力を込めるより力が溜まる」と書かれていたため、我々三人の司教と教皇で同時に聖なる力を宝玉に込めた。その時、ユーフィン司教とチェスラ司教の力が弱い事が露呈した。


「聖なる力は、女神さまから祝福を受けると授かります。そして使う事で、少しずつ力は増え強化されます。ですが、使えば何でもよいというわけではありません。力の使い方によっては……聖なる力が弱まります」


 二人もそれを知っているはずです。それなのに、なぜ、あれほど力が弱くなってしまったのか……。


「ユーフィン司教とチェスラ司教が、民のために力を使っていないという事の証拠です」


 フォンの鋭い言葉に、私は小さく頷いた。


「そうですね」


 聖なる力は、報酬や見返りを求めずに民のために使えば強化されます。逆に、欲のためや権力のために使えば、徐々に聖なる力は弱くなり、最後は失われます。牧師は、女神さまから授かった聖なる力を失ったら死にます。


 問題を起こし、教会を追放された者は、死なせないために追放しているのです。教会から追放された牧師は、女神さまから授かった祝福が消えます。追放は、教会の最後の恩情なのです。


「お二人に、何も言わないのですか?」


「ユーフィン司教とチェスラ司教は、自分たちの力が私よりはるかに弱い事を知りました。彼らがどうするか、それは彼ら次第です」


 女神の祈りの間での出来事だったので、護衛騎士たちに知られるはずはありません。


「噂になっていると言いましたが、本当ですか?」


 フォンを見ると、彼は静かに頷いた。


「はい。護衛騎士たちに動揺が走っています」


「そうですか」


 もしかしたら、バルス教皇が情報を流したのかもしれません。聖なる力が弱くなっているという事は、女神さまの教えをおろそかにしたともいえます。バルス教皇にとっては、許されない事でしょう。


「フォン、護衛騎士たちが暴走しないようにしてくださいね。煽る者がいたら、教えてください」


「わかりました。ついでに、その者を調べますね」


「はい。お願いします」


 私の護衛騎士は優秀ですね。


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― 新着の感想 ―
息子の牧師の道の邪魔になるからって呪いを掛けるのは、女神様に対して冒涜になるんじゃないの。 この世界の信者たちの宗教観が分からん。 なんかもうぐちゃぐちゃだな。 教皇以下幹部は、きちんと布教と啓蒙しな…
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