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8話

私は面倒事に巻き込まれる才能でもあるのかもしれない。特殊能力:トラブルメーカーってか?そんな転生特典要らねえ……。


「貴女きちんと聞いていらして!?」


「…えっ。ああ、はい……」


目の前の彼女は、さぞかしご丁寧にお手入れしているであろう髪をなびかせながら、甲高い声で叫ぶ。目元はキツめにつり上がっていて、化粧がまあまあ厚い。もっとナチュラルメイクの方が彼女には似合いそうだ。


「は〜…きちんと聞いていなかったようだから、もう一度言わせて頂くわ」


「この私の方が、オーウェン様に相応しいとね!!」


いかにも高飛車ですと言わんばかりのご令嬢が難癖つけてきたかと思えば、これとは。

周りの取り巻きたちも「そうよそうよ!」と目の前の彼女に同調している。何だろう、この悪の組織の3人組感は……。


「私貴女より先にあの方をお慕いしておりましたの。それに、私の方が身分も釣り合いますわ」


「はあ、そうですか…」


「だから、その座を私に譲りなさい!」


あ、どうぞどうぞ。ご自由に。

……と言えたらどんなにいいだろうか。とりあえずあと数年だけでも待ってくれないかな。そしたら多分何とかなるだろうけど、流石に「数年後に婚約解消予定なんでもうちょっとお待ちいただいて……」とは到底言えるわけが無い。

さて、どうしたもんか。

このまま彼女の愚痴を聞くだけ聞いたら満足して帰ってくれないかな、なんて考えていると、コツコツと誰かが近づいてくる足音が聞こえた。


「そこのお嬢さん方、とても賑やかだけれど一体何があったのかな?」


アルビーだ。

彼はにこりとひとつ愛想笑いをして、事を荒立てないように穏やかな声でそう言った。


「あ、アルビー・ステルンベルギア様……」


自分より強そうな立場の人の登場で怒られると思ってビビったのか、先程よりも彼女たちの勢いが弱まった。

笑顔なのが逆に怖いよね、その気持ちはわからんこともない。


「3対1はだーめ。こんなことしてたら、せっかくのかわい子ちゃんが台無しになっちゃうよ」


「ね?」と彼がチャラ……コホン、爽やかな笑顔で笑いかけると、彼女たちはぽっと頬を染めた乙女チックな表情ですんなりと受け入れ去っていった。私が言うのもなんだけど、チョロいなこの人達……。


何はともあれ、あの四面楚歌の状態から開放されただけでなく、大きなトラブルに発展せず穏やかにことが済んで助かった。


「ありがとうございます、アルビーさん」


できるだけ感謝の気持ちが伝わるよう、心を込めて告げる。


「…あ、ああいや、オレは別に大したことなんてしてないよ〜」


「そうですか?事を荒立てずに対処するなんて、すごいと思いますよ。正直対応に困っていたのでほんと助かりました」


「大袈裟だなあ〜。これくらいならいつでもオレに任せてよね」


「はい。頼りにしています」


チャラ男っぽいけど、いい人だなあ…。

助けてくれたアルビーにもう一度お礼を述べ、私もその場を後にした。


●○●○


視界に映るは心底困ったような顔をしたカミラ・セントポーリアと、これまためんどそーな女の子3人組。そのうちのひとりは、まだちゃんと会って話したことはないけれど、オレと同じくらいの爵位のとこの子だったような気がする。

廊下を歩いていたらこんな場面に出くわすなんて、運はオレに向いているのかもしれない。

オレは彼女らにすぐさま近寄って、手際よく助けてみせた。


ラッキ〜、貸しひとつ作れちゃった。これでまあまあ好感度稼げたんじゃない?

心の中でほくそ笑んでいると「あの……」と彼女が声をかけてくる。


「ありがとうございます、アルビーさん」


彼女はその目を細め、口元が柔らかく弧を描くようにして微笑んだ。薔薇のような真紅の瞳の中で光がきらきらと反射して、ベテルギウスみたいだ。


……あれ。

いつも、死んだ魚の目みたいな愛想笑いくらいしか見たことなかったから分かんなかったけど、ちゃんと笑うと案外可愛いじゃん?

その顔をあいつの前でもしてやれば、ちょっとくらいは絆されそうな気がするのに。


「…あ、ああいや、オレは別に大したことなんてしてないよ〜」


そんなことを考えていたせいで、オレとしたことが少々対応が遅れてしまった。


「そうですか?事を荒立てずに対処するなんて、すごいと思いますよ。正直対応に困っていたのでほんと助かりました」


本当、彼女は人をおだてるのが上手い。

なーんか調子狂うなあ……。

容姿とかはよく褒められるけど、あまりそんなのを言われたことがないから、なんて言えばいいのか分からなくなる。


「大袈裟だなあ〜。これくらいならいつでもオレに任せてよね」


「はい。頼りにしています」


……これは、意外と手強そう。意識してやっているのかは知らないけど言葉のチョイスが巧妙で、誰かしらは好意があるのかと勘違いしちゃいそうだ。

頭の隅でそう思いながら、彼女とはその場で解散した。

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