5話
あれから特に大きなイベントもなく、2年の歳月が流れ……16歳の春。
とうとう学園に入学する年になった。
私が入学するのは貴族専用の学校で、貴族同士のコネクション作りだとか、マナーや政治・経済等を学んだりだとか、そういうのが主な目的の学校のようだ。ちょっと前世の商業高校っぽいかもしれない。
寮にするか家から通うか選べたので、問答無用で寮を選んだ。だって、家にいたら窮屈だし、貴族だから一人部屋だと聞いたので……。まあ、一人部屋と言ってもメイドさんたちはいるんだけどね。
金属製の大きな門をくぐると、レンガ造りの立派な建物がそびえ立っている。建物までの真っ直ぐな道の傍には噴水や花壇が左右対称になるよう設えてあり、ひとつの文化遺産みたいだ。流石貴族専用の学校、設備から気合い入ってんね。
ええと…事前に配られた書類を見るに、1クラス20名であり、3年間ずっと同じクラスで、A・B・Cの3つのうちどれかに属するらしい。私はA組だそうだ。
中世っぽい世界観の中に日本っぽい要素もあるなんて、どうなってるんだこの世界は。ツッコミ出したらキリがないので、これ以上はもう言わないが。
1-Aの札がある教室に足を踏み入れる。
「カミラ!同じクラスなのね、とっても嬉しいわ!」
馴染みのある顔が見えたかと思えば、リナリアがぱあっと花が咲いたかのような笑顔で駆け寄ってくる。可愛さが限界突破してるうう……。
「これでノア様も一緒だったら良かったのだけれど……」
「離れちゃったの?」
「ええ、B組らしくて……でも、カミラがいるから周りが知らない人ばかりでも心強いわ」
「私もよ、リナリア」
そんなふうに2人でキャッキャしていると、誰かが近寄る気配を感じた。
「あれ、カミラちゃんもA組?」
「奇遇だね」とへらへらしながらアルビーがこちらにやってくる。気配の正体は君だったか。
「やっぱり、見知った顔が多いと安心しますね」
「うんうん。いやあ、それにしてもまさかふたりも同じクラスとはね」
どうやらリナリアとアルビーは、リナリアの婚約者のノアを通じて知り合っていたらしく、友人のように言葉を交わしている。それに私も混ざって、和気あいあいとした雰囲気だ。
「ということはアルビーさんもA組なんですね」
「3年間共に楽しみましょう?」と言うと、「もちろんさ」と嬉しそうに顔を綻ばせた。
「そういえば、カミラの婚約者様はどこのクラスに?」
「ああ、あいつなら……」
と、アルビーが言いかけた時。
「なーに楽しそうな話してんだよ、アルビー」
アルビーのすぐ後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。彼は私の姿を見つけると「げっ」とでもいいたげに顔をしかめる。
おい、失礼だな。
「お前がどこのクラスかって話だよ」
「ああ?俺はA組だが……」
嘘じゃん、私3年間もこの人と一緒のクラスなの?
相手も同じことを思ったようで「まさか、お前もA組なのか?」と私に聞いてきた。悪かったな、私と一緒で。
「何か問題でも?」と聞き返すと、「いや?落ち着いた学園生活を過ごせるといいが、随分と騒がしくなりそうだと思っただけだ。どこぞやのお転婆お嬢様のおかげでな」とのたまった。とどのつまりは面倒事起こすなよということだろう。本当にひねくれた言い方しか出来ないんだな、この人。分かりづらすぎる。
私の学園生活、平和に終わりますように……。
そんな望み薄な願いをまぶたの裏に思い浮かべながら、今世の学園生活は始まったのだった。