おまけ2
【お誘い】
「逢い引きでもしないか」
照れているのか、少し目線を逸らしながら彼はそう告げた。
「割引?」
「逢 い 引 き !誰も割引の話なんてしてないだろ」
それもそっか。あいびき……逢い引き……。
「逢い引きって、なんでしたっけ」
「逢い引きは、その...こ、恋仲の男女が、お忍びで出掛けたりだとか、そういう...」
ああ、そうか。つまりはデートというわけだ。いいね、The・恋人って感じがする。
「なるほど。いいですね、いつにします?」
「なんでお前はそう冷静なんだ」
「はあ、ドキドキしてるのは俺だけかよ……」
彼がちょっと拗ねたように呟くから、思わずきゅんときてしまった。なでなでして可愛がりたい衝動に襲われるが、せっかく整えたであろう髪型を台無しにするのは気が引けたので、そこはグッとこらえてちゃんと気持ちが伝わるように言葉にした。
「勿論ドキドキこそしてますが、私はどちらかと言うと貴方と出かけるのが嬉しくって、楽しみでわくわくしてるんです」
「あー…ほんとおまえってズルいよな」
そう言いつつも、顔が赤く染っている。どうやら機嫌はなおったみたいだ。
「お褒めいただき光栄です」
「次は覚えとけよ…」
彼はそう愛嬌ある悪役の捨て台詞のような言葉を零していたが、まあどんなことをしてくれるのか楽しみにしておこう。悔しがっている恋人を横目に、そう思いながら微笑んだ。




