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26話

本当に昨日の夜会ったオーウェンは本物だったのだろうか。まさかドッペルゲンガー……?なんてくだらないことを考えながら寮の自室から出て教室に向かう。

彼から褒め言葉を貰ったことなんて今までなかったから、今でも信じられない。もしや夢でも見てたのかもと思っていると、ちょうど彼とばったり会った。


「……何だよ、なにじっと見てんだ」


あ、よかったいつもの彼だ。これで「おはようカミラさん!」とか爽やかに言われたらどうしようかと思った。

1人で勝手に納得していると、急に彼にデコピンをくらわされた。


「いだっ!な、なにするんですか」


「これはお前のせいなんだからな」


「意味がわかりません」


何を言っているんだこの人は。私は何もしてないじゃないか。

…これはやり返してもバチは当たらないよね?


「...おい、何する気だ」


「ふふん、やられたらやり返すのは当然ですよね?」


「やめろ、そのジリジリ近づいてくるのをやめろって!」


「いーえやめませって、わっ!?」


せっかくじわじわと彼を追い詰められていたのに、まさかの何も無いところでつまずいてしまった。

やばい、これは転ける!と感じて咄嗟に目をつぶったが、オーウェンがギリギリで支えてくれて何とか事なきを得た。


「お前って、しっかりしてそうに見えてどんくさいよな……」


呆れ気味の彼にそう言われる。もしかしたら足元の注意が疎かなのかもしれない。この靴ちょっと厚底だし。


「すみませんねえ、どんくさくて…」


「いやまあ、そういうところもす……」


「す?」


「スっ、すごく愉快だと思うがな!」


「ほんとなんなんですか、もう!」


やっぱりこれだ。絶対昨日のも幻か、本当に言ってたとしても本気のやつじゃなかったんだ。

あーあ、どきっとして損した!


「あのー…ふたりとも?皆見てるけど…」


たまたま私たちを見つけたアルビーがそう声をかける。そう言われて初めて周りに人がいることに気がついて、流石に恥ずかしくなって大人しく一緒に教室に向かった。


●○●○


あー、やっぱりあんなこと言うんじゃなかった。また昨日のことを思い出してしまう。


手洗いに行った帰りに見覚えのある影を見つけて近づいたら案の定カミラで、若干浮かれ気味だったのとかもあり、つい、あんならしくないことを……。

でも、あの時の彼女は今まで見たことないような、あんな顔できたんだって思うくらい真っ赤で愛らしかった。できればもう一度見たいが、自分はあんなことをポンポン言えるような性格じゃないし。

夜中の時は、あのいつもと違う雰囲気に流されて素直な言葉を言えたが、流石に素面であんな素直に言えるわけがない。というか、そもそも普段から息をするみたいに口説けるようならこんな苦労はしていないのだ。


今朝出会った彼女は急に上目遣いでこっちを見てくるし、本当に何なんだよ。自分が可愛いと思ってやってんだろわかってんだよ。ああもういちいち可愛いな、くそっ。


まんまと彼女の策にはまってしまったことに腹立たしくなって、俺は彼女のその額にデコピンをおみまいしてやった。

そしたら彼女は反撃しようと近づいてきて、まさかの何も無いところで転けそうになっていた。忙しいやつだ。


「いやまあ、そういうところもす……」


「す?」と彼女に聞き返されて、はっと気づく。

俺は今、一体何を口走ろうとした?

好きとか言おうとしてなかったか?

浮かれすぎだろ俺。しっかりしろ、次期侯爵だろ。なんとかその場を誤魔化してのりきり、彼女にはバレずに済んだ。


この恋とか言うやつはなんて厄介なんだ。気分がふわふわ?するし、こんなでは日常生活にも影響が……けど、まあ……悪くない、のかもしれない。

そんなことを思い始めるあたり、俺は重症に違いなかった。


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