25話
今日も色々あったなあ、とベッドで横になって自室の天井をぼんやり見つめる。あのドレスを作った子にめちゃくちゃお礼を言われたり、出番が終わってみんなのもとに戻ったときにやんややんやと騒がれたり。盛り上がったようでなによりだ。
まだ祭典での熱を引きずっているのか、なかなか眠気がやってこない。
……部屋から出て散歩でもしたら寝れるかな。
ベッドからのそりと起き上がって、他の部屋の人の迷惑にならないようにして部屋を後にした。
・・・
少し歩いて階段を下り、寮の共有スペースに来た。共有スペースの一角は談話室になっていて、やわらかそうなソファが置いてある。傍の大きな窓からは月光が差し込んでいて、ちょっと幻想的だ。
やっぱり、夜の談話室は誰もいないし静かだな。
ぼうっと窓の外を見つめていると、後ろから聞き慣れた声で呼ばれた。
「まだ起きてたのか、おまえ」
「オーウェン様こそ」
「……寝れないのか?」
彼はそう言って、私のそばに来た。
「ええまあ、恥ずかしながら」
「そうか」
「そういえば、ファッションショー見たぞ」と彼が話を切り出す。目が合ったんだから見てたのは既に知ってますとも。
「どうです、似合ってましたか?」
ファッションショーが終わった直後は彼とあまり話せなかったし、文句があるなら今聞いてあげましょうというような心持ちでそう質問してみた。
どうせ細かいところを姑のようにちくちく言ってくるに違いない、なんて思いながら。
「ああ。よく似合ってたし、綺麗だった」
……え。
今まで見た事のないような穏やかな笑みでそんなことを彼は言う。
思っていたのと違うシンプルな賞賛が返ってきて、思わず動揺した。あなたそういうこと言うキャラでしたっけ!?
違う。これは、そういう意味じゃないはずだ。きっと私が恥ずかしい勘違いをしているだけだなんだから。新手の皮肉だ多分。それか私じゃなくてドレスのほうを褒めてるんだ。
そういう風に自分に言い聞かせても、ストレートな褒め言葉を不意打ちでくらったせいで、耐性のついていない私の顔は熱くなっていく。
「ふはっ、林檎みたいだな」
「ッ〜〜!さては私をからかいましたね…!」
もう!と怒るが、私のその様子までもが楽しいといわんばかりにくつくつと笑うので、仕方ない人だなあとつい許してしまった。
「……そろそろ、戻りましょうか」
「……ああ、そうだな。じゃおやすみ、いい夢を」
「そちらも。おやすみなさい、いい夢を」
寝るための散歩だったのに逆に眠くなくなっちゃったかも、なんて思いながら私たちはそれぞれの部屋に戻った。
 




