22話
あの後皆と合流して、それはそれは心配された。特にリナリアは今にも泣き出しそうなくらい心配してくれていたので、本当に申し訳ないことをしてしまった。今度からちゃんと迷子にならないように気をつけなければ。
こんなに私のことを気にかけてくれる友人がいて、本当に今世の私は友人関係には恵まれていると思う。ひとまず、先生たちを動員するような大事にならなくてひと安心だ。
「ほんと、一時はどうなるかと思ったよ」
「すみません、気をつけます…」
ここが日本なら、多分今私は盛大に土下座をかましてるに違いない。
「もう、この自由時間の間はずっと私の手を繋いでいてね。本当に心臓が止まるかと思ったんだから」
ちょっとぷんすこしながらリナリアがキュッと私の手を握る。はわ、可愛さで溶けるぅ…。
婚約者のノアには申し訳ないが、しばらくこの癒しを堪能させていただこう。
「ちゃ〜んと仲直りできた?オーウェン」
「そんな猫なで声出すなよ、アルビー。……したよ、ちゃんと」
「おっ、えらいね〜!オーウェンく〜ん!」
「やめろ撫でるな!俺がいちばん誕生日が遅いからって、そんなふうに子供扱いするんじゃない!」
アルビーに茶化されて若干キレ気味のオーウェンをノアが「まあまあ…」となだめる。なんかノアに今更ながら親近感が湧いてきた。苦労人気質なんだね、君……。
「気を取り直して、残りの修学旅行も楽しんじゃお!」
「ええ、もちろん」
せっかくの修学旅行だもんね、楽しまなきゃ損だ。今だけは、家の事とかほかの嫌なこと全部忘れてしまおう。こんな時間は二度とやってこないかもしれないから。
・・・
無事に寮に帰宅して、ふう、と一息つく。
意外と荷物がかさばってしまった。使用人さんが全部部屋に運んでくれたたし、流石にここからは自分でやろうとカバンとかを開けてみる。こういうところはまだまだ前世の時の庶民感覚が抜けない。
この量の荷物……整理して実家の自室に置いておかないと机のスペースがなくなってしまいそうだ。旅行するとつい使わなそうなお土産を買ってしまうのはあるあるだもん仕方ないよね。こういうときにいっぱい買えるお金がある貴族は有利だ。いや、物がかさばるという点では不利なのかも?
買ったお土産を一つ一つ手に取ってみる。
手に取るだけで、その時の思い出が蘇ってくる。あの博物館の展示は前衛的だったなあ…とか、あのお土産屋の置物は面白い顔してたなあ…とか。
前世の高校時代もこんな風に……はは、今前世のことを考えたって仕方ない、か。いけないいけない、ちょっと感傷的になってしまった。
近々また祭典もあることだし、がんばらなきゃ。
そんなことを思いながら、手に取ったものをちょっとずつ片付けていった。




