19話
それからいくつかの中継地点を通って、最終目的地の南国リゾートの地にたどり着いた。
街の様子は既に普段の中世ヨーロッパ風のそれとは違い、涼しそうな格好をした人がこの街の特有の食べ物やら飲み物やらを持って歩いていたり、他所から来たお客さん向けにお土産屋さんとかが客の呼び込みをしていたりしている。
私の家の近くにも海こそあるけれど、ここら辺にはヤシの木なんかも生えていて、なんともトロピカルな雰囲気だ。
せっかくということで、皆の服も少し南国風になっている。うあ、皆ビジュアルがいいからなんでも似合うな…。誠に不服だが、オーウェンも黙っていればイケメンなので南国風の服も着こなしていた。
そういえば今まで聞くのを忘れていたが、誰かと一緒の空間で寝るのが苦手な彼はちゃんと睡眠はとれているんだろうか。
「オーウェン様」と呼びかけて、服の裾をくいくいと引っ張る。
「な、なんだよ」
3人が他の話題で盛り上がっている時に全然関係ない話をするのもあれなので、手を口元に当ててコソッと話しかけた。彼は仕方なく身体を前に屈めて耳をこちら側に傾けてくれた。
「夜とか大丈夫ですか?」
「は?夜?」
そう聞くと彼はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。あれ、何かおかしいことでも聞いてしまっただろうか。
「誰かと一緒の空間じゃ寝にくいって言ってたじゃないですか」
「ああ…なんだ、そういう……。寝る時は毛布を頭からちゃんと被ったから、まあ多少は、なんとか」
「なら良かったです。前の時は寝不足でだいぶぽわぽわしてましたもんね」
「それは、主にお前の……っ!」
「え、私?」
「……いや、いい。なんでもない」
……?変な人。まあ、とりあえず大丈夫そうでなによりだ。
「カミラちゃん!オーウェン!近くにここなっつじゅーす?があるらしいから行ってみよーよー」
アルビーがちょうど話が終わったタイミングでそう呼びかけてきた。
ココナッツジュースか。喉も渇いてきたことだし、是非とも飲みたい。
「いいですね、そうしましょう!ほら、オーウェン様も」
彼も誘うと「仕方ないな」と言いながらちゃんとついてきた。ほんと、素直じゃないんだから。
こういうの、前世ではなんて言ってたっけ。ああ思い出した、ツンデレだ。なんてことを思いながら、5人でココナッツジュースを飲みに出店へと足を運んだ。
●○●○
あいつの突飛な行動には驚かされてばかりだ。
急に服の裾なんて引っ張ってきてコソコソ話に付き合わされるし。しょうがなく屈んだら余計に顔が近くなるわ、耳元でこそばゆい声がするわ、挙句の果てには「夜とか大丈夫ですか?」って一瞬別のことかと勘違いしそうに……って違う!!
なんなんだよもう、かわい…………いとか別に思ってない。本当に。
昨日夢にあいつが出てきたのもあったせいで余計にダメージを食らった。
「…?どうかしましたか?」
カミラはなんにも分かっちゃいないような顔で、首をこてんと横に傾げる。
くそっ。なんでこう、俺ばっかり翻弄されなくちゃならないんだ。ちょっとはお前も……。
はあ、と小さくため息をつく。
「能天気そうな顔してるなと思っただけだ」
そう言うと、彼女は「ほんと失礼ですね」とムッとした顔つきになった。…前まで、こんなに表情がころころと変わってただろうか。それとも…彼女が変わったように感じるのは、俺の気のせい?
どっちにしろ、前までの無愛想なままの顔よりもずっといいと思う。
「ココナッツジュース、気に入りましたか?」
「え?まあ、それなりには…。というか、また何で急に」
「なんだか嬉しそうな顔してたので」
確かにこのジュースは悪くはなかったが、そんな顔に出るほどだったか……?
彼女の言葉を不思議に思いながら、ノア達いわくもっと海の近くに移動することになったのでそれについて行った。




