第二部 破壊 28
「気がついたとき、私たちは埼玉の埼玉の住宅地の道ばたに倒れていた。二人とも全裸だったからね、住民に発見されたときは一騒動だったが、強盗に襲われて身ぐるみ剥がされたと嘘をついてなんとかなったよ」
荒川は話し終えると、コップの水を飲み干し、大きく息を吐いた。
腕を組んでじっと話を聞いていた伸也が口を開いた。「荒川さん、高次元の世界で一体何を見たんですか」
荒川は眉間に皺を寄せ、ゆっくりと首を振った。
「申し訳ないが、わからないんだ」
「わからないって……そういう俺はもっとわからないですよ」
「伸也が北村さんのアパートから伊豆にあるグロウのアジトへ移動したのは、お前が高次元空間に入り込んだからなんだ。そのときに見た光景が高次元空間だ。あれはお前が高次元世界に入ったと同じであり、違っている」
「あの、もっとわからなくなってきました」
「人間の感覚は縦横高さの三次元に時間の次元を加えた世界を認識するように作られている。人の思考もそれを元に形成されている。しかしそうした感覚では、高次元の世界を捉えることが根本的に不可能なんだ。ただし、高次元空間が存在していることは認識できる。すると人間の感覚はどうなるか。高次元空間を独自に解釈して認識するしかないんだ。伸也が伊豆のアジトへ移動するときに見た光景は、高次元空間を認識したお前の感覚が解釈した世界だ。
高次元世界もこの世界と同様に、様々な現象があり、意志を持った存在がいるはずだ。しかし、我々がその存在をすべて理解することは不可能だ。お前が受け取ったメッセージも、お前の無意識が解釈したものだ。ただし、百パーセントお前が見た光景をお前の意識が作り出したというわけではない。お前に高次元世界が接触してきたのは、お前にメッセージを送りたかったからなんだ。
ユングが提唱した元型という概念を知っているか? アニムスやアニマ、グレードマザーといった概念が、夢や神話、昔話に現れ、人間に影響を与えているという説だ。こうした元型も、高次元からのメッセージの一つだ。ただ、受け取る個人や民族によって、解釈の仕方は異なっている。お前が見た世界、メッセージも同じだ。高次元空間からのメッセージは存在するが、我々にはそれをそのまま理解することはできない」
「俺が伊豆へ移動したとき、訳のわからない世界でこんなメッセージを聞きました。
――お前たちはこの宇宙で、もっとも純化されたエネルギーの場に存在している。今、そのエネルギーのバランスが大きく崩れようとしている。だから私が現れたのだ――
これはどう解釈すればいいんでしょうか」
「人間が感情のエネルギーを出力しているというのは理解していたね。我々はこれを感情子と呼んでいる。高次元の存在と我々は感情子を通して力のやりとりをしている。感情子がこの四次元時空でひどく弱いのは、そのエネルギーの大判が高次元へ流出しているからだ。私は高次元の存在が、感情のエネルギーを抽出するためにこの宇宙を作ったのではないかと考えているんだ。人間というのは数ある生命の中でも、もっとも豊かな感情を創出できる。純化されたエネルギーの場というのはというのは、そういう意味だと思う」
「エネルギーを抽出するためにこの宇宙を作っただなんて、なんだか俺たちはニワトリで、高次元の存在のために卵を産んでるみたいな気持ちになるよ」
「そんな単純な話ではないと思う。高次元の存在からは様々な芸術や創造性を受け取っている。世界はそのたびに進歩しているんだ」
「あの……」奈緒が恐る恐る発言した。「北村さんはあたしと貴斗、伸也、それに北村さんが選ばれし者であり、辻田と戦うんだと言っていました。これも高次元からの意志なんですか」
「正直私にはどうして君たちが選ばれたのかまではわからない。ただ、一つだけ言えることは高次元の存在に選ばれた以上、この宇宙の中でもっとも重要なポジションにいるのではと考えられる。君たちの勝敗がこの宇宙全体に影響を及ぼす可能性がある。
感情には二つの側面がある。ひとつは喜びとか明るさといった言葉で表される陽。もうひとつは怒りや苦しみ、暗さと言ったこ言葉で表される陰。この二つの側面が複雑に絡み合いながら、一つの感情を形作っていく。陰を代表するのが辻田たちグロウであり、陽を代表するのが君たちだ。
老子にこんな言葉がある。『道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず』どういう意味かわかるかな」
奈緒は首を振る。
「道を我々は高次元の存在と考える。高次元の存在が一を生み出す。では一とは何か。我々が思考できる原初の概念だ。善と悪といった概念もすべて我々の思考が生み出したものだ。道=高次元は人間の概念の外にあると言うことだ。
伸也が伊豆へ移動するときにメッセージ伝えた者が玄だと言ったな。老子によると、玄とは言葉にできない道から生じた原初の存在だ。たとえて言うなら、百三十七億年前に無から宇宙が誕生した直後。インフレーションが始まる前の、大きさのない素粒子よりも更に小さかった状態――つまり、存在はするが形は定かでない状態だ。それが天地に分かれ、陰と陽を生み出し、万物を生成する」
「よくわからないけど、なんのために神様がこの世界を作ったのか、あたしたちにはわからないってことなのね」
「そうだ」
「それってひどい話よね。説明もないのにあたしたちをこの世界に放り出しただなんて」
「高次元の存在が我々を生み出した目的が感情のエネルギーを受け取ることなら、我々に存在の理由を教えない方が感情のエネルギーを引き出すのに効率的じゃないのか」
「じゃあ感情のエネルギーを高次元の存在が受け取っているっていうのも、あたしたちには証明できないでしょ」
「確かに感情エネルギーの説は仮説に過ぎない。しかし根拠はあるんだ。それが梨奈の存在だ。彼女はこの世界の秩序を破壊するために生まれ変わってきた。対して私と蓮村先生は、この世界を守るために戻って来た。秩序を破壊する側と守る側。そのせめぎ合いによって、感情のエネルギーか生じる。高次元の存在はあたかも感情のエネルギーを生み出すために我々をこの世界にもたらしたかのように思えるんだ」
「二十年前のあの日、私は死にかけていた」蓮村が話し出した。「全身にひどいやけどを負っていたから、そのままでは生きていなかっただろう。仮に生きていても、ひどい後遺症が残っていたはずだ。しかし今はやけどの症状はどこにも残っていない。梨奈さんが脳死状態から甦ったように、私も生き返った。そしてこんな力も与えた」
奈緒が「ひゃっ」と小さな悲鳴を上げた。どうかしたのかと声をかけようとしたとき、ぞろりと体の奥に何かが触れた気がして、鳥肌が立った。
「ひえっ」北村は叫びながら体を震わせた。
「私と荒川君は透明症ではない。しかし、ニュートリノマシンで高次元世界に行ったことによって身体が修復され、体の一部が高次元空間へ入り込める体質へ変わったんだ。
悪がその力を強めれば、同じだけ善も力を強めていく。その逆もある。辻田たちの悪が強まったとき、そのカウンターとして君たちが『選ばれし者』となったと考えている」
「でも、なぜ俺なんだ。俺には戦う理由なんてない」
「あたしにも、戦う理由なんかないわ」
「いや、いや、理由、あるいはきっかけはあるはずだ。だからこそ君たちに力が与えられたんだ」
「栗山さん、お言葉ですが、伊豆で栗山さんが取った行動をお忘れでしょうか」
北村の真剣なまなざしに、奈緒が狐につままれたような顔をした。
「はあ? 何にも覚えていないんだけど」
「あのとき栗山さんは、玄様と共に戦うと申しました」
「それは俺も聞いている」
「本当にあたしがそんなこと言ったの?」
北村と伸也を不思議そうに見ている奈緒に、嘘を言っている様子はない。二人は顔を見合わせた。
「栗山さんが言っていることは恐らく本当ですよ」冷たい眼差しで、じっとやりとりを見ていた藤岡が口を開いた。「今の彼女に当時の記憶はない」
「『今の』ってどういうことなんだよ。記憶喪失でも起きたって言うことか? あんた、何を知っているんだ」
「僕……。おうち帰る」
それまで怒りの表情を浮かべていた奈緒が、唐突に情けない声を出しながら、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「おい、一体どうしちゃったのさ」
唖然としながら声をかける伸也に、奈緒は幼い子供がぐずるように、首を激しく振り始めた。
「竹井、説明してやれ」
藤岡に言われ、部屋の片隅にいて竹井が前に進み出た。
「警察での取り調べ中に、彼女の様子がおかしいとわかって、医者に診察させたところ、解離性同一性障害だと診断されました。俗に言う多重人格という奴ですね。今現れているのは七歳の男の子です。彼はいつも最初に住んでいた家で親子三人で暮らすことを望んでいます」
ノックする音が響いてドアが開くと、スーツを着た若い男が現れた。手には水の入ったコップとブリスターパックに入った錠剤を載せたトレイを持っていた。
「ありがとう」
竹井がトレイを受け取り、ぐずっている奈緒に差し出した。奈緒は不審げに、睨めるような上目遣いで竹井を見た。
「アパートにあった物と同じ薬だ。悲しくなったり、不安になったりしたときは飲むようにと言われているだろう」
奈緒はこっくりと頷いた。ブリスターパックから錠剤を押しだし、口に含むと、水で流し込んだ。五分もしないうちに目がとろんとし始め、ソファにもたれ掛かり、目を閉じた。
「主に活動しているのはさっきまでいた気の強い女性ですね。伊豆で現れた人格は三十歳で信仰心が大変強い女性です。霊感が強く、聖地と言われる場所や、何某か因縁があるような場所へ行くと体調に変化を起こす体質でした。恐らく、透明症の発症に伴い、その人格が玄を感じたのだと考えられます」
「栗山さんの薬を服用してしまったので、我々も休憩に入りましょう。それまでに、宮本さんは我々の計画に参加する意志を固めて下さい」
冷たい三角眼で見つめる藤岡を、伸也は思わず睨み付けた。
「俺にやめるやめないという選択肢はないのか」
「その通りです。中途半端な逡巡は捨ててください。命取りになります」
そう言って藤岡は部屋から出て行った。
「私も出ていきますが、部屋から出て行くことは禁止です。ドリンクサーバーの飲み物は自由にお飲みください。ちなみに室内には監視カメラとマイクが設置されてありますから、妙な企てがあれば、すぐにわかりますので」
竹井も出て行くと、伸也は立ち上がり、荒川と蓮村が座っているソファの向かいに座った。両手を腿に置き、やや前のめりになって見つめる。荒川がやや緊張しているのがわかる。
「荒川さんは、どうしてオーロラダンスを広めたんですか」
「と、言うと?」
「公の場では、ビジネスとか、透明症患者の職を提供するとか言っていましたよね。でも、それは後付じゃないんですか」
荒川は緊張をほぐすように、少し息を吐いた。
「その通りだ。本来の目的は、梨奈に対抗できる人物を探すことだった。透明症患者にマイクロ波を当てるとプラズマ発光することは、ビフレストプロジェクトの研究過程で発見されていた。その現象をエンターテイメントに使えば、注目されることは容易に想定できたよ。私は集まったダンサーの中から、梨奈と対抗できる人材を探そうとした」
「そして俺が選ばれたというわけですか」
「実を言うと、ここ二三年、梨奈はもう現れないのではと思っていた。純粋にお前たちが成長していくのを見るのが生きがいだった。本当だ。
しかし梨奈は現れてしまった。あの子は人類に深刻な対立を及ぼすつもりだ。私は絶対にそれを阻止しなければならない。伸也、お前にも手を貸してもらいたい」
荒川は伸也に向かって頭を下げた。
「荒川さん、やめてください。荒川さんにはいろいろとお世話になっています。でも、生きるか死ぬかの話になってくるんでしょ。正直言って、俺はそこまで戦う義理はない」
「あいつはこの世界の秩序を破壊するだろう。そうすれば被害は必ず君たちにも及ぶ」
「でも、荒川さんの話だと、この世界が破壊されるのって、必然じゃないんですか?」
麻衣子が伸也の隣に座った。
「荒川さんは、感情のエネルギーを抽出するためにこの宇宙を作ったと言いましたよね。だったら秩序が壊されて、あたしたちが嘆いて感情のエネルギーを発散させるのは必然てことでしょ。あたしたちはそのために生まれた。だから戦うこと自体が無駄じゃないんですか」
「山野さん、我々の言葉が足りなかったようだ。もう少し説明させてくれ」
ややしわがれた声で蓮村が話し始める。
「感情のエネルギーというのは憎しみとか悲しみだけではない。電極にプラスとマイナスがあるように、喜びや感動といった、エネルギーがあるんだ。善と悪が対立することによって、より強い感情のエネルギーが生まれる。
映画や小説、ニュース、昔話、世界には物語で溢れている。どうしてかわかるかな。それは物語が感情のエネルギーを生み出す装置だからなんだ。人は物語へ没入することによって、感情のエネルギーが発生するんだ」
「つまり、あたしたちは善のエネルギーを出していかなければならないってこと?」
「そうなんだ。でも、変な話ね。善も悪も一つの場所から出ているんでしょ」
「どうしてなのか、本当の理由はわからない。もしかしたら何の意味もないかもしれない。しかし、我々が生きることを選択していく以上、悪は常に現れ、善は勝ち続けなければならないんだ」
伸也は大きく息を吐いた。「考えさせてください」
立ち上がり、別のソファへ移る。
「宮本先生、ここのドリンクバーは神ですよ」興奮した様子の北村が両手に飲み物が入ったコップを持って向かいに座った。「お金を払わなくていいというのに、なんとコーラが三種類、カルピスに至っては五種類もあるんですよ」
北村はそう言って、喉を鳴らしてコップのコーラを飲み干した。
「伸也もなんか飲む?」
麻衣子が横に座り、肩に手をかける。
「水をくれないかな」
麻衣子が頷き、コップに水を汲んできてくれた。礼を言って飲み干す。
「あたしは戦うのに反対。荒川さんやあの藤岡っていう男がなんと言おうが、伸也の身を危険にさらすなんてあり得ないわ」
そっと寄り添ってきた麻衣子の手を握りしめる。
「俺もそう思う。戦いなんか参加しないよ」
「お言葉ですが、私は宮本先生も、この戦いに参加すべきではと考えております」
北村は半分飲みかけのカルピスをテーブルに置いて背筋を伸ばし、伸也を真剣な面持ちで見ていた。
「個人として人生を楽しみ、平穏に暮らすことは、極めて大切なことであるかと思います。しかしながら、そうした生活も、社会の秩序が保たれているからこそ実践できるではないかと考えます。
今、まさに社会の秩序が毀損されようとしており、我々が対抗できる力を持っているとしたら、戦うべきではないかと考えます」
「でも、それって本当にあたしたちが背負わなきゃなんないの? あたしにとって伸也はかけがえのない人なの。あたしたち、これからいっぱいデートもしたいし旅行にだって行きたいんだから。伸也が死んだら何にもできなくなっちゃうわ。おじさんみたいに楽しみがないわけじゃないのよ」
「なな、なんと失礼な。わたくしにも楽しみはあります。朝ドラでヒロインが奮闘する姿に声援を送るとか、スーパーで半額になったお惣菜のエビフライを、激しい争奪戦の上ゲットしたときとか」
「ケチな楽しみね」
「お言葉ですが、楽しみに貴賤はございません。人それぞれ、分相応の楽しみは存在いたします」
「おい、ちょっと静かにしてくれないか。冷静に判断できない」
伸也は腕を組んで目を閉じた。
麻衣子の言うとおり、ずっと彼女と生きていきたい。ダンサーとしても活動していきたい。しかし、梨奈によってその生活が破壊されるなら、戦っていかなければならない。しかも、自分に戦う力があるなら尚更だ。しかし、未だ戦うということへの実感が持てなかった。
不意にトレミティで食事をした思い出がよみがえってきた。伸也が透明症を発症するまで、週に一度トレミティで食事をするのが今村家の習慣だった。基本店には事前連絡せず行くので、アルバイトの店員は社長の存在に気づくことなくサービスを行うのが常だった。たまに店長が気づいて挨拶に来る時もあるが、生真面目な父親は逆にプライベートで来ているのだから、他のお客様に失礼だと一喝した。
伸也はトマトベースのソースがかかったハンバーグがお気に入りだった。母は高菜とベーコンのパスタがお気に入りだった。弟の邦明はなぜかほうれん草のソテーに半熟卵のせたものか大好きで毎回頼んでいた。父親はステーキを食べながら、みんながおいしそうに食べる姿をうれしそうに見つめていた。
しかし、透明症のおかげですべて失われてしまった。
――お父さんを恨まないでね。あの人は家族を守るためだったら社長を退くのも厭わなかったわ。でもね、いくら会社から離れても、これまであの人が関わってきた事実は消えないわ。むしろ、順調だった会社を唐突にやめたら何かあったのかと勘ぐられる。従業員八千人とその家族を守るため、お父さんは自分の家族を犠牲にする決断をしたの。
透明症がなかったら、あの思い出が今もずっと続いていただろう。無意識のうちに、麻衣子の暖かな手を、強く握りしめていた。
鳩尾の奥が暖かくなり、体全体へ広がって緊張がほぐれていく。麻衣子の手の感覚が体中に浸透したような気分になっていく。
一瞬、まぶたの向こうから感じられる光が途絶え、目隠しをされたような感覚に陥った。違和感を覚えて目を開けると、そこに薄い赤が広がっていた。重力の感覚はなく、ぽっかりと宙に浮かんでいる。前方に、黒い染みのような点が、ぽつりぽつりと現れてくる。
来る、伸也は身構えていると、伊豆へ移動したときと同じように、黒い染みは爆発するように広がった。様々な物体がすさまじい勢いで現れ、合体、分裂、絡み合い、消えていく。頭が痛くなるほどの色彩がめまぐるしく展開する。頭がおかしくなりそうだが、落ち着けと言い聞かせた。ここは多次元世界、人間の思考できる限界の向こう側なんだ。目の前に展開されている世界は、人間の思考では変化不可能な光景だから、思考がバグを起こしてこんな意味不明の光景を映し出している。もう少しすれば、この世界の主が現れるはずだ。
――我は玄――
どこからか、声が聞こえてきた。耳から聞こえるのではない、心の中にふわりと他人の思考が浮かび上がっていくかのようだ。
――お前は戦わなければならない――
――どうしてさ、なぜ俺は戦う必要があるんだ――
――それはお前がここに存在しているからだ。この世界で生を受ける者はすべて、存在する限り、陰と陽の狭間で生きて行かなければならない。ある者は陽に囲まれ、ある者は陰の世界に身を沈めているかもしれない。しかし陽しか存在しないと思っている者も、その片隅には陰の兆しがある。陰しか見えない者も、どこかに陽の欠片が存在しているはずだ。
万物は陰を負い、陽を抱く。それらは混じり合い、時には対立し合い時が生まれる。この宇宙が存在する限り、運動は続く。お前はその運動の最前線に立っているのだ――
――あんたの言っていることが本当だとしても、俺は好きでここに立っているわけじゃない――
――すべての存在が自らの意志でそこに立っているのではない。一生を平穏に過ごす者、苦しみの中でもがきながら死んでいく者もいる。しかしすべてはそれぞれの役割を全うしていかなければならないのだ――
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