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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグ
91/144

91 --希望--


「味が濃くて美味い」


「感想が雑すぎる……」


 俺たちは無事に焼きそばを確保して、近くの開けたスペースで二人並んで食べていた。


「よしじゃあ、食レポスタートだ。明里さん、この焼きそばはどういったお味で?」


 箸をトレーの上に置き、空いた方の手でマイクの形を作る。


「えっ!? 私?」


 驚いたようにあたふたし出す。


 やがて考えるそぶりを見せ、何かを思いついたように口を開く。


「あ、あったかくて美味しい!」


「ひどすぎる。却下」


 俺は考えまでもなく言葉を飛ばす。いやそりゃこうなるわ。


「えぇ!?」


「いやそりゃ焼きそばなんだから熱いだろ。俺の感想よりも語彙が乏しいぞ」


「まじか……」


「まじだ」


 ガクッと肩を落とす明里に死の宣告を伝える。


「国語の勉強する。絶対する」


「そんなに悔しいのかよ……」


 握り拳を作って決意をあらわにする明里。それはなんか複雑だな。


 てか国語か……それなら雄二が得意だったな。


「じゃあ……いや……なんでもねぇ」


 言いかけてやめた。これをいうのは、なんだか意地が悪い気がしたから。

 

「? なに? 言っちゃいなって〜」


 「気になるでしょ?」と真っ直ぐ俺の瞳を覗き込むようにしている明里。


「いや、本当になんもないって。よく考えたら的外れすぎたから」


「そう? まぁ、ならいいんだけど」


「そういや、あいつらとはいつ合流する?」


 誤魔化すように口を開いたから、訊かなくていいことを訊いちまった。


「あ、そうだよ! 早く合流しないと!」


「……だよな」


「もう一時間近く雄二が奏ちゃんと二人……? どうしよう……」


 スマホの画面で顔を照らしながら、不安げに明里はそう呟く。


「……雄二には、告白とかしないのか?」


 気がついたら、またいらないことを訊いちまっていた。


「急がないと……え?」


 忙しなく箸を動かしていた明里が、動きを止めてこちらを見る。


「告白、しないの?」


 俺の言葉に反応したのを確認して、言葉を続ける。もう引き返すことはできない。

 今更誤魔化しても、今度こそ追求されるだろう。


「えっ、えっと……告白……っていうのは……?」


「雄二のこと、好きなんだろ? 分かってるよ」


 分かってる。ずっと前から、そんなことは分かっている。

 あれだけ分かりやすけりゃ誰だって分かるってもんだ。ずっと近くにいた俺なら尚更だ。


 緊張感を隠すように、焼きそばを一口口に運び、明里の反応を待つ。


「そうだったんだ……」


 明里は、箸を焼きそばに絡めながら、自分の中でその意味を消化させるようにそう確認する。


「たしかに、優也には言っておいた方がいいよね。もうずっと、一緒にいるんだから」


「……」


 そういやそうだった。奏ちゃんと出会う前よりも、雄二と出会う前よりも……さらにその前から、こいつとは出会っていた。


「私……もう、告白したんだ」


「……!! そう……だったのか……」


 いつの間に……? 雄二からは聞いていなかったが……


 いや、それよりも結果は……?


「結果は、多分振られてる」


「多分……?」


「うん。返事はいいって言ったの。優也は知ってると思うけど、雄二って奏ちゃんのこと好きでしょ?」


「……そうだな」


 ここまで分かっているなら、誤魔化しても仕方ないだろう。

 告白したってことは、雄二から直接聞いている可能性が高い。


「ん? 返事はいいって……告白する前から、あいつが奏ちゃんのことを好きだってことは知ってたのか?」


「まぁね。分かりやすすぎるから」


 あはは……と軽く笑うその横顔からは、不思議とマイナスのイメージが湧いてこない。


 どこか、希望を持っているような……


「でもじゃあ、なんで告白なんて……」


 そんなことを考えてしまったからだろうか。そんな意地の悪いことを口走っちまった。


「それでも……諦めたくなかったんだよねー」


「……」


 明里の唇がわずかに震え、その横顔が月明かりに照らされる。


「告白すれば、意識してもらえるかなーって」


 「安直かな?」と言って笑う姿を見て、今はっきりと分かった。



 ――希望の理由が――



 ――希望の、意味が――



「……いや、いいと思うぞ」


「そう? ありがとっ」


「……でも、それだと俺にとっては困るかもな」



 ――その希望を作るには、どうするべきか――



「え? どうゆう意味……」



 ――ここが勝負どころだ――



「俺は、お前のことが好きだってことだよ」


「……え……?」


「これで少しは意識してもらえるようになるかもな? 俺のこと」


「……っ!!」


 月明かりのせいか……夜空に煌めく無数の星のせいか……明里の顔が紅く染まっているのが分かった。


 その瞬間、自然と頬が緩む。



 ――ようやく、この時が来たんだなって――






 いい感じの雰囲気をかけていたらいいなぁ、と思います。ではまた次回!!

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