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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグ
52/144

52 変化


「2-Bの優勝を祝って〜!」


「「「乾杯!!」」」


 今日の優勝の立役者の一人、明里の掛け声で俺たちは持っていたコップをカンッと合わせた。


 運動会が終わってから、俺たちは打ち上げのため学校近くの焼肉屋に来ていた。結果は明里が言った通り、見事優勝を飾ることができた。


「いや〜、やっぱりこのクラス強すぎだろ!? 三年にも勝ったし!」


「てめー、雲隠れしたくせに何言ってんだ?」


 早速届いたカルビを網に乗せ焼いている田中につっこまずにはいられないだろう。


「いや、腹にヒビが入ったかと思うほど痛かったんだよ……キリキリ〜って」


 早く食べたいと言わんばかりのスピードで次から次へと肉を焼きながらそんなことを言われても全く説得力がねぇな……


「でも雄二のおかげでなんとか乗り切れたからな! よくやったぞ!!」


 通路を挟んで隣のテーブルで肉を焼く斉藤がガハハっと豪快に笑いながら俺を褒めてくれる。


 まぁ、こいつは人一倍心配してたからな……


「あっ、でもこれって雄二を推薦した俺のおかげじゃね?」


 俺がそんな想いに浸っていると、その雰囲気をぶち壊すように優也が口を挟みやがった。


「いやいや、俺のおかげだから!」


 だって笹森さんに誉められたんだもん! すごいんだもん!


「はっはっはっ! まぁ、クラスみんなのおかげってことで!」


 優也の笑い声と共にそう結論づけられた。


 まぁ、俺は笹森さんに誉められたことで既に大満足してるけどね?


 そんなことより俺も早く肉が食べたい。ジュウジュウと美味しそうな音を立てて焼ける肉を見て、心の底からそう思う。


 俺がトングへと手を伸ばし、肉を取ろうとすると……


「あっ」


「あっ」


 同じくトングに手を伸ばしていた明里の手に触れてしまった。


「あ、すまん。先いいぞ?」


 なんだか借り物競走で明里に好きだと言われてから、明里とはあまり話せていない。というより、俺がそのことを気にしすぎてるのだと思うが……


 あれは競技なのだと思っても、明里の妙に真剣みを帯びた言葉が頭をよぎる。


 あれは本心だったってことか……


「あの……雄二?」


「あっ、すまん!」


 明里に声をかけられてようやく気がついた。考え事に夢中で、明里の手に乗せた自分の手を離していないことに……


 ほら気まずい! 気まずいぞ!? 今まではあんまりこんなことなかったんだけどな。まあ、明里は可愛いから、なにかとドキッとしてしまうことはあったが……


 って、また考え込んじまう……


「なぁ……さっき言ったことってどういうことなんだ?」


 一人で考えていてももっとこんがらがるだけだと思い、俺は明里に直接訊いてみる。


「……雄二は、どう思ったの?」


 しかし明里から返されたのは質問だった。


 俺がどう思った、か……照れ臭い気持ちもあったし、俺ってそんなふうに思われてたのか、って驚きもあった。


 けど一番は……


「嬉しかったよ。俺にも誰かに好かれるとこがあるんだなって。でも、それは競技のためなのか、それとも……」


「本当だよ」


 俺が話し合える前に、明里からは返事が返ってきた。今度は質問じゃない。はっきりとした意志を感じさせる言葉だ。


「あれは私の、本当の気持ち。雄二の好きなとこ、だよ?」


「そうか……」


 明里は勝つためだけじゃなく、本心から俺のいいところを挙げてくれたってことか。それはすごく嬉しい。


 でも今度は別の疑問が俺の頭に浮かぶ。


「でも、"最後まで見捨てない"ってどういうことだ? 自分では特にそういったことをした覚えが無いんだけど……」


「……私がそう感じたってことだよ。雄二は覚えてないかもしれないけど……」


 明里が感じた? でも明里を見捨てるも何もないと思うが……


「は〜い! お二人さん! イチャコラしてないでお肉食べよ〜!」


 俺がまだ納得できないでいると、明里の隣に座っていた西川が俺と明里の取り皿に焼けたカルビをシャッシャっと素早く乗せていく。


「……そうだな。せっかくなんだからいっぱい食べないと」


 打ち上げできているのに、あんまり難しいことを考えるもんじゃないな。


「だね。美味しそう!」


 明里もそう思ったのか、箸を持って肉をつまみ出した。


「そうだ。雄二、またあ〜んしてあげよっか?」


 ……と思ったら、焼いた肉から飛び散る油の如く明里の口から爆弾発言が飛び出した。


 おいおい、今はダメだろ。周りを見てみろ。すごい量の殺気が向けられてるじゃないか。主に俺に。というか俺にだけ。


 ってあれ? 冗談じゃないの? なんでもう箸で摘んだ肉を俺の方に向けてるの?


「よ、よーし! 今日は優也の奢りだぁ!!」


 俺は誤魔化すようにそう一声上げて、食べることに集中することにした。優也な「なんで俺!?」と喚いているが気にしない。お前には犠牲になってもらう。




 一度「好き」って言ったからかな? なんだか前より自分の気持ちに正直に雄二に接することができてる気がする。


 なんだか雄二も動揺してるみたいだし、私のこと意識してくれてる……?


 雄二にあげるつもりだった焼き肉を味わいながら、私はそんなことを考える。


 私は前に進む。進んで、進んで、いつか奏ちゃんも追い越す。そして雄二の隣に立てるような彼女になるんだ。あわよくば結婚なんかも……って! それは早すぎ!!


 私と雄二の新婚生活を想像して恥ずかしくなった私は誤魔化すようにカルビを頬ばる。太らないよね……?





 焼き肉食べたい



『本日のおねだりタイム』


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