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超積極的ラブコメを展開しようと思う  作者: おんたけ
プロローグ
50/144

50 "闘い"


 もうすぐ、私の"闘い"が始まる。


 雄二や奏ちゃんも闘った。奏ちゃんの結果は残念だったけど……それでも、最後までやり抜いたことには変わりない。


 次は、私の番だ。





「続いて、障害物競走を開始いたします。参加者の方は、所定の位置に集合してください」


 またもやきれいな声でアナウンスをする木浪先輩。


 慣れねぇな……まったく。この性格でこの声が出せるなんて聞いてないぞ。


 絶対に叫んではいけない二十四時を乗り切った俺は競技場に戻り、自分のクラスの応援に徹していた。


 まぁ、実際は数分間の幸せだったのだが、声を出して応援でもしてないとさっきの笹森さんのことを思い出して何をするかわからない。今の俺は制御不能。


 現在俺たちのクラスは四位だ。リレーでは惜しくも一位を逃してしまったが、それでも順位を上げることには成功した。上位との差は僅か。なかなかの接戦だ。

 しかも、次は今回の運動会を締める障害物競走だ。上位の大半を占めている三年生との差も開きにくい、絶好の競技。


「おいおい! この調子だと優勝できるかもしれないぞ!?」


 隣の斉藤もテンション高めにそう言っている。


「だなー」


「あぁ……だが心配なのは……」


 そう言って深刻そうな表情を浮かべるのは田中。


 ついさっきのうのうと帰ってきやがった。


 まったく……いつもの俺なら文句の一つも言っていたが、田中の「悪かったな〜、下痢だったわ」と言ういらない報告と、笹森さんの「すごく、カッコよかったです!!」(誇張)と言う本心からであろうお褒めの言葉に免じて許してやった。


「「秋山さんだな……」」


 斉藤と田中(ふたり)の声が重なった。

 

「明里が何か問題なのか?」


 俺が二人揃って不安そうに口にしたことが疑問で聞いてみる。

 

「誰をタイプの異性に選ぶのかってことだろ」


 すると答えは優也から返ってきた。


「そういうことだ……秋山さんはちゃんと俺を選んでくれるのか……」


 斉藤は田中が消えた時以上に真剣そうな声色でそんなことを言ってやがる。


「何夢見てんだ……そんなことより俺にうまく想いを伝えられるのか、そこが心配だ……」


 お前も夢見てんじゃねーか、と言うツッコミはあえて口にしない。

 口にしたら最後。記憶がなくなるまでゲシゲシと蹴られる未来が見える。しかし今日の記憶は無くすわけにはいかない。絶対にだ。


 俺は強い決意のもと、気持ちを押し殺した。


「おっ、始まるぞ」


 優也が口にしたのとほぼ同時に木浪先輩のアナウンスが入り、競技は始まった。





「いいんじゃねぇか!? このまま上位キープして最後追い上げればまじで優勝できんぞ!!」


 そう言って喜びをあらわにしている斉藤。周りの応援団も一体となってこの状況を応援している。


「いけるぞーー!! 頑張れーー!!」


 かくいう俺も声を張り上げて応援している。競技も終盤、どのクラスも最高潮の盛り上がりを見せていた。

 

 今はピンポン玉をスプーンの上に乗せて、落とさずにゴールまで運ぶピンポン球運びの最中だ。


 一見地味な競技だが、集中力と忍耐力の必要ななかなか奥の深い競技だ。俺たちのクラスはこの競技でもいいペースで進められている。


「あ!?」


「まじか……」


「いや、まだいける……!!」


 しかし、早いペースで走っていたからか、ゴール直前でピンポン玉を落としてしまった。それを見たクラスからは落胆の声があがる。


 ここまできたのに……いや、でもまだ借り物競争がある……! チャンスはまだある……!!


「まだいけるぞぉ!! 頑張れーー!!」


 優也の声に続くようにして俺は声を上げる。


「そ、そうだ! まだ最後がある!! 諦めんな!!」


「おおーー!! そうだ! 見ろ! 他のクラスはまだ一人も借り物クリアできてない!!」


 さらに多くの、クラスメイトを応援する声が上がった。


 みんな言ってる通り、まだ先にピンポン球運びをクリアしたクラスもタイプの異性に声をかけることを躊躇っているのか、なかなか動けずにいた。


 俺たちの応援が届いたのか、跳ねて転がるピンポン球をもう一度スプーンに乗せ、ゴールすることに成功した。その瞬間、次の走者へとクラスの命運は委ねられる……そう、借り物競走に参加している明里へと……





 多くの歓声や応援でざわめく中、とうとう私の出番がやってきた。


 緊張する……!! 


 私は雄二達応援団の方を一瞥すると、すぐに目を逸らすという意味のないことを繰り返していた。


 やっぱりはっきりと、好きなタイプなんです! と口にするのは恥ずかしいし、拒否されたらと思うと怖い。


 案の定、他のクラスも男女を問わず、なかなか足を動かせずにいた。


 でも……それでも、私は決めたんだ。今日、絶対に私のことを雄二に意識させてやる!! 今日のことを忘れられなくしてやる!!


 私はもう一度自分を奮い立たせ、真っ直ぐに雄二の元へと向かう。


 私が歩き出すと、クラスのみんなは一斉に私の方に視線を向ける。


 うぅ……やっぱり目立つ……


 動き出したのが私だけなこともあって、私のクラスだけでなく他のクラスの人もちらほらとこっちを見ているのが分かる。


 ……でも!! 目立つからこそ意味があるって言うのもあるし……


 私の心は揺るがない。ここまできたらもう、やるしかないんだ。


 雄二との距離がどんどん近づく。


 もう、すぐそこだ。私の目には雄二しか映っていない。


「ゆ、雄二っ!!」 

 

 そして私は声を上げる。雄二に奏ちゃんじゃなく、私を見てもらうための、反撃の狼煙(のろし)を上げる。



 

 いつのまにか緊迫した運動になってしまった……



『本日のおねだりタイム』


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